メディカルサポネット 編集部からのコメント厚生労働省は現場のケアマネージャーらに向けて「適切なケアマネジメント手法の手引き」を公表しました。日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長は、求められる知識、スキルの高度化も進むなか、適切なケアプランを作れるよう介護支援専門員を支援していくために今回の手引きが出来上がっていると解説しています。"最低限ここだけは"という知見が簡潔にまとめられていて、改めて業務を再確認する手段としても今回の手引きは優れており、ケアマネジメントの質の更なる向上に役立つことはもちろん、業務の"適切な効率化"を実現するツールとしても活用できると述べています。 |
《 適切なケアマネジメント手法の手引き 》
今年6月、国の「適切なケアマネジメント手法の手引き」が新たに公表された。厚生労働省は現場のケアマネジャーらに活用を呼びかける通知を出したが、いったいどんな内容になっているのか? 日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長に策定の経緯や抑えるべきポイントなどを聞いた。【Joint編集部】
−− この手引きが作られることになった背景、問題意識を教えて下さい。
《 日本介護支援専門員協会・濱田副会長 》
今から5年ほど前に遡ります。政府が2016年にまとめた「ニッポン1億総活躍プラン」に構想が書き込まれました。同じ年の審議会の報告書でも、「介護支援専門員の資質向上を図る観点からは、適切なケアマネジメント手法の策定も重要」と提起されていました。
議論の出発点は、以前から指摘されてきた、個々のケアマネジメントの質にバラつきがみられるのではないか、という課題認識です。求められる知識、スキルの高度化も進むなか、適切なケアプランを作れるよう介護支援専門員を支援していくことが必要、という意見もありました。こうした経緯でできあがったのが今回の手引きではないか、と拝察しております。
−− ケアプランの画一化を促すものではないということですね?
はい。手引きではその趣旨や目的を、
○ ケアマネの先達たちが培ってきた知見の中で共通化できる知見に着目し、それを体系化したもの
○ どの介護支援専門員が担当しても一定レベル以上のケアマネジメントが提供されるようにすること
などと説明しています。あくまでもノウハウの共有、質の底上げを目指すもので、どんなケースでもこういう画一的な対応で済ませればいい、という標準化では決してありません。ケースごとの個別化が引き続き重要であることは重ねて強調されています。
−− 手引きのポイントはどんなところですか?
それはやはり、ケアマネジメントで不可欠となる基礎的な知見が改めて分かりやすく整理されているところ、ではないでしょうか。我々介護支援専門員の日常的な業務との親和性は非常に高いと思います。
例えば、高齢者が地域生活を継続する基盤を支える「基本ケア」が土台として示されており、その考え方を再確認できる内容となっていることは重要です。また、それぞれ特有の視点も必要となる「疾患別ケア」の解説も十分に盛り込まれました。この2つを併記し、相互に結びつける構成となっていることが1つのポイントと言えるでしょう。
−− 基本ケアと疾患別ケアの2階建てになっていると聞きました。
はい。疾患別ケアについては様々なエビデンスが出てきており、優れた調査・研究の報告書なども多く公表されています。逆に言うと高度で幅広く、少し学ぶのが大変な領域と言うこともできるでしょう。介護支援専門員はみんな非常に忙しいですから…。
今回の手引きでは、"最低限ここだけは"という知見が簡潔にまとめられています。まずはこれでポイントを抑え、新たな気付きを日々のケアマネジメントに活かしていく − 。その中で必要性が生じたら、より専門的な知見についても積極的に学習していく − 。そうした使い方もできるところが非常に便利だと思っています。
−− ケアマネはどのように活用すればいいのでしょうか?
この手引きの目的の1つに、"ケアプラン検討時の視点の抜け漏れを防ぐ"ということもあります。例えば今、業務の効率化や負担軽減に力を入れている事業所は少なくないでしょう。そうした取り組みは重要ですが、どうしても欠かせない仕事まで省いてしまうとやはり問題ですよね。
ケアマネジメントでは最低限どこを抑えておかなければいけないのか − 。それを再確認する手段としても、今回の手引きは優れていると思います。ケアマネジメントの質の更なる向上に役立つことはもちろん、業務の"適切な効率化"を実現するツールとしても活用できるのではないでしょうか。
また、手引きには自己点検や研修、多職種カンファレンスといったシーンごとの活用方法もまとめられていますので、そちらも非常に参考になることと思います。
出典:JOINT