2022.02.01
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【識者の眼】「妊娠中の新型コロナ治療」柴田綾子

メディカルサポネット 編集部からのコメント

今回の第6波では多くの妊婦さんが新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したり、濃厚接触になっています。妊娠後期はCOVID-19の重症化リスクがあるにもかかわらず、使用できる薬剤が限られているのが現状です。一方、すべての妊娠週数で新型コロナのmRNAワクチンを安全に打つことができると発表されています。日本産科婦人科学会でも妊娠中の方が3回目のワクチン接種が早くできるように、優先接種の要望書を表明するなど、ワクチンによる感染・重症化の予防が有効とされています。

 

第6波ではたくさんの妊婦さんが新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したり濃厚接触になっています。妊娠後期はCOVID-19の重症化リスクがあるいっぽう、使用できる薬剤が限られているのが現状です。

 

1. 軽症

 

対症療法が中心になります。発熱・頭痛・関節痛・咽頭痛にはアセトアミノフェンを使用し、咳にはデキストロメトルファン(メジコン®)や麦門冬湯を使用します。咽頭痛にはハチミツやトローチも使用できます。糖尿病などの合併症や、ワクチン未接種などの重症化リスクがある場合は、抗体カクテル療法(ゼビュディ点滴静注液)、レムデシビル(ベクルリー®)の有益性投与を検討します(軽症に対するレムデジビルは適応外使用となる)。経口薬であるモルヌピラビル(ラゲブリオ®)は胎児の奇形リスクがあるため妊娠中は禁忌です。

 

2. 中等症

 

酸素投与が必要になった場合ステロイドの投与を開始します。妊娠中は、胎盤通過性のあるデキサメタゾンではなくプレドニゾロン40mg/日を使用しています。レムデジビルの投与を検討します。妊娠中は血栓症リスクが高くなるため抗凝固としてヘパリン投与を行います。

 

3. 重症

 

人工呼吸器やECMOの検討が必要な場合、帝王切開を検討します。海外ではトシリズマブ(アクテムラ®)の使用例が報告されています(胎盤通過性があるため有益性投与)。

 

4. 3回目のワクチン接種

 

すべての妊娠週数で新型コロナのmRNAワクチンを安全に打つことができます。米国産婦人科学会では「妊娠中の方、産後6週間までの方は、3回目のワクチン接種を打つことをお勧めします」としています1)。日本産科婦人科学会でも妊娠中の方が3回目のワクチン接種が早くできるように、優先接種の要望書を発表しています2)。

 

妊娠中の方のCOVID-19の治療については、厚生労働省の診療の手引きや、国立成育医療研究センターのHP3)もご参照ください。

 

【文献】

1)米国産科婦人科:COVID-19 Vaccines and Pregnancy:Conversation Guide.

   https://www.acog.org/covid-19/covid-19-vaccines-and-pregnancy-conversation-guide-for-clinicians

2)妊婦に対する新型コロナウイルスワクチン3回目接種の優先接種についての要望.

   https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220117_COVID19.pdf

3)新型コロナウイルス感染症の主な治療薬および候補薬の妊娠中の安全性について.

   https://www.ncchd.go.jp/kusuri/covid19_yakuzai.html

 

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[新型コロナウイルス感染症][妊娠]

 

 

 

 

出典:Web医事新報

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