メディカルサポネット 編集部からのコメント9月1日は防災の日でした。避難訓練を行った学校や企業も多いことと思われます。エレベーターなどが使えない中、入院患者を誘導する病院スタッフの方は避難手順はもちろんですが「この建物は安全です!」「私が誘導しますので安心してください」など、まずは患者を安心させ、リーダーを明確にしてから、堂々とした態度で避難誘導することが大切です。定期的な防災の見直しや訓練は日本で暮らす上では不可欠。避難経路と誘導方法、稼働場所ごとに再確認しておきましょう。 |
病棟の防火区画を知っておくことが必要だ―。日本病院会の「病院等における実践的防災訓練ガイドライン」の作成に関わった有賀徹・労働者健康安全機構理事長(日本病院会災害医療対策委員会委員長)は、防火区画を活用した「水平避難」を避難方法の選択肢に加える必要性を挙げている。階段を利用する「垂直避難」を選ばず、火災が発生している場所と同じ階にとどまる方法は効果的なのか。病院の防災に詳しい有賀理事長に、ガイドラインのポイントを聞いた。【新井哉】
防火区画の活用を訴える有賀徹・労働者健康安全機構理事長
ガイドラインは、有賀理事長を含めた防災対策の専門家らが3月に取りまとめた。過去の病院火災の事例から延焼防止対策、時系列による火災時の対応行動までを詳述。全国各地の消防本部のトップで構成する「全国消防長会」が推薦する“実践的”な内容で、「病院の防災訓練のガイドラインに全国消防長会が“お墨付き”を与えたのは初めて」(有賀理事長)という。
建物火災などを想定した防災訓練では、階段を使用した「垂直避難」を行うケースが多い。日本病院会のガイドラインでは、「垂直避難」に加え、建築基準法施行令に基づいた防火区画を活用した避難方法も考えておくよう促している。
有賀理事長は、防火区画について、「火災の延焼拡大を防ぎ、避難を円滑に行う防火施設」との考え方を示している。防火区画の出入り口は特定防火設備の防火戸、配線など区画間の貫通部もモルタルなどで埋めて隙間をつくらない仕様となっており、区画内で出火した場合、「火災を閉じ込める」効果が見込めるからだ。
ガイドラインでは、防火区画を活用することで、「避難誘導対象人数と避難誘導員の数などを勘案した多様な避難方法を選択することが可能」としている。有賀理事長は「病院には自力で歩いて逃げられない患者もいるので、学芸会のような防災訓練にしてはいけない。患者の命を守るため、建物の特徴を考えた避難方法を普段から考えておくべきだ」と訴えている。
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出典:医療介護CBニュース