2018.09.26
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【他科への手紙】血液内科→リウマチ・膠原病内科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

リウマチ患者のリンパ増殖性疾患は欧米に比べ、日本からの報告が多く、さらなる疫学研究が必要です。リンパ増殖性疾患を疑う際は、CT、MRI、PETなどの精査の他、病変部位があれば迷わず生検が必要です。治療には免疫抑制剤の中止が必要で、リンパ節が縮小しても再投与は生命を脅かすこともあります。

 

リウマチ・膠原病内科の先生方には、平素大変お世話になっております。関節リウマチなどの自己免疫疾患では、血液疾患を伴うことが稀でないため、患者さんを併診させて頂く機会も多いかと思います。関節リウマチ患者における悪性リンパ腫の発症頻度は2~3倍と言われています。日本人では3~6倍との報告もあります。特にメトトレキサート(MTX)投与中あるいは投与歴のある患者さんでは、悪性リンパ腫を含むリンパ増殖性疾患が多いことが知られています。

 

これらリンパ増殖性疾患は、MTXだけでなく、タクロリムスや、TNF阻害剤でも同様に発症することがあり、WHO分類ではOther iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders(その他の医原性免疫抑制関連リンパ増殖性疾患)にまとめられています。発生頻度はまだよくわかっていません。欧米からの報告は少なく、日本からの報告が多いことは、人種による差があることを示唆しています。また特定のHLA型に多いとの報告もあり、今後、大規模な疫学研究が必要な領域と思います。

  

この医原性免疫抑制関連リンパ増殖性疾患は様々な病理組織型を呈します。びまん性大細胞B細胞型リンパ腫、Hodgkinリンパ腫、濾胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫など多様です。EBVの発症への関与が疑われていますが、Hodgkinリンパ腫型の大部分でEBV陽性であるのに比して、びまん性大細胞B細胞型リンパ腫では半数程度の陽性率です(80%以上としている報告もあります)。また、40~50%の症例で消化管、肺、肝、甲状腺、骨髄、皮膚、中枢神経などの節外病変を認めるため、表在のリンパ節腫脹がなくても発熱や体重減少、LDHの上昇などがある場合には積極的にリンパ増殖性疾患を疑う必要があります。CT、MRI、PETなどの精査をおすすめします。病変部位があれば迷わず生検を。病理診断なくして予後予測、治療方針は立てられません。

 

治療の第一歩は免疫抑制剤の中止、特にMTXに関連したリンパ増殖性疾患ではMTX中止により寛解に至ることもあります。しかし、リンパ節以外の臓器浸潤のある病期の進んだ症例や全身状態が不良例など、経過観察せず、化学療法を早期に開始すべき場合もあります。また、非HodgkinよりもHodgkinリンパ腫のほうがMTX中止による自然消退が起こりにくいことが知られています。

 

なお、リンパ節が縮小しても、MTX等の再投与は原則行わない方がよいと思います。リンパ腫の再燃により生命を脅かす事態をまねくこともあります。

 

結び

MTX等による治療中のリウマチ患者ではリンパ増殖性疾患に注意!節外病変が多く診断困難例も。自然消退しても治療再開は慎重に!

 

執筆:萩原將太郎 (東京女子医科大学血液内科講師)

 出典:Web医事新報

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