2019.02.06
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医療用漢方の保険外し、「国際化の流れに逆行」―日医・横倉会長

メディカルサポネット 編集部からのコメント

天然の生薬を使用し、一つの薬方(処方)は原則として2種類以上の生薬で構成される漢方薬。医療用漢方薬は148処方のみ保険が認められ医師の処方せんに基づいて処方されます。疾患部分を集中的に治療する西洋薬とは違い、漢方薬は全身のバランスを調整するため、西洋医学では治らない症状に対して、保険適用の漢方薬治療を行っているケースも少なくありません。そんな中、漢方薬を医療保険から外そうとする動きに対して、日本医師会会長も反対を唱えています。日本漢方生薬製剤協会は、高品質な漢方製剤、生薬製剤および生薬を継続的に安定供給し、その役割と機能を高めることによって、漢方製剤、生薬製剤および生薬の普及、定着と発展を図り、医薬品業界の発展と国民の健康に貢献することを目的としています。

 

日本医師会の横倉義武会長は5日、都内で開かれた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」(会長:髙久史麿 地域医療振興協会会長)で講演し、西洋を含む世界各国が医療用漢方の利用を進めている中で、「我が国において漢方薬を医療保険から外すことは国際化の流れに逆行している」と述べた。財務省などが主張している市販品類似薬の保険給付外しに改めて反対した形だ。

 

講演で横倉氏は、日医総研の研究成果などに基づき、慢性硬膜下血腫の術後療法における漢方薬(五苓散または柴苓湯)の使用割合が近年3割近くまで上昇しており、漢方薬使用例では再手術率が下がったといった有効例の報告もあると強調。さらに、国内外の臨床研究により大建中湯などの製剤でエビデンスの蓄積が進みつつあることにも言及し、「有効かつ治療に必要な医薬品は保険給付から外すべきではない」との見解を示した。

 

保険給付以外に医療用漢方が直面している課題としては、薬価の維持と原料生薬の中国依存を挙げ、「国内で安定的に利用できるようにすることが大事」とした。

 

国際疾病分類第11版(ICD-11)に漢方を含む伝統医学の章が新設されたことについては、「『証』という共通言語により、伝統医学の考え方を取り入れた臨床研究やデータの国際比較が可能になる」と述べ、漢方のエビデンス構築に向けた研究の発展に期待を示した。

 

医療用漢方の「保険外し論」を批判した日医・横倉会長

 出典:Web医事新報

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