2019.04.23
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高血圧治療ガイドライン2019公表―高血圧基準の変更なし、成人の降圧目標は130/80mmHgに引下げ

メディカルサポネット 編集部からのコメント

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会による高血圧治療ガイドライン2019」が4月25日に発行されます。高血圧の医療が適正に行われるための標準治療指針とその根拠を与えるもので、(第1章)高血圧の疫学、(第2章)血圧測定と臨床評価、(第3章)治療の基本方針、(第4章)生活習慣の修正、(第5章)降圧治療、(第6章)臓器障害を合併する高血圧、(第7章)他疾患を合併する高血圧、(第8章)高齢者高血圧、(第9章)認知症と高血圧、(第10章)女性の高血圧、(第11章)小児の高血圧、(第12章)特殊条件下高血圧、(第13章)二次性高血圧、(第14章)高血圧管理の向上に向けた取組みと今後の展望、の全14章で構成されています。降圧目標など、変更点が発表されていますのでご確認ください。

 

日本高血圧学会は19日に記者会見を開き、高血圧治療ガイドライン(JSH)2019を発表した。高血圧の基準は変更しないものの、降圧目標を引き下げた。75歳未満の成人の降圧目標は130/80mmHgとなる。JSH2019は4月25日に発行される。GLの改定は14年以来5年ぶり5回目。

 

JSH2019では、高血圧の基準については従来の140/90mmHg以上とする一方、降圧目標は、75歳未満は130/80mmHg未満、75歳以上は140/90mmHg未満とし、75歳以上で降圧目標が異なる他疾患合併時には、忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すとした。

  

19日の会見で改訂内容について説明したJSH2019作成委員会の平和伸仁事務局長は、降圧目標を引き下げた理由について、「厳格治療と通常治療を比較すると、厳格な降圧により心血管イベントを抑制することができる」と述べ、エビデンスに基づいた変更であることを説明。また、「生活習慣の修正が治療の基本」と強調し、リスク層別化により低・中等リスクに分類された患者が降圧薬治療で140/90mmHg未満になった場合には、生活習慣の修正を強化して130/80mmHg未満を目指すとした。

  

一方で平和氏は、降圧目標の変更により、新たに450万人が降圧薬治療の対象になるとの試算を紹介。「収縮期血圧を10 mmHgあるいは拡張期血圧を5mmHg減らすことで、脳心血管イベントを20%減らすことができる」として、その効果を強調した。

 

同学会は今年10月にJSH2019のダイジェスト版、来年3月には実地医家を対象にした高血圧診療のガイドブックの発行を予定している。

 

■JSH2019の主な変更点

・75歳未満の降圧目標を130/80mmHg未満に変更

・75歳以上の降圧目標を140/90mmHg未満に変更

・75歳以上で降圧目標が異なる他疾患合併時に忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すよう変更

・冠動脈疾患の降圧目標を130/80mmHg未満に変更

・微量アルブミン尿、蛋白尿を合併しない糖尿病では、第一選択薬をRA系阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬に設定

・高齢者の運動に、転倒リスクを考慮した通常の速さでの歩行を推奨

・フレイル、要介護、エンドオブライフにある高齢者の降圧治療を記載

・高血圧管理の向上に向けた取組と今後の展望を記した第14章を追加

  

「我々の真剣度をわかってほしい。血圧に対するリテラシーを変えないといけない」と述べ、高血圧有病者4300万人のうち、治療により血圧が140/90mmHg未満にコントロールできている人が27%に過ぎない現在の状況に危機感を示す伊藤裕理事長(左)とJSH2019作成委員会の平和伸仁事務局長

 

出典:日本医事新報社

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