2019.01.24
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肝内結石症の現状と内視鏡的治療戦略は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

再発しやすい肝内結石症は、胆管癌の発症リスクにもなる難治性疾患です。医学の進歩によって開腹手術ではなく内視鏡手術による治療も可能となっています。患者の年齢や基礎疾患によって求められる結果は異なるため、一人ひとりに寄り添った診療方針について患者や家族、ほかの医師との話し合いが求められます。

肝内結石症は複雑な病態を示し,完治が難しく再発を繰り返すことが少なくありません。また肝内結石症を背景として胆管癌が発生することもあるため,治療のストラテジーを理解することは非常に重要です。肝内結石症の現状と治療方針について,京都大学・宇座徳光先生にご回答をお願いします。

【質問者】

塩見英之 神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野

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【回答】

【経皮経肝的胆道鏡による除石(PTCSL)で完全除石も可能】

肝内結石症は,結石症の中で1%以下と稀な疾患です。しかし,その原因は不明で,再発頻度が高く,胆管炎を繰り返して患者QOLを著しく低下させるのみならず,胆管癌の発症リスクとなる難治性疾患です。本疾患の診療ガイドラインは存在するものの,その治療法の選択において確立したものはないのが現状です。

これまでの全国アンケート調査によると,患者背景として,胆道再建術後,特に先天性胆道拡張症の患者が増加傾向にあります。また治療に関しては,肝切除などの外科的治療は減少傾向にある一方で,内視鏡処置を含めた内科的治療が増加し,全体の60%以上を占めるまでになっています。この事実は,今後は肝内結石症の治療において内視鏡処置が重要な役割を持つことを意味しています。

ここで,当院における肝内結石症に対する内視鏡治療の方針を述べたいと思います。筆者らが注目しているポイントは,(1)結石の数,(2)存在部位,(3)狭窄・拡張の有無,(4)胆道再建術の有無などです。少数の結石が一次分枝あるいは狭窄部や吻合部近傍に存在する場合は,経乳頭的あるいはバルーン内視鏡を用いた経消化管的アプローチによる除石を試みています。本アプローチでは1~2セッションでの完全除石をめざします。

一方,複数個の結石(症例によっては100個以上の結石を認めます)が二次分枝より末梢まで存在するような症例では,経乳頭的あるいは経消化管的アプローチによる完全除石は困難と判断し,積極的に経皮経肝的胆道鏡による除石(percutaneous transhepatic cholangioscopic lithotomy:PTCSL)を行っています。PTCSLを施行する利点として,直接観察下に砕石および除石が可能であること,完全除石が確認できること,胆管癌のスクリーニングとして直接生検が可能であることなどが挙げられます。これらはPTCSLを施行するための瘻孔形成までに約2週間を要することを差し引いても余りある利点と考えています。

2012年に電気水圧式衝撃波砕石療法(electronic hydraulic lithotripsy:EHL)が胆道領域でも医療承認になったことを受けて,当院でも細径胆道鏡(CHF-XP260 オリンパス社)を導入し,上記のような多発肝内結石を有する患者には積極的にPTCSLを施行するようになりました。細径スコープは,症例によっては三次分枝まで挿入可能で,適宜狭窄拡張術を併用することで,ほとんどの症例で2~3セッション後に完全除石が可能となっています。一方で,侵襲の大きさから外科的処置を回避し,内視鏡的に完全に除石できたとしても,再発や胆管癌発症のリスクは残ることになります。今後は,このような患者をどのように経過観察していくかが課題となると考えます。年齢や基礎疾患など患者背景をふまえた全人的な診療体系の確立が求められます。

【回答者】

宇座徳光 京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座

 

執筆:

塩見英之 (神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野)

宇座徳光 (京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座)

 

 出典:Web医事新報

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