2021.04.30
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【識者の眼】「歯科医師のワクチン接種、しっかりした計画立案を」槻木恵一

メディカルサポネット 編集部からのコメント

新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は接種に必要な看護師などが確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を4月23日厚生労働省の検討会で決めました。最新の調査では77.3%の歯科医師が今回のワクチン接種に協力したいと表明しており、トレーニングされた歯科医師とその他の歯科医師で役割分担するなど、有効な歯科医師の利用計画が求められています。

 

新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は接種に必要な看護師などが確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を4月23日厚生労働省の検討会で決めた。この様な歯科医師に対する措置は、鼻腔からのPCR検査への協力要請に続き2回目となる。

 

歯学部の解剖学教育では、ご遺体による全身解剖が実施されており、筋肉や骨などの肉眼解剖もかなり詳しく行われている。基礎系においては、生理学や微生物学など総論に関する内容は医学部と同様に行われる。また、日本の歯科医師の業務範囲は広く、口腔癌の手術を歯科医師が単独で実施可能である。そのため口腔外科医や歯科麻酔医には、基本的な医科的トレーニングが行われ、採血や静脈注射、輸血なども行われている。しかし、多くの歯科医師は、地域で開業し、注射の場合は口腔内での浸潤麻酔が主であり、筋肉注射をした経験がある歯科医師はほとんどいない。すなわち、医科的なトレーニングを受けた歯科医師とその経験がない歯科医師の2種類いるのである。

 

これを一律に動員するのではなく、トレーニングされた歯科医師を主にワクチン接種に動員し、その他の歯科医師は後方支援という役割分担にしてはどうだろう。また、この措置は集団接種会場に限り行われる予定の様だが、歯学部附属病院には、内科系の医師が通常3名は配置されおり、口腔外科医や歯科麻酔医も多く在籍している。この施設の有効利用も一考ではないだろうか。本学では、歯学部附属病院以外に分院も設置しており、常勤医師が6名在籍している。また講堂などの施設もある。特に、職員のワクチン接種も既に2回済んでおり、有望な施設ではないかと考えられる。同様の施設は全国に数は多くないが存在している。

 

m3.com会員に対して実施した調査では77.3%の歯科医師が、今回のワクチン接種に協力したいと表明している。これは、歯科医師としても、この非常事態にできうる限り協力したいという姿勢からである。しかし、歯科医師が協力すべきと回答した医師は26.6%であった。

 

ぜひ、厚生労働省には、単なるアドバルーンではなく、有効な歯科医師の利用計画をしっかり立案して欲しい。

 

槻木恵一(神奈川歯科大学副学長)[新型コロナウイルス感染症 ]

 

 

 

出典:Web医事新報

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