2019.02.26
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不妊治療後の妊産婦管理における問題点および妊娠前の注意点は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

不妊に悩める方にとって妊娠の診断報告は幸せの絶頂です。しかし、妊娠は出産に向かってのスタート地点でもあります。不妊治療の一環として、薬を用いることがありますが、妊婦は胎児のために薬の服用を控えがちです。体にとって、真逆の切り替えが必要となるので、妊活と出産で別の医師が担当する場合、より正確な情報の把握が必要です。妊婦のほとんどが医学的に自分の状況を説明することはできません。必要に応じた検査・確認を改めて行ってください。

 

不妊治療後の妊産婦管理における問題点および妊娠前の注意点について,周産期サイドの視点からお教え下さい。東邦大学・中田雅彦先生にご回答をお願いします。

【質問者】

古井辰郎 岐阜大学大学院医学系研究科産科婦人科学分野准教授

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【回答】

【十分な情報の伝達・提供が必要】

  

不妊治療後に妊娠した患者の多くは,いわゆる“高齢妊娠”が多い傾向にあります。一般的には35歳以上の妊娠を指しますが,35歳未満と比較して,合併症を有している,もしくは妊娠後に合併症が見つかる場合があります。

  

具体的には,高血圧,耐糖能異常,甲状腺機能異常,腎炎などの腎疾患,心血管系疾患,脳神経疾患,血液疾患,自己免疫疾患,精神疾患などが挙げられます。不妊治療前からそれらの合併症を有している患者の多くは,それぞれの専門診療科において管理を受けている場合が多いですが,必ずしも妊娠許可を得ていなかったり,不妊治療を受けていることを告知していなかったりする場合もあります。不妊治療時のスクリーニング検査にて,先に述べた合併症についてある程度は発見することもできますが,不妊治療期間が長いと,その間に増悪することもあります。

  

各専門診療科との連携には診療情報提供などの手段がありますが,妊娠を予定していることについてかなり具体的に踏み込んだ情報提供を行わないと,該当診療科ではその後の妊娠を考慮しない管理となる場合がありますし,患者本人を通じた相互のやりとりでは十分な情報が伝達できない場合があります。

  

また,既往歴を有しない人に対する不妊治療を開始する場合にも,不妊症に対する検査のみならず,健康診断の一環としての位置づけとして全身状態を把握することが望ましいでしょう。具体的には,視診,触診,聴診といった理学所見を得ることや,生活習慣病のスクリーニング検査としての血液検査を行うことが望ましいです。さらに,服薬している薬剤の確認も必要です。

  

あくまでも私見になりますが,何らかの合併症を有した患者の不妊治療を開始する際に,その後の妊娠・出産に関しての留意点を確認したい場合には,あらかじめ分娩取り扱い施設との間で連携を図ることが有用かもしれません。患者自身も妊娠した後,どのように経過していくのか事前の情報提供があれば安心できるのではないかと思います。

    

【回答者】

中田雅彦 東邦大学大学院医学研究科産科婦人科学講座教授

 

執筆:

古井辰郎 (岐阜大学大学院医学系研究科産科婦人科学分野准教授)

中田雅彦 (東邦大学大学院医学研究科産科婦人科学講座教授)

    

 出典:Web医事新報

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