編集部より

自分のクリニックを立ち上げるのは、そこまでに大変な努力の積み上げが必要です。しかしそこで終わりではなく、開業した後は速やかに地域の信頼を勝ち得て経営を軌道に乗せる必要があります。

本記事ではこいけ診療所所長で医師の小池雅美さんに、来院者から好印象を得られる接遇の向上の取り組みがなぜ必要か、接遇向上の現状、改善のための具体的なポイントなどを伺いました。

 

監修/小池雅美 医師 こいけ診療所院長

文/ 美濃佳奈子 薬事ライター

          

 

クリニックの受付で同僚に微笑む女性看護師  

売上増加に向けた施策のひとつとして、「接遇向上」の取り組みは有効です。既存患者さんの満足度向上により再診率の増加が期待できます。しかし、限られた診療時間での対応が難しく、実践に至らないクリニックもあるのではないでしょうか。今回は、クリニックで取り組みたい、患者さんから好印象を得らえる接遇のポイントについて解説します。

 

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1.そもそも「接遇」とは?

ハートのモチーフを持ち、支えあう二人の手

 

医療機関における接遇とは、一般的な小売店での接客とは異なり「患者さんの不安や悩みに寄り添い、思いやりの心を持った言葉遣いや対応をすること」といえます。ます。接遇は「もてなし」の気持ちが必要であり、単なる説明や事務的な受け答えでは不十分です。特に地域密着型のクリニックでは接遇によって患者さんの定着に差が出てしまうため、意識的に取り組む必要があります。

 

とはいえ、短時間のうちに多くの患者さんを診察する必要がある外来対応時には、患者さん個々の心理面までサポートする余裕はないというのが本音ではないでしょうか。そうしたなかでも、できるだけ症状に関する悩みには真摯に寄り添っているという医師や看護師は少なくありません。しかし、言葉選びによっては、悪印象を与えてしまうことがあるため、注意が必要です。クリニックとしてどのような接遇対策を実施すべきか、指針を決めて取り組むことが大切です

 

2.接遇向上に取り組むメリット

聴診器を使って小児を診察する医師のイメージ 

接遇への取り組みは、患者さんのためだけに行うものではありません。経営においてもさまざまなメリットがあります。

 

クリニックの評価があがり、売上アップが期待できる

接遇向上は、患者さんとの信頼関係を強固にするきっかけとなり、再診率アップにつながります。患者さんは、寄り添ってもらえたという安心感や満足感を得て再診を決めるだけでなく、口コミで認知度を高めてくれることもあります。

加えて、コミュニケーションが充実すれば、患者さん自身だけでなく、家族の情報を聞き取ることもできるでしょう。カルテに記録した家族情報をもとに、家族全体への生活指導ができるようになれば、さらに信頼度が増し、家族や親族まで紹介してくれることもあります。結果として、初診患者も増える可能性があり、売上アップが期待できるでしょう。

 

【関連記事】「クリニックの再診率を上げるには?」

 

「医療安全」への取り組みとして

接遇は患者さんとのコミュニケーションを支える土台であり、安心して医療を受けられる環境を整える「医療安全」に関わります。接遇向上により、患者さんは安心して治療に向き合うことができ、医師や医療スタッフやそれまでに培ったテクニカルスキルを発揮しながら、適切な治療を提供できるようになります。また、コミュニケーションの機会が増えることでトラブルを回避できたり、リスクを軽減できたりするメリットもあります。接遇は診療をスムーズにする手段の1つであることも理解しておきましょう。

 

スタッフの定着率向上

接遇への取り組みは、院内スタッフの人間関係にも大きく影響します。院内業務をスムーズ進めるためには、スタッフ間においてもお互いに思いやりの気持ちが必要です。患者さんへの接遇向上に取り組むといっても、スタッフ側に気持ちの余裕がなければ、うまくいきません。接遇対策の一環として、働きやすい環境を整える取り組みにも着手することになるでしょう。そうした職場環境の改善により、スタッフの定着率向上も期待できます。

 

3.医療機関における「接遇」の現状

車いすの患者さんに寄り添う女性医師  

令和2年受療行動調査(厚生労働省)では、外来患者が病院職員に感じている問題点や、接遇に関する調査結果を報告しています。

  

医師や看護師、薬剤師、その他医療職など、それぞれ対象別に問題点が挙げられているものの、接遇において「励ましやいたわり、温かみのある態度(が行き届いていない)」とする回答が、共通して最も多い結果となっています

 

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