2020.06.25
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コロナ対策、入院患者とスマホアプリでやりとり
病室に行けなくても、元看護師ら開発へ

メディカルサポネット 編集部からのコメント

元看護師らが、新型コロナウイルスの院内感染を防ぐためのスマートフォン用アプリの開発を進めています。入院患者とスマホを使ってやりとりすることで、訪室の回数をコントロールし、感染リスクを抑えるのが狙いです。現時点では、新型コロナウイルスの軽症な入院患者らの利用を想定しています。

  

 新型コロナウイルスの院内感染を防ぐため看護職員の「訪室」が制限されても患者とコミュニケーションを取れるようにしようと、元看護師らがスマートフォン用のアプリの開発を進めている。入院患者がスマホ経由で看護部に依頼などを伝えると、病室に直接行かなくてもスタッフ間で情報共有できる仕組み。「療養上の世話」に関する相談など、緊急性は比較的低くても入院生活に不可欠な患者からの依頼にまとめて対応できるようにすることで、訪室の回数をコントロールして感染リスクを抑えるのが狙い。【兼松昭夫】

 

 開発中のアプリ「ちょいリク」は、患者が自分のスマホでQRコードを読み取って入院中にのみ利用する。最初に入力するのは、個人の識別に必要な部屋番号などの「患者情報」で、氏名などの個人情報はやりとりしない=図=。現時点では、新型コロナの軽症な入院患者らの利用を想定している。

 

 

 アプリの開発プロジェクトを進めているのは、急性期病院での勤務経験がある元看護師で「OPERe」代表の澤田優香さんで、同じく元看護師の簗取萌さんがスーパーバイザーとして進行管理などを担当している。ロボット開発を手掛ける「GROOVE X」(東京都中央区)、金属加工の「浜野製作所」(墨田区)、福祉・介護機器を設計開発する「マリス creative design」(同)、トヨタ自動車の社内有志団体「MONO Creator’s Lab」(愛知県豊田市)の開発者らに声を掛け、3月から本格的な開発に乗り出した。

 

 新型コロナの患者を受け入れる病院では、スタッフに感染を広げるのを患者が恐れ、緊急性を伴わない依頼を遠慮しがちだという。一方、医療現場では、感染を防ぐ「個人用防護具」(PPE)が不足し、看護職員らが病室を訪れる訪室を病院側が制限するケースが目立つ。しかし、患者の入院生活を支え、容体急変を早めに察知したり精神的なケアに適切に対応したりするには、むしろきめ細かなコミュニケーションが必要だ。

 

 従来のナースコールは急変時の早期対応に不可欠だが、患者と看護職員の細かなコミュニケーションは想定しておらず、音声を聞き取りにくいなど限界があった。「新型コロナの感染が広がるとコミュニケーション不全の解消が課題になった。今までとは違う“新しいコミュニケーション”が必要だ」と澤田さんは話している。

 

 「ちょいリク」でやりとりするのは、体温などバイタルサインの測定結果や、緊急性が比較的低いものの対応が不可欠な「療養上の世話」に関する依頼など。看護職員への依頼は、患者がメニューの中から選択してから詳しい内容をチャットする仕組みで、買い物など一部の依頼は患者から売店に直接飛ばすこともできる。看護部では、それらの内容と「患者情報」をリンクした一覧を共有する。

 

 それによって、患者が好きな時にスマホで気兼ねなく依頼を出し、看護職員は限られた訪室の際、依頼にまとめて対応できるようにするのが狙い。簗取さんは「看護部門全体で業務をシェアして専門性に応じて再編成すれば、たとえ訪室を制限されても看護師が本来業務に専念しやすくなる」と話している。

 

 現在は東京都内の急性期病院で試作品を導入し、澤田さんらが検証を進めている。患者向けのヒアリングやこれまでの検証では、「これなら気兼ねなく要望を伝えることができる」などと評価され、手応えを感じている。患者には利用料などを求めない方針で、感染拡大の第2波に備えて商品化を急ぐ。

 

問い合わせは「OPERe」まで

info@opere.jp

 

 

出典:医療介護CBニュース

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