2025.07.03
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南海トラフ発生時にいかに医療を継続するか─高知の医師や災害医療の専門家が意見交換

メディカルサポネット 編集部からのコメント

6月28日に行われたシンポジウム「地域医療と災害医療の親和性」では、南海トラフ地震に備え、医療の継続性について議論されました。高知医療センターの盛實篤史氏は、地域での医療救護活動や人材育成、実技講習の重要性を強調し、コミュニケーションエラーのリスクについて警告しました。岡山大学の香田将英氏は、病院や診療所の事業継続計画(BCP)の必要性と、事前の準備や高品質な支援の重要性を述べました。

 

南海トラフ地震発生時に医療をいかに継続するかを議論するシンポジウム「地域医療と災害医療の親和性~きたる南海トラフ地震に備えて」が6月28日、都内で開かれ、高知県の医師や災害医療の専門家らが意見交換を行った。

シンポはへき地・地域医療学会のプログラムの1つとして開催。

 

■高知医療センター・盛實氏「ローカルDMATなどを育成」

高知医療センター救命救急センターの盛實篤史氏は、南海トラフ地震発生時に甚大な被害が予想される高知県では、発災後すぐには外部からの支援が望めないことから、①活動可能な医療従事者で地域の医療救護活動を行う、②道路寸断等で勤務先の医療機関に行けない県中央部在住の医師等を搬送する、③県内のDMAT等の医療支援チームを地域に搬送する─の順で対応することをイメージしていると説明。

応援が来るタイミングまで耐えることが必要となるため、地域レベルで①「ローカルDMAT」など災害に携わる人材の育成、②応急手当・搬送などの住民向け実技講習会の開催、③医療継続のための「BCP」(事業継続計画)と「受援計画」の作成─などに取り組んでいるとした。

 

■「『大丈夫』と言われて『大丈夫じゃない』ことも」

盛實氏は、能登半島地震支援の経験を踏まえ、災害時は「コミュニケーションエラー」が起こることにも注意を促した。

「『大丈夫』と言われても『大丈夫じゃない』ことも多々ある。物資は届いているけれど、ジャストタイムで必要な物資でないこともある」と述べ、支援する側は「『大丈夫』と言われても実際に自分の目で見ることが大事」と指摘した。

高知医療センター・盛實医師

高知医療センター・盛實医師

■岡山大・香田氏「病院・診療所のBCP発動が重要」

災害医療の専門家の立場で登壇した岡山大の香田将英氏(地域医療共育推進オフィス特任准教授)は、発災後に医療・介護・福祉提供能力を維持するためには、病院・診療所のBCP発動が重要と強調。

「医療機関が倒れれば地域も倒れる。まず自分自身の身を守ることが非常に大事」と述べ、診療所も含め、地域でどのような災害が起こりうるかを想定して事前にBCPを作成することを求めた。

具体的には「ヒト」(緊急連絡網、避難場所、代診ネットワーク)・「モノ」(医薬品・発動機・衛生材料備蓄、電子カルテのクラウド化)・「カネ」(キャッシュ、保険・補助金・融資枠の確認)を準備する必要があるとし、「あまり語られないのがお金の部分。

(スタッフを離職させないためには)給与を払い続けることができるかも大事な視点。

金融機関からの送金システムが一時的に止まることも考えて、診療所・病院で現金をある程度持っておく必要がある」と述べた。

 

■「短期支援者にヒーローはいらない」

香田氏はまた、受援者が実際に困ることとして、物資・ボランティア・情報などの「支援の津波」、メディア対応などによる「スタッフの疲弊」、短期支援の入れ替わりによる「引き継ぎ疲労の蓄積」などを挙げ、受援者は支援者に対し「地味な作業の肩代わり」や「切れ目のない継続的・多層的な支援」を求めていると指摘。

「災害・復興は受援側にとっては日常の延長線上であり、災害前から連続する回復のプロセス。短期支援で必要なのは受援者のニーズに応じた質の保たれた支援で、ヒーローはいらない。受援側・支援側双方の事前の準備が『傷つけない・傷つかない』災害支援につながる」と訴えた。

岡山大・香田医師

岡山大・香田医師

 

 

 
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出典:Web医事新報

  

  

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