2019.02.04
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【他科への手紙】救急科→外科一般・小児科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2000年11月に児童虐待防止法が施工されて20年が経ちました。平成29年度は医療機関からの虐待通告が3,199件あり(全体の約2%)、多くの子どもたちが救われました。医師には児童虐待の通告義務があります。しかし「通告して調査したら虐待ではなかった」という経験や、「間違った通告をするぐらいならしない方がいい」というプライドから、報告を渋る医師もいらっしゃるそうです。児童相談所の調査、警察の捜査への協力、司法手続きにおける犯罪性の立証など、医療関係者には様々な面で協力が求められますが、通告や院内虐待対応組織、虐待診断マニュアル、地域の要保護児童対策地域協議会など、必要な体制はできています。日本子ども虐待医学会では、一般医、小児科医それぞれに向けた公認マニュアルを紹介しています。ぜひご活用ください。

 

いつも大変お世話になっております。今回は、小児の軽症頭部外傷と創処置について、少しでもお役に立てればと思い、手紙にさせて頂きます。

 

小児の軽症頭部外傷や創処置は、小児救急において最も頻度が高い外傷の1つですが、内因性を得意とする小児科の先生方、成人の外因性を得意とする一般外科の先生方にとって、診たくないけど診ざるをえない患者たちだと思います。

 

小児の外傷を診た際に大切なのが、虐待の除外です。病歴が取りにくいことが多いですが、保護者の目撃がある場合は受傷状況が自分の頭の中でイメージできるくらいに詳細な病歴聴取が必要です。また、身体所見は、服を脱がして全身を診察し、不自然な打撲痕や火傷の跡がないか確認して頂けたらと思います。

 

小児の頭部外傷で、悩ましいのが頭部CTを行うべきかどうかという問題です。じっとしていられないという問題もありますが、最近では放射線被ばくによる発がんリスクが報告されています。頭部CTの適応については、イギリスのNICEガイドラインや米国のPECARNルールなどが参考にでき、意識障害や痙攣、頭蓋底骨折が疑われる場合などにCT適応があると記載されています。

 

しかし、乳児の場合、意識評価自体が難しく、臨床的には重篤な外傷とは思えないことがあると思います。そんなときは、1回の診察で方針決定するのではなく、救急外来で経過観察することをお勧めします。嘔吐しなければ、少量の水分摂取を開始して経過観察しても良いと思います。軽微な頭部外傷で帰宅させたら、その後嘔吐を繰り返して再来してしまった経験がある先生もおられると思いますが、救急外来で水分摂取できるか評価もできれば、そのような失敗も減らせます。「後医は名医」という言葉があるように、時間をかけて後で診ることで、情報は確実に増えます。

 

また、創処置の際に、患児が安静を保てず、困ってしまうことは多々あると思います。抑えるとさらに泣いてしまいますし、悩ましいところです。どうしても鎮静が必要な場面もあるのですが、非侵襲的な方法として、タブレットやポータブルDVDを用いて好きなアニメを見せながら処置をするという方法があります。お子さんのいる先生方は、子どもがテレビに夢中になり、呼んでも返事をしないという経験があるかと思います。子どもはアニメに夢中になると恐怖心や不安を感じなくなります。好きなアニメに夢中になっているうちに、局所麻酔や縫合処置ができます。

 

経過観察する時間をとる、好きなアニメを見せる、いずれも簡単にできることですが、効果的です。ぜひ、試して頂ければ幸いです。

 

結び

小児の軽症頭部外傷や創処置は、時間とアニメを用いることで、余計な被ばくや鎮静を避けることが可能です。

 

執筆:佐藤信宏 (新潟市民病院救急科医長)

  出典:Web医事新報

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