メディカルサポネット 編集部からのコメントEDはPDE5阻害薬による対処療法が効果をあげてきました。その一方、患部に低出力体外衝撃波を与える低出力体外衝撃波治療は、痛みや副作用がなく、合併症や後遺症もほとんどないのが特徴で、根本的にEDの症状を改善したいとの希望の患者に対する効果が期待されています。 |
近年,勃起不全に対するShockwave療法の有効性が示され,わが国以外では一般的に行われるようになってきていますが,わが国ではまだ限られた施設でのみ施行されているのが現状と思います。勃起不全に対するShockwave療法の適応,治療の実際について,京都第二赤十字病院・邵 仁哲先生にご教示頂きたく思います。
【質問者】
福原慎一郎 大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科講師
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【回答】
【他の治療薬と比較して,痛みをはじめ合併症や後遺症もほとんどなく,安全に施行できるのが最大の利点】 |
わが国における勃起不全(erectile dysfunction:ED)治療に対する第一選択は,ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)5阻害薬であり,その有効率は70~80%ほどと高く,ED治療の歴史を変えた薬剤です。
しかし,PDE5阻害薬は非常に有効率の高い薬剤ではあるものの,無効な症例もあるために別の治療オプションが必要とされてきました。
そういった状況で登場してきたのが,低出力体外衝撃波治療です。この治療の特徴は,患部に低出力体外衝撃波を与えることで,細胞内外での血管を生成する増殖因子の放出を促すことにより,新生血管を形成させるというメカニズムに基づいており,泌尿器科領域以外にも,循環器科や整形外科領域にも応用されています。
そういう意味でこの治療は,PDE5阻害薬が無効である患者,心疾患や脳疾患などの合併症のため,またほてりや動悸といった副作用のためPDE5阻害薬を服用できない患者,あるいは特に薬剤の服用という対症療法ではなく,根本的にEDの症状を改善したいとの希望の患者には,良い適応であると思われます。
低出力体外衝撃波治療で現在最も良く使用されているのが,ED1000TMだと思われます。ED 1000TMによる治療の実際は,推奨されるプロトコルとして,陰茎根部左右2箇所と陰茎を3箇所に分け,計5箇所に1回300発ずつ,合計で1回の治療で1500発の衝撃波を発射します。治療は1回20分程度かかり,一連の治療は9週間かけて,1週間に2回の治療を合計12回行いますが,途中に3週間の休養期間を設けています。
有効率としては,帝京大学や順天堂大学の泌尿器科のグループが報告しており,硬度不足により挿入が不可能な患者群で治療後約60%の有効率が得られ,特に有効性が高かったのが,65歳以下の糖尿病や心疾患などの基礎疾患を持たない,比較的健康な患者群では有効率約70%であったとの報告でした。しかし,糖尿病や心疾患などの基礎疾患があるような難治性のED患者群では治療後挿入可能となったのは,20%であったとの報告でした。
そういった報告をふまえ,筆者自身のED1000TMによる治療経験から得られた具体的な治療目標は,自力では挿入可能な硬度を得るのは困難であるが,PDE5阻害薬を服用すれば挿入可能な硬度が得られる比較的軽症な患者群では,ED1000TMによる治療により,PDE5阻害薬を服用しなくても十分な勃起硬度を得られるというPDE5阻害薬からの離脱を目標としています。また,PDE5阻害薬無効例などの重症の患者群では,ED1000TMによる治療後,それまで無効であったPDE5阻害薬が有効になることを目標としています。
その他のED1000TMの特徴として特筆すべき点を挙げるとすれば,痛みもなく,また合併症や後遺症もほとんどなく,安全に施行可能であることが,他の治療と比較して最大の利点と考えています。
【回答者】
邵 仁哲 京都第二赤十字病院泌尿器科部長
執筆:
福原慎一郎 (大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科講師)
邵 仁哲 (京都第二赤十字病院泌尿器科部長)
出典:Web医事新報