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2021.09.24
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★映画レビュー★『MINAMATA―ミナマタ―』
ジョニー・デップが最新作で放つ警告と希望の光

編集部より

ジョニー・デップ最新作は、自身が製作・主演を務めた思い入れの強い作品となりました。そのテーマは日本の四大公害病の1つである水俣病。水俣病の「真実」をどう描き、人々に訴えかけるのでしょうか。

 

文/中澤 仁美(ナレッジリング)

編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

水俣病に迫った世界的写真家の物語『MINAMATA―ミナマタ―』

写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスが1975年に発表した写真集『MINAMATA』は、日本における四大公害病の1つである水俣病を世界に知らしめ、大反響を呼んだ作品です。

 

ジョニー・デップは、このユージン・スミスに長年あこがれを抱いていたといいます。「映画の持つ力をフルに活用して、この歴史は語り継がれなければならない」と『MINAMATA』の映画化を熱望し、彼自身の制作・主演で実現したのが本作『MINAMATA―ミナマタ―』です。2020年のベルリン国際映画祭で特別招待作としてワールドプレミア上映され、ユージン・スミスの生きざまをリアルに現代へ蘇らせたその演技は「デップが役に消える」と各国メディアに絶賛されました。

 

 

「ユージン・スミスの写真に惹かれ続けたのは、一枚一枚にいつも真実が示されているから」とジョニー・デップは語る。

 

水俣の地に居を構え「真実」にレンズを向け続けた

1971年、ニューヨーク――。報道写真家として世界的評価を得ながらも、ユージン・スミス(ジョニー・デップ)は心に傷を抱え、酒におぼれる荒んだ日々を送っていました。そうしたとき、日本人の血が流れるアイリーン(美波)と仕事を通じて出会い、「工場が海に流す有害物質で苦しむ水俣の人々を撮影して、この悲劇を世界に伝えてほしい」と頼まれます。

 

当初は全くやる気のみられないユージンでしたが、渡された資料に目を通すと、何かに衝き動かされるように日本へ飛びます。ユージンはアイリーンと共に、そこから3年間を熊本県水俣市で過ごし、市井の人々の日常、水銀に冒されて歩くことも話すこともできない子どもたち、激化する抗議運動などに向き合い、驚きながらも冷静にシャッターを切り続けることになるのです。

 

ユージンは水俣病に苦しむ患者さんや地域の人々と丁寧に関係を築いていこうとしますが、当初はカメラを向けると顔をそむけられたり撮影を拒否されたりして思うように仕事が進まず、いらだちが募ります。さらには、ある人物からの申し出を拒否したことで、暴力的な対応を受け始めます。追い詰められたユージンは、自分なりのやり方で真実に迫ろうと、水俣病と共に生きる家族たちにある提案をするのですが……。

 

 仮面病棟 画像2

本物のユージン・スミスが蘇ったように思える瞬間がたびたびあるほど、ジョニー・デップの役作りには凄みがあった。

 

戦場で傷付いた男が再び立ち上がるまでの復活の物語

ご存じの通り、戦後日本の高度経済成長期には、水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどの公害病をはじめとする公害問題が社会に重くのしかかっていました。20代前半でユージン・スミスの写真に出合ったというジョニー・デップは、「彼は献身的で情熱的なアーティストで、自分を犠牲にしてでも真実を追い求めた。彼が写真を通して意見を表明したことで、たくさんの戦場写真家やジャーナリストが刺激を受けてリスクを恐れなくなった」とユージンの功績を熱く語っています。

 

ユージン・スミスは、「Newsweek」誌や「LIFE」誌のカメラマンとして数多くの優れた作品を発表し、「ポピュラー・フォトグラフィー」誌では世界の十大写真家の1人に選出されています。しかし、太平洋戦争中にサイパン、沖縄、硫黄島などの激戦地で取材を重ねるうちに砲弾の爆風を受けて重傷を負い、後遺症に苦しんで薬やアルコールに依存し、1971年当時はカメラさえ手放している状態でした。

 

この映画は、傷付いた写真家が再びカメラを手に取り、立ち上がって闘いに身を投じていく復活の物語でもあり、ジョニー・デップはインタビューの中で「ミナマタが彼の心を再び開いたのだと思う」と語っています。

 

本作ではジョニー・デップや美波の演技はもちろんのこと、ビル・ナイ(ユージンの活動を支援する「LIFE」編集長ロバート・“ボブ”・ヘイズ役)や國村隼(工業排水により水俣病を引き起こした企業社長ノジマ・ジュンイチ役)の熱演からも目が離せません。流暢な英語を操る國村隼とジョニー・デップの応酬は必見です。

 

 

仮面病棟 サブ1

 

 

さらには、住民のリーダー的存在のヤマザキ・ミツオ役に真田広之、自らも水俣病を発症しながら記録フィルムを回し続ける住民のキヨシ役に加瀬亮、胎児性水俣病患者の娘を持つ夫婦(マツムラ・タツオ、マツムラ・マサコ)役に浅野忠信、岩瀬晶子など実力派キャストが集まり、物語に奥行きを加えています。

 

 

  

スポットを当てたのは「対立」ではなく「連帯」

本作の監督に抜擢された新鋭アンドリュー・レヴィタスは、「権力に真実を語る勇気」を本作のテーマの一つに挙げています。「ヒロ(真田広之)は特に本作のヒーローで、彼は世界を変えるために立ち上がろうと仲間に呼びかけ、それを見たユージンも自分のやり方で真実を語り、大手雑誌社のトップであるロバートも責任を果たすのです」と語り、単なる弱者と権力者の対立ではなく、社会変革のためにあらゆる階層の人々が連帯する重要性を描いたことを強調しています。

 

所々で実写フィルムも差し挟まれていますが、本作は記録映画のたぐいではありません。細部までこだわった70年代地方都市の再現度には目を見張り、スパイ映画さながらのスリリングな病院潜入シーンでは心拍数が上がり、ユージンが決意する潔さには心を打たれます。どこまでも美しい風景には坂本龍一が手がけた音楽が寄り添うように響き、物語はテンポよく進んで静謐で感動的なラストシーンへ収束していきます。深い余韻に浸りながらも、本作に託された警告と希望の光をしっかりと受け止めたいところです。

 

 

仮面病棟 ポスター

『MINAMATA―ミナマタ―』

© 2020 MINAMATA FILM, LLC

© Larry Horricks

9月23日(木・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開

 

製作:ジョニー・デップ

監督:アンドリュー・レヴィタス 脚本:デヴィッド・ケスラー

原案:写真集「MINAMATA」W.ユージン・スミス、アイリーンM.スミス(著)

出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、

and  ビル・ナイ

音楽:坂本龍一

 

提供:ニューセレクト株式会社、カルチュア・パブリッシャーズ、ロングライド 

配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム

2020年/アメリカ/英語・日本語/115分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/

原題:MINAMATA/日本語字幕:髙内朝子

公式サイト:longride.jp/minamata/

 

 

 

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