2018.11.30
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真性赤血球増加症の瀉血療法のポイントは?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

真性赤血球増加症の治療は瀉血療法が推奨されていますが、鉄欠乏状態や反応性の血小板増加が伴うケースでは細胞減少治療の併用の検討が必要です。

 

真性赤血球増加症では,血栓症予防のためにHt値45%未満を目標に瀉血療法を行うことが推奨されています。しかし日常診療では,患者の背景によってHt値を45%未満に瀉血を行うことの難しさを経験します。瀉血療法のポイントについて,山梨大学・桐戸敬太先生にご教示をお願いいたします。

【質問者】

田所誠司 市立豊中病院血液内科部長

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【回答】

【瀉血療法に伴う鉄欠乏に留意し,継続が困難な場合は細胞減少療法の併用も検討する】

  

真性多血症(polycythemia vera:PV)の治療目標は,腫瘍としての治癒ではなく,血栓症や出血などの合併症を予防することです。瀉血療法は,ヘマトクリット低下を図る上で最も基本的な手法であり,国内外の治療ガイドラインで推奨されている治療法です。最近の後ろ向き研究でも,瀉血療法は高リスクPV症例の生存率の向上および血栓のリスク軽減に寄与していることが報告されています1)。

瀉血療法で,どの程度までヘマトクリットを低下させるべきかについては,様々な議論がありましたが,2014年にヘマトクリットの目標値についてのランダム化前向き臨床試験(CYTO-PV試験)の結果が報告され,一応の決着を得ています。すなわち,ヘマトクリット値を45%未満に厳密にコントロールすることにより,心筋梗塞や脳血管障害などの重篤な血栓・出血の発症率を1/4に低下させうることが明らかとなりました。この結果を受けて,現時点ではヘマトクリットコントロールの目標値としては,45%未満とすることが一般的となりました。2018年に改訂された,日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン」においても,PVにおいてヘマトクリットを45%未満とすることは推奨グレードⅠとされています。

一方で,瀉血療法に伴う有害事象も知られています。まずは鉄欠乏の併発です2)。鉄欠乏状態のため,爪や皮膚の障害あるいは,倦怠感,むずむず脚症候群などが生じることがあります。瀉血療法を受けているPV症例の約10%で異食症の,また約30%でむずむず脚症候群の症状を認めるとの報告もあります。このような場合に,鉄を補充するかについては議論がありますが,鉄の補充によりヘマトクリットの急激な増加をきたすことがあり,注意が必要です。むしろ,瀉血による鉄欠乏状態が強く,継続が困難となった場合には,細胞減少治療を併用することも検討します2)。

また,瀉血により反応性の血小板増加を伴う例もありますが,この場合には血小板減少を目的とした細胞減少治療については必要ないと考えられています2)。なお,1年間に3回以上の瀉血が必要な場合を瀉血抵抗性と定義し,細胞減少治療開始を推奨するとの考えもありましたが,最近ではこの考えは否定されています2)。

【文献】

1) Podoltsev NA, et al:Blood Advances. 2018;2 (20):2681-90.

2) Barbui T, et al:Leukemia. 2018;32(9):2077-81.

【回答者】

桐戸敬太 山梨大学医学部附属病院血液・腫瘍内科教授

 

執筆

田所誠司 (市立豊中病院血液内科部長)

桐戸敬太 (山梨大学医学部附属病院血液・腫瘍内科教授)

 

 出典:Web医事新報

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