2019.01.22
3

C型肝炎抗ウイルス療法後の肝発癌スクリーニングとフォローアップ期間は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

早期治療で回復した患者さん。しかし、ほぼ完全に排除と思われてしまいがちですが、症状がないからといって放置することはリスクが伴います。C型肝炎の感染患者は永続的なフォローアップが必要であり、現在はまだ一生のつきあいが必要な病気であることは意外と知られていません。医療関係者は治療の際に今後についても案内願います。

 

肝炎治療薬の進歩によりC型肝炎ウイルスはほぼ完全に排除できる時代になりました。しかし一方で,抗ウイルス療法にてウイルスが消失した場合に,どれくらい肝病態の改善が得られるのか,またその後の肝発癌スクリーニングやフォローアップの期間はどのように決めればよいか迷うことがあります。
この点に関して,藤田医科大学ばんたね病院・舘 佳彦先生のご解説をお願いします。

【質問者】

伊藤隆徳 名古屋大学医学部附属病院消化器内科

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【回答】

【全症例において永続的なフォローアップが必要と思われる】

direct-acting antivirals(DAA)による抗ウイルス治療の進歩により,ほぼすべての症例においてC型肝炎ウイルス(HCV)の排除が得られるようになりました。ウイルス排除後の肝病態の改善に関して,筆者らはインターフェロン治療前とウイルス排除成功後に平均5.8年の間隔で肝生検を施行した97例において,線維化ステージの改善が45%,変化なしが48%,増悪が6%存在したことを報告しています。一部,ウイルス排除後にもかかわらず線維化が増悪する症例が存在することが示されました。しかもウイルス排除後の累積発がん率が,肝線維化が増悪した症例において有意に高率であることも示されました1)。

線維化の改善は個々の症例により異なっているため,ウイルス排除前後に肝生検を施行された130例において,線維化の改善を予測する因子に関して検討したところ,治療終了後24週時のα-フェトプロテイン(α-fetoprotein:AFP)値が5.4ng/mL未満であること,genotype2型であることが線維化の改善に関連していることがわかりました2)。国内の他の報告からも,治療終了後24週時のAFP高値はHCV排除後の新規発がんに関連していることが複数報告されていますので,ウイルス排除が得られた後もAFP値の低下が認められない症例においては,線維化の遷延や新規発がんに対する十分なサーベイランスが必要であると思われます。

インターフェロン治療の時代において,高齢者,線維化進行例はウイルス排除後の発がんの高リスク群でした。DAA治療は,高齢者,線維化進行例においても広く施行されていますが,インターフェロン治療時と同様に,今後このような患者群からウイルス排除後のがんの発症が予測されます。しかしながらすべての症例に侵襲的な肝生検検査にて線維化の評価を行うことは困難です。超音波エラストグラフィによる肝硬度検査は,慢性肝炎時だけでなく,ウイルス排除後であっても非侵襲的に線維化ステージを良好に予測しうることが報告されています3)。

筆者らが行ったDAA治療を受けウイルス排除が得られた263例の肝発癌に関する前向き研究において,18.1カ月間(中央値)の観察期間中に19例の発がん(新規発がん7例)が認められました。再発を含む発がんに関しては,肝癌治療歴のあること,総ビリルビン値1.0mg/dL以上であること,年齢75歳以上であること,新規の発がんに関しては,治療前の肝硬度値が1.73m/s以上であることが関連していることが示されました4)。

以上から,ウイルス排除後のフォローアップに関しては,肝癌治療歴があること,高齢者,肝線維化進行例(肝硬度1.73m/s以上)など肝癌発症のリスクが高いと思われる症例においては3~4カ月に一度の腹部超音波,造影CT,造影MRIなどの画像検査,腫瘍マーカー検査を行います。低リスク症例においては,半年に一度の腹部超音波検査を中心とした画像検査でのフォローアップを行います。フォローアップ期間に関しては,低リスク群に関しても稀に発がんが認められることもあり,現状は全症例において永続的なフォローアップが必要と思われます。

【文献】

1) Tachi Y, et al:Hepatol Res. 2015;45(2):238-46.

2) Tachi Y, et al:J Gastroenterol Hepatol. 2016; 31(5):1001-8.

3) Tachi Y, et al:Aliment Pharmacol Ther. 2016; 44(4):346-55.

4) Tachi Y, et al:JGH Open. 2017;1(1):44-9.

 【回答者】

舘 佳彦 藤田医科大学ばんたね病院消化器内科 (第2病院)講師

 

執筆:

伊藤隆徳 (名古屋大学医学部附属病院消化器内科)

舘 佳彦 (藤田医科大学ばんたね病院消化器内科 (第2病院)講師)

 

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP