2024.02.09
3

訪問介護の基本報酬引き下げ 厚労省「加算拡充を含めた改定全体で評価してほしい」

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が下がる点についてクローズアップされ、関連団体からも抗議文が発表される事態となっています。訪問介護は、多くの事業所が訪問介護員(ヘルパー)の人材不足で危機的状況にあることが背景にあります。

そういった状況の中、厚生労働省は人材獲得のため、訪問介護の新しい処遇改善加算は最も多い場合24.5%とれるということ、経営実態調査で訪問介護利益率は他の介護サービス平均2.4%を大きく上回る7.8%だったことなどをあげ、理解を得たい考えです。

 

《 厚労省 》

 

来年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が下がることについて、ホームヘルパーの団体が国へ抗議文を出すなど波紋が広がっている。

 

厚生労働省はどんな考えを持っているのか。これまでの取材で得られた当局の説明をまとめていく。【Joint編集部】

 

「基本報酬だけでなく、ぜひ改定全体をみてもらいたい」

 

厚労省の担当者はこう強調する。国として政策的な思いを込める加算の見直し、新設にも工夫を凝らしており、それも含めたトータルで評価してほしいという。

 

◆ 処遇改善加算、最大24.5%

 

加算の見直しの中でインパクトが最も大きいのは、今回の改定で一本化・拡充される新たな「処遇改善加算」だ。訪問介護には他のサービスより高い加算率(*)が設定された。

 

* 「処遇改善加算」で給付される金額は、個々の事業所の総報酬に加算率をかけて算出される。加算率が高ければそれだけ、事業所は介護職員の賃上げの原資を多く得ることができる。

  

最上位の「加算I」は24.5%。最下位の「加算IV」でも14.5%と、特養や老健、通所介護などの最上位より高くなっている。生産性向上や職場環境の改善、キャリアアップの支援など、より多くの要件を満たす事業所が高い区分に入れる仕組みだ。 

 

 

厚労省はこのほか、訪問介護の事業所に質の高いサービスの提供などを促すインセンティブも強化する。

 

例えば「認知症専門ケア加算」。対象者の範囲を状態の軽い利用者へ広げるなど、従来より取得しやすくなるよう要件を緩和する。また「特定事業所加算」では、看取り期の対応や中山間地域での継続的なサービスの提供なども評価する。加えて、利用者の口腔ケアの情報連携を評価する加算も新たに創設する方針だ。

 

◆ 生産性向上への強い思いも

 

厚労省は「処遇改善加算」の拡充で、ヘルパーの賃上げを具体化することができると見込む。他の加算も併せて取得すれば、事業所の収入が大きく減ってしまう事態も避けられる、あるいは事業所の収入を増やせると目算している。多くの事業所に加算を取ってもらうことを通じ、生産性向上や自立支援・重度化防止などの取り組みを介護現場へもっと普及させていきたい、という政策的な思いも強い。

 

とりわけ重要度の高い「処遇改善加算」については、未対応の事業所をなくしつつ上位区分への移行を後押しする「取得促進事業」に力を入れる方針。小規模な事業所などが取り残されないよう、相談員による助言・指導などのサポートをより積極的に展開していく計画だ。

 

厚労省の担当者は、「訪問介護は担い手不足が最大の課題で、ヘルパーの賃上げが極めて重要。そこで処遇改善加算をかなり手厚く拡充した。ヘルパーの処遇改善を最優先とした」と説明。「今回の一本化で処遇改善加算の複雑さを解消し、事務負担も大幅に軽減する。より上位の区分を取ってもらえるよう、取得促進事業も徹底的に推し進めていく」と述べた。

 

◆ 経営実態調査が重要指標

 

こうした加算の拡充・新設などは、介護現場の関係者などから相応の好評価を得ている。ただ、それも基本報酬を引き下げる理由にはならないのではないか − 。こう首をかしげる人も少なくない。

 

大前提として、議論の背景には今の厳しい財政事情がある。給付費の膨張を抑制し、現役世代の保険料負担などが重くなりすぎないようにするため、メリハリをつけた報酬改定にしなければならない。

 

訪問介護の基本報酬を引き下げる判断の材料として、厚労省は特に2つを明示的にあげている。

 

1つは経営状況だ。主に直近の「経営実態調査」の結果を考慮した。訪問介護の利益率は、2022年度決算で7.8%。全サービス平均の2.4%を大きく上回っていた。

 

また、同一建物減算を算定している事業所とそうでない事業所とを分けて訪問介護の利益率をみると、「算定あり」が9.9%、「算定なし」が6.7%。いずれも全サービス平均より大幅に高かった。

 

訪問介護は利用者が多い。給付費は2022年度で1兆1013億円を超え、特養やデイサービス、老健に次ぐ規模となっている。基本報酬を引き下げれば、給付費を抑制する効果、加算拡充の財源を得る効果などもそれだけ大きくなる。

 

◆ 多職種の処遇改善にも配慮

 

もう1つの判断材料は、介護職員以外の職種の処遇改善を進める必要があることだ。

 

政府は昨年末、来年度の改定で介護報酬を全体として1.59%引き上げ、うち0.98%を「処遇改善加算」の拡充に充てる方針を決めた。

 

ただ、「処遇改善加算」は基本的に介護職員の賃上げを目的とした仕組みだ。例えばケアマネジャーや看護職、リハ職、栄養士、事務職らは、主な対象として想定されていない。このため政府は、残りの0.61%を使って多職種の処遇改善を実現する考えを打ち出していた。

 

訪問介護は利益率が高く、介護職員以外の職種もほとんどいない − 。

 

厚労省はこれを、基本報酬引き下げの大きな理由として説明した。逆に、利益率が低く多くの多職種が働いている特養や老健の基本報酬は今回、大幅に引き上げている。

 

もっとも、介護現場の関係者の間では「どうしても納得できない」といった不満が今も渦巻いている。厚労省は今後、今回の改定の影響をきめ細かく把握して更に必要となる施策を検討していく構えだ。

 
  

 出典: JOINT

 

  

会員登録はこちらから

採用のご相談や各種お問合せ・資料請求はこちら【無料】

 

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP