2024.08.05
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令和6年度介護報酬改定の総括 〜加算算定の重要性〜

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.14

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第14回は、「令和6年度介護報酬改定の総括 〜加算算定の重要性〜」です。

令和6年度介護報酬改定では基本報酬の引き上げが叶わず、これからの収入確保には加算算定が重要なテーマになっていきます。上位区分が新設された加算はどのようなものがあるのか、どのような加算を取得すべきなのか解説いただきます。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

             

  

                    

1. 加算とは何か

これまで、介護事業者の中には加算の算定から敢えて避ける風潮があった。それは、加算の算定によって利用者の自己負担が増加すること。担当のケアマネジャーが加算の算定の少ない事業者を優先とする傾向があったことなどが理由である。しかし、これは、基本報酬だけで事業の継続が出来た遠い過去の時代の考え方である。

 

令和6年度介護報酬改定において、基本報酬の引き上げが叶わなかった現実から、これからの収入確保は加算算定が重要なテーマとなっていくことは明らかである。そもそも加算とは、国が介護事業者に求めるハードルに報酬をつけたものだ。加算をより多く算定する事業所は、国の従ったレベルの質の高い事業所と評価される。加算算定が出来ない事業所は、国の求めるレベルに達していない質の低い事業所だという事を理解する必要がある。

 

令和6年度介護報酬改定においては、加算の算定が明暗を分ける。今回の報酬審議においてメリハリという言葉が何度も語られた。今回はメリハリの改定である。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げる。これがメリハリである。今回の加算算定では、同じサービス内での二極化が拡大するだろう。

 

         

2. 加算の上位区分が設けられた意味

定期巡回サービスの基本報酬がマイナス4.4%と最大規模のマイナスとなった。基本報酬の月額単位としては700単位前後のマイナスである。過去に於いて、ここまでのマイナス査定は平成27年度の小規模デイサービス以来である。

 

そのような中で、総合マネジメント体制強化加算に上位区分が設けられた。もちろん、新たなる算定要件というハードルを越えないと算定できない。その上位区分は200単位のプラスとなることから、この算定は必須となっている。では、この200単位はどこから持ってきたのか。それは、既存の区分1000単位を800単位に減額して付け替えたのだ。この手法は、他の加算でも多く見受けられる。

 

今回の報酬審議において、メリハリという言葉が何度も語られている。今回の介護報酬はメリハリの改定である。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げる。これがメリハリである。基本報酬が700単位下げられた中で、この上位区分を算定することでマイナスは500単位に軽減される。しかし、上位区分を算定できない場合は、マイナスが900単位に増大する。今回の加算算定では、同じサービス内での二極化が拡大することとなる。算定基準というハードルを越えられない場合、事業収益が大きく減少することとなる。

 

今回の報酬改定では、明らかにレベルアップが求められている。この上位区分については、訪問看護の初回加算、特定施設の夜間看護体制加算、老健の初期加算やリハビリテーションマネジメント計画書情報加算、短期集中リハビリテーション実施加算、かかりつけ医連携薬剤調整加算、多機能型の認知症加算、通所リハのリハビリテーションマネジメント加算などに設けられている。

  

図表1:総合マネジメント体制強化加算の見直し①

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について

         

  

3. 訪問介護は特定事業所加算の算定が明暗を分ける

訪問介護は基本報酬が2%以上も引き下げられた。通常の場合、介護報酬単位が引き下げられた場合の対応策として稼働率のアップと加算算定を進めるのが定石である。しかし、訪問介護は有効求人倍率が15倍を超えており、圧倒的なヘルパー不足の中で、稼働率のアップは容易ではない。

 

他の介護サービスであれば、加算を算定する事でマイナス分をリカバリーすることが考えられるしかし、特に訪問介護は、加算の種類が最も少ないサービスである。そのような状況下で

 

 

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