メディカルサポネット 編集部からのコメント

国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長である松﨑尊信氏は、2023年度の小中学校の不登校児童生徒数が過去最多となったことに触れ、いじめの問題に真摯に取り組むべきであると考えています。特にネット上でのいじめは外部から見えづらく対応が難しいこともあり、多くの課題があります。子どもの不登校や自殺を大きな社会課題ととらえ、子どものこころを守るためにも、大人たちはさまざまな対策を検討し、講じるべきだろうと述べました。

 

子どもの不登校と自殺

 

子どもの不登校が増えています。2023年度の小中学校の不登校児童生徒数は34万6482人(前年度比+15.9%、在籍生徒に占める割合3.7%)と11年連続で増加し、過去最多となりました。

 

不登校増加の背景として、保護者の意識の変化、コロナ禍の影響による児童生徒の登校意欲の低下、特別な配慮を要する児童生徒への適切な指導・必要な支援への課題、などが指摘されています。不登校の原因としては、やる気が出ない(32.2%)、不安・抑うつ(23.1%)といったメンタルヘルスの問題や、生活リズムの不調(23.0%)、学業不振(15.2%)、友人関係をめぐる問題(13.3%)といった生活面・学校関係の問題が挙げられます。

 

一方、憂慮すべきことに、コロナ禍後、子どもの自殺も高止まりしています。2023年の自殺者総数は2万1837人(前年比−44人)でしたが、そのうち小中高生の自殺者数は513人(前年比−1人)〔うち、小学生13人(前年比−4人)、中学生153人(前年比+10人)、高校生347人(前年比−7人)〕でした。小中高生の原因・動機は、学校問題(261件〔うち、学業不振(65件)、進路に関する悩み(53件)、学校問題その他(51件)、学友との不和(48件)〕)、健康問題(147件)、家庭問題(116件)と、学校問題が最多となっています。

 

ネット上のいじめ

 

いじめは、学校が対応すべき最も大きな課題のひとつです。2023年度の小中高等学校および特別支援学校のいじめの認知件数は73万2568件(前年度+7.4%、児童生徒1000人当たり57.9件)と、コロナ禍の影響で2020年度に一旦減少しましたが、その後3年連続増加して過去最多となっています。

 

増加の背景として、いじめの定義や積極的な認知への理解が広がったこと、アンケート・教育相談の充実など児童生徒に対する見取りの精緻化、ネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなどが考えられます。ネット上のいじめは現代社会における負の側面ですが、外部から見えづらく対応の難しさが指摘されています。

 

当院では、2011年よりネット依存外来を開設して以降、ネット(特にオンラインゲーム)使用のコントロールができず、生活リズムの乱れ、遅刻・欠席や不登校、ネット・SNS上のトラブルを抱えた子どもたちを実臨床において多数診療してきました。ネット・スマートフォンやSNSが身近となった現代社会において、子どもたちのネット・スマートフォンの適切な利用方法、児童生徒の不登校への対応や自殺をどう防ぐか、発達障害や不安・抑うつなどを背景に持つ子どもの診療、DV、児童虐待、教育機関や児童相談所との連携など、多くの課題について、精神科医として検討する必要性に迫られています。これらは、少子化が急速に進行する日本において、子どものこころをどう守っていくのか、私たち大人に課せられた大きな社会的課題であると感じており、皆様にもこれから是非一緒に考えて頂きたいテーマです。

 

私の連載は本稿で終了となります。1年間ご愛読頂きまして誠にありがとうございました。

 

松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[子ども][こころ][メンタルヘルス][不登校][自殺]

   

 

 
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出典:Web医事新報

  

  

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