2019.01.24
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濾胞性リンパ腫の再発時において,watchful waitingは選択肢となるか?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

悪性リンパ腫の1つ、濾胞性リンパ腫は、再発傾向が高い割合でみられますが、年単位でゆっくりとした経過をたどることで治療のタイミングに迷われている方も多いようです。がん研有明病院・照井康仁先生が再発濾胞性リンパ腫の治療について、示唆されてますのでご参考ください。

 

濾胞性リンパ腫ではしばしば再発を経験しますが,再発後も進行が緩徐な症例も多く,すぐにセカンドライン治療を開始すべきか判断に迷うことがあります。再発濾胞性リンパ腫の治療開始のタイミング,またwatchful waitingも選択肢となりうるのか,がん研有明病院・照井康仁先生にご教示をお願いします。

【質問者】

桐戸敬太 山梨大学医学部血液・腫瘍内科教授

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【回答】

【低腫瘍量であれば,一般的にwatchful waitingが標準となる】

初発進行期濾胞性リンパ腫に対するwatchful waiting中の治療開始基準がありますが,代表的な基準はGroupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires(GELF)基準です。これは,低腫瘍量や高腫瘍量の腫瘍量を評価するもので,①7cm以上の腫瘤形成,②異なる3領域に各3cm以上のリンパ節腫大,③有症状性脾腫大,④臓器圧迫症状,⑤腹水/胸水貯留,⑥全身症状の出現,⑦米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group:ECOG)performance status>1,⑧血清LDH/β2-MG>正常上限値,の8つの項目のうちひとつでも当てはまるようであれば高腫瘍量と評価し,治療を開始するというものです。4

 

進行期濾胞性リンパ腫の治療ゴールは,長期にわたる病勢コントロールであり,高腫瘍量の場合は病勢コントロールのために化学療法が行われ,低腫瘍量では,watchful waitingが一般的に標準です。治療戦略が異なるため,腫瘍量の評価はきわめて重要です。また,血清sIL-2R値が1070U/mL以上では予後不良であるとの報告もあり,血清sIL-2R値によるモニタリングも治療開始基準の項目に挙げられる可能性があります。

 

再発時におけるセカンドライン治療の開始のタイミングやwatchful waitingの可否に関するエビデンスの報告は残念ながらありませんが,初発進行期濾胞性リンパ腫と同様にGELF基準などを参考にしながら,治療開始かwatchful waitingかを患者と相談しながら診療を進めていくものと考えます。

 

【回答者】

照井康仁 がん研有明病院血液腫瘍科部長

 

執筆:

桐戸敬太 (山梨大学医学部血液・腫瘍内科教授)

照井康仁 (がん研有明病院血液腫瘍科部長)

    

 出典:Web医事新報

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