2019.02.05
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唾液腺内視鏡手術の適応と限界は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2009年に唾液腺内視鏡が薬事許可され、日本国内でも唾液腺内視鏡手術が可能となりました。顔を傷つけないので患者も手術に踏み切りやすくなりました。とはいえ、まだまだ症例が多くなく、内視鏡だけで摘出可能とされる大きさも医療機関によって異なるようです。また、合併症についても今後の研究が待たれます。

 

唾液腺内視鏡手術の適応と限界についてご教示下さい。旭川医科大学・高原 幹先生にお願いします。

【質問者】

太田伸男 東北医科薬科大学耳鼻咽喉科学教授

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【回答】

【7mm以下のワルトン管内から移行部までの唾石が適応】

 

唾石症,唾液腺管の異常,狭窄・拡張などの診断や治療に対して,より低侵襲で審美性の高い手術が望まれてきました。唾液腺内視鏡(sialendoscope)は,まさにそのニーズを満たす診療ツールとして応用が広まりつつあります。筆者は耳下腺唾石に関してはあまり経験がなく,顎下腺唾石に関して主に述べたいと思います。

  

唾液腺内視鏡はKARL STORZ社から現在までにNAHLIELI式,MARCHAL式,ERLANGEN式など多くの種類が紹介されています。顎下腺唾石に関しては当科では径1.6mmの光源,生食灌流用イリゲーションチャネル,手術器具用のワーキングチャネルが一体となったAll-in-one Miniature Endoscopeを使用しています。イリゲーションチャネルは径0.3mmでワーキングチャネルは径0.8mmであり,それ以下の把持紺子,バスケット紺子,レーザープローブを挿入することができます。

  

当科にて2010年10月~2018年10月に内視鏡を用いて手術を行った顎下腺唾石症96例〔男性40例,女性56例,3~88歳(中央値35歳)〕において,37例(39%)が内視鏡下摘出,残りの59例は内視鏡補助下口内法により摘出しました。唾石のサイズは3〜25mm(中央値8mm)でしたが,唾石の最大長が7mm以下の46症例において内視鏡下摘出成功症例は32例(70%),8mm以上の50症例においては5例(10%)でした。手術時間は17〜195分で中央値は63分でした。術後合併症に関しては,一過性の顎下腺腫脹が33例(34%),舌神経麻痺である舌のしびれが16例(17%)に認められました。腺内唾石は9例でしたが,統計学的に有意な手術時間の延長,術後の舌神経麻痺の増加,顎下腺腫脹の遷延が認められました。

  

したがって,顎下腺唾石における内視鏡下摘出術の適応は7mm以下のワルトン管内から移行部までの唾石と個人的には考えています。また,顎下腺唾石における内視鏡下,内視鏡補助下口内法摘出術の限界は移行部までの唾石であり,腺内唾石は内視鏡で唾石が確認できないことも多く内視鏡下,内視鏡補助下口内法摘出術は適応外と考えています。

  

【回答者】

高原 幹 旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室講師

 

執筆:

太田伸男 (東北医科薬科大学耳鼻咽喉科学教授)

高原 幹 (旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室講師)

    

 出典:Web医事新報

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