2019.02.19
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わが国の百寿者,超百寿者の動向と特徴は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

長寿には食事や医療システム、ストレスのない生活などが影響すると言われています。長寿国家として世界的にも日本が注目される要因の一つに医療関係各位の貢献が挙げられます。ところで、2018年12月に「2040年までにスペインが日本を抜いて世界一の長寿国となる」というニュースも報道されました。ライバル出現です。現・長寿国のトップとしては、「元気な」長寿が増える研究で世界のお役に立ちたいものですね。

 

高齢化人口の増加に伴い,わが国では百寿者人口が増えています。わが国における百寿者や超百寿者人口の動向と世界との比較,また百寿者,超百寿者の臨床的な特徴を教えて下さい。慶應義塾大学百寿総合研究センター・新井康通先生にご回答をお願いします。

【質問者】

池内 健 新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター教授

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【回答】

【世界的にもトップの人数を誇り,その9割近くを女性が占める】

  

地球規模の高齢化が進む中,世界の百寿者人口は急増しています。世界の中でも長寿国であるわが国では,2018年の住民基本台帳に基づく百寿者数は6万9785人と報告されており,この50年間で300倍以上に増加した計算になります。女性のほうが長生きであることも世界共通の現象ですが,わが国では百寿者の約88%を女性が占めています。百寿者の総数を国際比較すると,米国が世界最大の百寿者人口を誇り,日本,中国と続きます。一方,人口10万人当たりの百寿者数を比較すると,わが国がトップで,ついでポルトガル,スペイン,イタリアなど欧州諸国で多い傾向がみられます。

 

一口に百寿者と言っても,様々な人がいます。私たちは,百寿者の中でも特に105歳以上の人を超百寿者,110歳以上の人をスーパーセンテナリアンと分類しています。これまで20年以上に及ぶ百寿者研究の結果から,私たちは超百寿者,スーパーセンテナリアンと寿命が長いほど,100歳時点の日常生活活動度(ADL)や認知機能が高いことを見出し,健康長寿のエリート集団として注目しています。スーパーセンテナリアンは世界的に見てもきわめて稀で,その総数は依然として限られており,正確な実態を報告している国は多くありません。2015年国勢調査によると,わが国のスーパーセンテナリアンの総数は146人であり,百寿者全体の約420人に1人という稀少な存在であることがわかります。

 

スーパーセンテナリアンの医学生物学的特徴としては,加齢に伴う認知機能の低下が緩やかで,認知症の低リスク群であることが挙げられます。埼玉医科大学の高尾昌樹教授は,スーパーセンテナリアン4例の剖検脳の神経病理学的解析から,脳の加齢変化が比較的軽度で,動脈硬化性変化も少ないことを報告しています。また,最近の研究から,筆者らはスーパーセンテナリアンのもう1つの重要な特質として,心血管系の加齢性変化が少ない(遅い)ことにも注目しています。

   

【回答者】

新井康通 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター専任講師

 

執筆:

池内 健 (新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター教授)

新井康通 (慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター専任講師)

    

 出典:Web医事新報

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