メディカルサポネット 編集部からのコメント風邪を疑って来院される患者が増える季節となりました。気密性の高い密閉された空間、さらに咳を誘発する処置など、院内は結核感染の条件が揃っています。ガイドラインの徹底や、スタッフの教育・健康管理など、感染予防対策の再確認をお願いします。 |
医療機関で結核の集団感染が相次いでいる。東京都福祉保健局は24日、「大田区保健所管内の病院で、結核に集団感染する事例が発生した」と発表。接触者健診の対象者が100人を超え、現在も保健所が健診を続けている。9月には日本医科大武蔵小杉病院(川崎市)が患者と職員が結核を発病したと発表。当初は同一の感染源からの感染とは断定できなかった。保健所は、こうした院内感染を防止するため、「長引く咳嗽」などを診察する際は「結核を念頭に置いた診療」を行うよう求めている。【新井哉】
東京都内の保健所の「結核接触者健診のてびき」
大田区保健所管内の病院のケースでは、2017年11月下旬、全身衰弱で搬送されてきた60歳代の男性が緊急入院した。入院から6日後に肺結核と診断され、結核病棟のある病院に転院。その3日後に結核で死亡した。
この男性を含めた入院患者・職員など計10人が結核を発病。このうち7人の結核菌の遺伝子検査を行ったところ、初発の男性患者とその後に発病した6人の型が一致した。
都福祉保健局は、感染拡大の主な要因として、▽結核を疑わず、感染性飛沫を大量に誘発する医療処置(たんの吸引)が行われた▽初発患者が入院していた病室の扉が常に開放されていた▽病室の換気が不十分だった―ことを挙げている。
日本医科大武蔵小杉病院のケースでは、17年8月以降、職員や元入院患者が結核を発病したが、感染源が不明であり、同一の感染源からの感染とは特定できなかった。その後も発病者が相次ぎ、18年7月に発病した3人の結核遺伝子型が一致したことを確認。8月に開かれた集団感染対策委員会で、感染源の特定には至っていなかったが「集団感染事例」と判断したという。
川崎市も9月、同市内の医療機関で職員6人と入院患者5人が結核を発病したと発表。17年8月から12月にかけて、5人の結核発病が分かったが、感染源が不明であり、同一の感染源からの感染とは断定できなかった。18年9月に5人の結核遺伝子型の一致が確認され、集団感染事例として、厚生労働省に届け出たという。医療機関で結核患者が発生したことを3月に同省に届け出た札幌市は、「結核は過去の病気ではない」と注意を促している。
出典:医療介護CBニュース