2019.01.22
3

Bacillus属の菌血症は季節や気候による変動があるのか

メディカルサポネット 編集部からのコメント

院内の菌血症は夏場に多い印象があるとのことですが、温度や湿度が管理された病院内は真冬といえども快適な空間です。人間だけではなく、細菌にとっても増殖しやすい条件が整っていると言えます。現在、寒波が到来していますが、院内感染を防ぐためにも入院患者の使用するリネンやタオル、マスクを清潔に保つよう注意喚起することが求められます。

 

院内の菌血症の原因として時に問題となるBacillus属の菌血症ですが,血液培養陽性例は夏に多い印象があります。実際に季節や気候による変動はあるのでしょうか?北海道がんセンター・藤田崇宏先生のご教示をお願いします。

【質問者】

羽田野義郎 東京医科歯科大学医学部附属病院 感染制御部

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【回答】

【世界的に夏に多い傾向を認める報告が多数を占める】

 
Bacillus属による菌血症についての報告はわが国から多くなされていますが,夏に多い傾向を認める報告が多数を占めます。日本列島は南北に長いため気温差がみられますが,夏季に高温多湿になる本州地方でも比較的冷涼な気候の北海道でも同様の結果が得られています。わが国以外では,英国やイスラエルからも夏季に増加したとの報告があり,少なくとも北半球ではかなり冷涼な気候であっても夏季に多いと考えてよさそうです1)~3)

当院でのBacillus属血液培養陽性エピソードのみられた日付と気象データを用いて予測モデルを作成したところ,5日前の平均気温が最も強い予測因子と同定されました。Bacillus属の環境中やリネン類での増殖が気温上昇によって促進され,数日の潜時を経てカテーテル関連血流感染やコンタミネーションが増加するのではないかと推測されます4)

わが国では,リネン類および清拭タオルの汚染がBacillus菌血症アウトブレイクの原因になることが多く,気候のみがBacillus菌血症の季節変動の要因とは断定できませんが,密接に関連しているのは確実であり,感染対策担当者は気温の上昇とともにリネンやタオル類,そしてカテーテル類の管理について注意を強める必要があると考えられます。

【文献】

1) Sasahara T, et al:Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2011;30(2):219-26.

2) Ashkenazi-Hoffnung L, et al:Am J Infect Control. 2009;37(6):495-9.

3) Hosein IK, et al:J Hosp Infect. 2013;85(2): 149-54.

4) Fujita T, et al:Int J Environ Res Public Health. 2018;15(10):2201.

【回答者】

藤田崇宏 北海道がんセンター感染症内科 

 

 

執筆:

羽田野義郎 (東京医科歯科大学医学部附属病院感染制御部)

藤田崇宏 (北海道がんセンター感染症内科)

 

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP