2025.07.22
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骨太の方針2025を読み解く

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.9~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

  

第9回は、「骨太の方針2025を読み解く」です。

 

日本経済と社会保障の両立を図るための基本方針「骨太の方針2025」が閣議決定されました。この方針は今後、介護業界にも大きな影響を与えるものですが、この政策を単なる背景情報として捉えるのではなく、自社の成長に活用する視点が重要です。

今回の記事では、介護事業所の経営に関連する注目すべきポイントを整理し、これらをどのように経営戦略に組み込むかについて具体的に解説します。

介護事業を経営されている方にとって、必ずお役に立つ内容となっております。ぜひお読みください。

     

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 骨太の方針2025が介護経営に与える意味

令和7年6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」は、日本経済と社会保障の両立を図る政府の基本方針として、今後の介護業界にも深い影響を及ぼす内容となっている。

今回は、介護事業所経営において注目すべきポイントを整理し、どのように経営戦略へ組み込むべきかを解説する。

政策を単なる背景としてではなく、自社の発展のための材料としてどう読み解くかが、これからの介護経営の分水嶺となる。 

  

 

2. 賃上げを軸とした処遇改善の本質

今回の骨太の方針の柱の一つは、「物価上昇を上回る賃上げ」である。

これは介護業界にとっては極めて直接的なテーマであることは言うまでもない。

慢性的な人材不足と離職率の高さは、賃金水準と処遇の在り方に大きく起因してきた。

これを改善するために、公定価格である介護報酬を適正に引き上げ、人材確保の基盤を整えるという方向性は正しいと言える。

 

しかし、政府は同時に財政健全化を明確に掲げている以上、無尽蔵に公費が投下されることはない。

報酬改定に伴い、利用者負担の見直しやサービス提供範囲の適正化といった議論が避けられないのも現実である。

介護事業者としては、処遇改善加算などの従来型の補助制度だけに依存するのではなく自社の賃金体系をどう整備し、職員が納得できるキャリアパスを描けるかを主体的に設計することが求められる。

 

単なるベースアップだけでなく、評価制度の透明化や多様な働き方を支える制度設計、福利厚生の充実など、多角的な施策を組み合わせて初めて、真の意味での処遇改善が成立する。

経営者としては、来るべき次回報酬改定を見据え、コスト構造の見直しや労務管理体制の再構築を進めておくべきである。

 

 

3. ICT化と生産性向上投資の好機を逃さない

「骨太の方針2025」は、介護福祉分野におけるICT・デジタル技術の導入を強く後押ししている。

政府が掲げる「省力化投資促進プラン」は、介護現場にこそ最も有効に作用するものである。

人手不足を補い、職員の負担を軽減し、サービスの質を維持するために、デジタル技術はもはや不可欠である。

 

例えば、
 

 

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