2021.08.17
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【識者の眼】「保健所マターから主治医判断への転換―0813事務連絡はCOVID-19現場対応を大きく変える」黒木春郎

メディカルサポネット 編集部からのコメント

黒木春郎氏(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会理事・オンライン診療分科会会長)は、厚生労働省が8月13日に発出した事務連絡のうち、「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」が医療現場にとって重要であると述べています。事務連絡では、これまでは新型コロナウイルスの陽性が確認できた場合はまず保健所に連絡し指示を仰ぐようルール化されていましたが、感染爆発によって保健所の機能が追いつかなくなっていることもあり、今後診療所の医師は保健所の判断が無くとも濃厚接触者への検査を促したり、必要な治療や保健指導を行うこととしています。

  

2021年8月13日、厚生労働省は4通の自治体向け事務連絡を発出した。このうち「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」が医療現場にとって重要である。本文の「参考」として、前日12日付の政府分科会の提言から「緊急事態措置地域において更に行うべき対策」が引用され、「災害医療との考えの下での医療提供体制の更なる強化」を取り上げている。ここに決定的な内容が含まれている。

 

当該文書は厚労省HPに上がっているので参照していただきたい(https://www.mhlw.go.jp/content/000819097.pdf)。

 

重要なのは次の部分である。「診療所の医師は、検査陽性者を確認した際には、保健所の判断が無くとも、さらにその家族等の濃厚な接触の可能性のあるものに検査を促すこと。さらに、保健所の連絡を待たず、必要な治療や保健指導を行うこと」

 

これまでは、診療所を受診した患者に新型コロナウイルス検査を行って陽性が確認できた場合は、保健所に連絡し、患者をその指示に委ねた。自宅待機、宿泊施設待機、あるいは入院であるが、病床のひっ迫から、多くの患者は「待機」となり、実際には医療から切り離されていた。自宅や待機所での容態急変による不幸な転帰の報が後を絶たない。こういった患者と、診療所ないし病院がオンライン診療でつながり、経過を観察し、かつ早期治療に取り組むべきであることを私はかねがね主張してきたが、それが国の方針として明らかにされた。

 

感染爆発により保健所の機能はとても追いつかなくなった。最初にその患者を診た医師(主治医)の判断で医療的措置が取られるべきである。その方法はオンライン診療であり、治療内容は漢方薬の投薬、短期入院(病床回転のため)による抗ウイルス薬投与等である。治療を担う医師や医療機関を募り、自治体・保健所・中核病院・医師会の連携会議を作り、総力を挙げて「感染防御」「早期発見」「早期受診」「早期治療」の道筋を作るべきである。

 

8月12日、東京都医師会は自宅待機者をオンライン診療に誘導する仕組み作りに着手したという(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210813/k10013200121000.html)。

 

0813事務連絡は、現況を「災害」と認識した。私たちは災害医療を担うときが来たのである。

 

黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会理事・オンライン診療分科会会長)[新型コロナウイルス感染症]

 

 

出典:Web医事新報

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