2019.07.23
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迷惑行為や不払い、診療拒否の正当化事例を通知へ
応召義務の新たな解釈、厚労省「今年秋にも」

メディカルサポネット 編集部からのコメント

医師の働き方改革が進められる中、時間外労働の短縮を検討する上で応召義務がネックになっていることから、厚生労働省は応召義務の考え方を改めて整理し、早ければ秋にも通知を出す見込みです。

18日に第67回社会保障審議会(医療部会)が開催され、議題の一つとして「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究について」が取り上げられました。研究班の報告書では、診療の拒否が正当化される個別的なケースを整理。「診療時間内・勤務時間内」の場合は、総合的に考慮した上で「診療が不可能といえる場合にのみ、診療しないことが正当化される」とし、「診療時間外・勤務時間外」は「原則、公法上・私法上の責任に問われることはないと考えられる」などとしています。

   

 厚生労働省は18日の社会保障審議会・医療部会で、現在の医療提供体制の在り方や医師の勤務環境などを踏まえた、医師の応召義務に関する新たな解釈を都道府県へ通知する方針を明らかにした。応召義務があっても診療をしないことが正当化される事例を、患者の病状の深刻度や迷惑行為、医療費の不払いなどのケースに応じて整理する。同省は、早ければ秋にも通知を出したい考えだ。【松村秀士】

  

医療関係者に正しく伝わるよう通知すると述べた吉田医政局長=中央=(18日、東京都内)

    

 医療部会で厚労省の吉田学医政局長は、新たな通知について、「応召義務という言葉を法的にどう整理できるかということだ。医療関係者に正しくメッセージが伝わるよう、発信する際には留意する」と説明。また、同省の担当者は医療部会の終了後、記者団に対して、「早ければ今年秋にも通知を出したい」と述べた。

   

 医師法19条1項で規定されている応召義務は、診療に従事する医師に関して、診療治療の求めがあった場合は、正当な事由がなければ拒んではならないとしている。拒んだ場合の罰則はないが、応召義務が医師個人の職業倫理・規範として機能してきた。ただ、医師の働き方改革の議論が進められる中、時間外労働の短縮を検討する上で応召義務がネックになっているとの指摘が医療現場などから上がったという。

   

 そのため、医療状況の変化を踏まえた応召義務の解釈に関する厚生労働科学研究が2018年度に行われた。厚労省の新たな通知は、この研究の報告書の内容を基にして出されるもので、応召義務の考え方を改めて整理する方針だ。

 

 18日の医療部会で厚労省は、研究班の報告書を公表した。それによると、医師個人や医療界にとって応召義務が法的な効果以上に大きな意味を持ち、「医師の過重労働につながってきた側面がある」と指摘。その上で、地域の医療提供体制を確保しつつ、応召義務の規定によって医師個人に過剰な労働を強いることのないような整理を体系的に示す必要があるとしている。

   

 報告書ではまた、診療の拒否を考慮する際の最も重要な要素は患者への緊急対応が必要かどうか(病状の深刻度)だとし、診療の拒否が正当化される個別的なケースを整理している。具体的には、診療時間内・勤務時間内に救急患者などの緊急対応が必要な場合は、医療機関や医師の専門性・診察能力、設備状況などを総合的に考慮した上で、「事実上、診療が不可能といえる場合にのみ、診療しないことが正当化される」と強調。一方、診療時間外・勤務時間外に緊急対応が求められる場合は、医療の倫理上、応急的に必要な処置を取るべきとされるが、「原則、公法上・私法上の責任に問われることはないと考えられる」としている。

    

 診療時間内・勤務時間内に緊急対応が不要なケースでは、原則として患者の求めに応じて医療を提供する必要があると指摘。ただし、緊急対応の必要があるケースと比べて、「正当化される場合は緩やかに(広く)解釈される」としている。これに対して、診療時間外・勤務時間外なら、「即座に対応する必要はなく、診療しないことに問題はない」「時間内の診療依頼、他の診察可能な診療所・病院などの紹介等の対応をとることが望ましい」との解釈を示している。

    

 診療時間内・勤務時間内に患者から迷惑行為を受けた場合は、以前の診療行為などで生じた迷惑行為の態様に照らし、その患者との信頼関係がなくなっていれば、新たな診療を行わないことが正当化されると指摘。また、医療費の不払いのケースでは、以前に同様のことが行われたとしても、そのことだけの事由で診療を拒否することは正当化されないとしている。ただし、自由診療で支払い能力がない患者を診療しないことは正当化される。また、診療時間外・勤務時間外の場合は即座に対応する必要がなく、「診療しないことに問題はない」と考え方を示している。

 

 

出典:医療介護CBニュース

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