看護マネジメントの基礎            

編集部より

看護マネジメントはよりよいサービスの提供、職場の円滑な人間関係の構築、業務効率化に欠かせないものですが、看護マネジメントの具体的な仕組みや進め方を知らないまま職員に看護管理を任せてしまうと、看護管理がうまく機能せず、現場が混乱してしまう原因にもなりかねません。看護マネジメントに関する知識は、医療関係者にとって必ず把握しておくべきものでしょう。

 

この連載では、看護マネジメントに関するさまざまなテーマを取り上げます。第1回は「看護マネジメントの基礎」に焦点を合わせ、看護マネジメントの定義や意義、リーダーシップとの違い、具体的な役職ごとの役割などについて解説していきます。

  

執筆/株式会社ナレッジリング(朝倉奈津子)

編集/メディカルサポネット編集部

          

 


  

  

1.看護マネジメントとは何か

 

話し合う看護師たち 

看護マネジメントとは、人材、物資、予算、情報、時間、組織といった看護業務を取り巻くすべての要素を効果的に管理・調整し、質の高い看護サービスを提供するためのプロセスや活動を指します。

患者ケアの質向上、働きやすい職場環境の構築、医療資源の効率的活用などをめざし、それらの目標が達成できるように看護スタッフ全員を導き、達成度を適切に評価していきます。

 

それを実現するためには、現場管理、組織運営、コミュニケーションなど、看護現場で活用できる幅広い理論を理解し、実践的な能力を磨く必要があります。

 

看護師一人ひとりが心からのケアを行っていたとしても、その方向性が統一されていなければ、組織としての統率を取ることは難しくなります。

どの患者さんにも良質な看護を提供するためには、看護管理者が優れた看護技術を持つことに加えて、看護師たちを適切な方向に導くためのスキル向上や知識習得が求められるのです。

 

  

2.リーダーシップとマネジメントの違い

 

マネジメントのイメージ 

看護における「リーダーシップ」と「マネジメント」は同じような言葉だと思われがちですが、それぞれ異なるニュアンスを持ちます

 

例えば、病棟が非常に忙しい中でケア度の高い入院患者さんを受け入れる場合を考えてみましょう。

このとき、「チーム全員で協力しましょう! 困ったことや不安なことがあれば、遠慮なく相談してください」とスタッフの士気を高め、挑戦する気持ちを育てるような働きかけがリーダーシップです。

 

一方、他の患者さんの安全を確保しながら、新しい入院患者さんにも適切に対応できるように、スタッフの勤務調整や受け持ち患者さんの見直しを行うことがマネジメントだと言えます。

 

この例からも分かるように、リーダーシップとは主に、目標に向かって人を動かす力を指します。

チームに明確な方向性や理想像を示し、スタッフの成長や潜在能力を引き出す関わり方をすることで、チーム全体の力を向上させていきます。

 

また、現場の状況に応じて迅速かつ柔軟に対応しながらチームを統率する力も、リーダーシップにおいては重要です

特に、医療現場では急な変化や課題が生じることが多いため、状況を冷静に判断し、適切な行動を導く能力が求められます。

 

リーダーシップを発揮するには、チーム全体の雰囲気や個々の状態、そして感情や心理面にも目を向け、丁寧に関わる姿勢が重要です。

信頼関係を築きながら、チーム内で安心して意見を出し合える環境を整えることが、よりよい看護ケアの実現につながります。

 

一方、マネジメントは、目標を達成するための計画を策定して、効率よく進むように組織を管理する能力を指します。

現場の状況を的確に把握し、現時点でできていること/できていないことを分析して、人材や物資といった組織のリソースを適切に配分します。

 

また、計画を実行するだけではなく、チームの成果を測定し、そこから改善点を見出すことも求められます。

問題解決やリスク管理を通じて、安定かつ持続可能な組織になるように運営を支えることも、マネジメントの大切な要素です。

 

それぞれの特徴を比較してみると、リーダーシップとマネジメントは、看護の現場においてどちらも欠かせないことが分かるでしょう。

患者さんに質の高い看護を提供し、組織としての成果を最大化するためには、どちらか一方に偏るのではなく、両者をバランスよく生かす意識が重要です。

  

 

3.看護の現場になぜマネジメントが必要なのか

 

話し合う医療チーム 

看護の現場では、安全で質の高いケアを提供することが求められます。

それを実現するためには、看護マネジメントの力で限られたリソースを効果的に活用し、スタッフの働きやすさや業務の効率化を一体的に進めていく必要があります。

 

また、チーム医療の一翼を担う専門職として、他職種との連携も不可欠です。

適切なマネジメントがあれば、効果的な役割分担や円滑なコミュニケーションが発揮され、トラブルを未然に防ぐこともできるでしょう

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