2021.04.23
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コロナに負けるな! 医療を支える最新テクノロジー

メディカルサポネット 編集部からのコメント

新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、医療現場では患者と医療従事者とのコミュニケーションすらままならない状況ですが、そうした中でコロナ禍の医療介護現場を支えてくれる、「夜間休日の救急医療往診代行」「リモート機能訓練」「医療過疎地へのドローン薬配送」の3つのテクノロジーを紹介します。

  

 新型コロナウイルスの感染が各地で拡大し、医療現場では、患者と医療従事者とのコミュニケーションすらままならない状況です。そうした中で、最新技術の活用が現場で進み、医療サービスの提供の仕方が変化しつつあります。新型コロナに負けるな。コロナ禍の医療介護現場を支えてくれる3つのテクノロジーを紹介します。【井上千子、兼松昭夫】

 

不急の救急車要請を救急往診で代替する

ファストドクター 


写真提供=ファストドクター

 

 総務省消防庁の調査によると、救急車で搬送した結果、軽症と診断されたケースは48.8%を占めており、不要不急の救急搬送が社会問題となっている。逼迫する救急医療に新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、救急病院での受け入れ制限や、搬送患者のたらい回しが相次いで報じられている。

 

 そのような夜間や休日の救急医療を往診代行するサービスが「ファストドクター」だ。現在は、関東・関西・九州の都市部でサービスを提供している。

 

 利用者が電話やLINE、アプリで受付をすると、看護師が常駐するコールセンターが利用者に聞き取りを行う。スタッフがプロトコルに基づき利用者の緊急度に応じてトリアージを行い、往診の要否を判断。「緊急受診」または「早期受診」が必要と分類されると、近隣の医療機関を案内するか、提携医療機関の医師の最終判断の下、往診に対応するシステムだ。診察料は健康保険が適用される。時間外、休日、夜間と時間帯により加算が異なるが、3割負担の場合7,950円から。これに別途、交通費(実費で1キロメートル当たり30円)が加わる。また、夜間往診が困難なかかりつけ医に代わり、紹介状を介して往診代行も実施している。

 

 2月からは東京都板橋区と連携し、自宅療養や入院待機中の新型コロナウイルス患者の容体急変にファストドクターが対応する体制を開始した。区の専用ダイヤルに連絡すると、医師や看護師が救急相談に応じ、必要な場合は、医師が往診に応じる。また、診察代や薬の処方に係る費用は公費で負担される。ファストドクターでは「自宅療養中の患者の不安解消や保健所の負担軽減が期待できる」としている。

 

理学療法士ら専門家が遠隔で機能訓練支援

NEC・リモート機能訓練支援サービス

 

写真提供=株式会社タウンニュース社

 

 デイサービスなど介護施設における機能訓練では、理学療法士や作業療法士などが利用者のサポートに付くため濃厚接触が避けられず、コロナ禍では敬遠されがちになっている。そのような中、NECはデイサービス向けに、専門家によるリモート(遠隔)で機能訓練を支援するサービスを提供する。

 

 まず、介護スタッフが利用者の要介護度や希望等の情報を登録。その後、利用者の歩行動画を撮影し、遠隔地にいる理学療法士や作業療法士など専門家に送付する。遠隔の専門家は要介護度や利用者の生活上の目標や希望に合わせ評価レポートを作成し、運動プログラム動画と共に送付する。評価レポートは個別機能訓練加算の算定要件である機能訓練計画書の案も出力でき、業務削減につながるメリットもあるという。

 

 運動プログラム動画は利用者ごとに6種類の運動で構成されており、利用者はタブレット端末で視聴し、動画に従い13分間運動をする。運動時は、介護施設の機能訓練指導員が動画と利用者の動きを確認しながら「もっとゆっくり動かしてください」などとアドバイスを行う。

 

 NECは2020年10月から12月まで、デイサービス利用者22人に対し、サービスの効果を検証する実験を実施。2カ月前と後の利用者の歩行動画を専門家が比較したところ、すり足の軽減や歩行速度の向上、腰の安定性向上などの変化が見られたという。また、利用者へのアンケートでは、個別機能訓練を継続したいという回答が9割に達し、遠隔でありながらモチベーションの維持も確認できた。今後は「幅広い人々に専門家のノウハウを提供できるようにサービスを強化していく」と話している。

 

ドローンで薬配送、22年度に実用化

医療過疎地で接触減「可能性探りたい」

 

写真提供=エー・ディー・イー

 

 オートバックスセブンの子会社で、ドローン事業の「エー・ディー・イー」(大分県別府市)では、自動航行のドローンによる医薬品配送の22年度の実用化を目指して実証事業を進めている。2月には県などと共同で実証実験を行い、運用プロセスを確認した。エー・ディー・イーの担当者は「新型コロナの感染拡大を防ぐのに、ドローンを医療過疎地で役立てる可能性を探りたい」と話している。

 

 この実証事業はフェーズ1に当たり、エー・ディー・イーや県のほか、同県竹田市内の医療法人社団大久保病院など7者が共同で行った。

 

 2月22日、市南部の宮砥地区を離陸した輸送用ドローンは自動航行で6-7分ほどかけて約1キロ移動し(写真)、公民館のグラウンドに設置されたドローンポートに無事着陸。箱の中に収められた医薬品を、医師役が患者の本人確認をした上で手渡した。

 

 宮砥地区には医療機関や薬局がなく、約40キロ離れた大久保病院が週1回訪問し、一度に複数の患者を診療している。その際、事前に処方した薬を準備するが、想定外の薬が必要になることがある。そうしたケースでは、病院に戻ってから改めて処方するため、患者は翌週の訪問まで薬を受け取れない。

 

 自動航行のドローンが導入されれば、医師が訪問先からファクスした「処方箋情報」に基づき大久保病院の近くの薬局が調剤し、薬を配送できる。患者は当日に薬を受け取ることができるという。

 

 ただ、風速5メートル以上の天候や、住宅地など人口密集地での飛行は規制されている。エー・ディー・イーでは「ドローンを活用すれば医療過疎地で接触の機会を減らせるかもしれない。今の規制の枠組みで可能性を探りたい」と話している。

 

 実証実験の第2フェーズは、山間部や離島を想定し、早期の実施を目指す。ガソリンエンジンでバッテリーを充電しながら飛行できる産業用のハイブリッドドローンを日本で初めて使い、効果や課題を引き続き検証する。

 

 

出典:医療介護CBニュース

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