2020.04.30
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危機に向き合うためのリーダーシップ 
~新型コロナウイルス感染症と看護管理~

そこが知りたい看護管理 vol.8

看護管理者がどのような思いでスタッフをまとめ、組織を運営しているのか、管理職以外の看護師からはなかなか見えにくい面もあります。大きな責任を背負う一方で、やりがいも大きい看護管理者という仕事にどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
本コラムでは、看護管理者として複数の病院を経験し、現在は大学院博士課程で転職者教育の研究を進める森田夏代さんが、自身の経験と理論を踏まえ、皆さんの看護管理の「知りたかった」に応えます。
コラム第8回目は、新型コロナウイルス感染症と看護管理をテーマに、「危機に向き合うためのリーダーシップ」についてお届けします。経験したことのない事態に対して、看護管理者として何をすべきか、すぐに現場で活用できる内容です。

執筆・写真/森田 夏代
編集・構成/メディカルサポネット編集部


そこが知りたい看護管理 森田夏代さん メディカルサポネット マイナビ 

   

日本看護協会が発信した「看護のチカラ」

  

2020年の春は、新型コロナウイルス感染症により日本だけでなく世界中が、今までに経験したことのない状況と向き合っています。自然災害とは異なる出来事であり、私たち医療・看護に携わる者が表舞台に立たされる状況も多いようです。

 

皆さんの職場でも診療制限や入院患者の面会制限・学生の実習受け入れ中止や医療材料の不足など、大変な状況にあると思います。医療・看護を取り巻く「ヒト・モノ・カネ・時間・情報」のすべてが予測できない状況にあるように思います。

 

このような状況の中、4月3日に日本看護協会が「新型コロナウイルス感染症に関する記者会見」を行ったことをご存知でしょうか?感染者の現状を看護の立場から客観的に伝えるだけではなく、働いている私たち看護職の現状をも視聴者の皆様に伝え、更に規模の小さな医療機関やひとりで悩んでいる看護職に手を差しのべる形で、まさに「看護のチカラ」を発信した説得力のある記者会見でした。同時に看護協会主導で、ホームページやメディアを活用し、様々な情報発信に取り組み始めたのは素晴らしいことです。

 

この記者会見を視聴して私は、生物学的・心理学的社会学的感染症という言葉を用いて、看護の現状を伝えた協会長のリーダーシップに感銘を受けました。

  

      

 医療現場で奮闘する皆さまへ、心からの感謝を込めて 

  

◆迷えるスタッフを救うのは“方向性を示す”こと

 

今回の新型コロナ感染症の対応について、皆さんの職場で看護部(看護部長・看護師長等)のリーダーシップについて頭をよぎった方はいませんか?もしくは「もっと、的確な指示をしてよ、院内通達はないの?」とモヤモヤする気持ちになったり、「子供が休校で家にひとりになったら、仕事は休めるの?誰に相談したらよいの?」と思われた方はいませんか?

 

あるいは施設によっては「マスクは1日ひとり1枚で、勤務終了時に残数を数えて報告する」としているという話を耳にします。これも、医療材料が不足するかもしれない・補充が困難という情報収集と現状把握に対するリーダーシップの為す行動の現れではないでしょうか?

 

その他に例えば、看護部長が経営に関わること(受診者や勤務者の感染リスク・診療に関わる経費の問題・勤務形態や地域住民への周知教育等)について、情報収集と把握したことを事務職員や院長と共に検討判断し、結論となる方向性を看護師長に示します。

 

・明日から感染症疑いのある受診者はこのエリアで診療する

・家族の都合で休みを希望する職員の処遇についてはこのようにする

 

など、「こうしていく」という方針を示します。そうすることで、看護師長は事務職や医師と駐車エリアに感染症ブースを作り、物品は何をそろえるか具体的にスタッフに指示できます。また、自部署の看護師の家族状況などの情報から勤務調整を行い、どれくらい休めば出勤可能か、夜勤の人増を調整する等に動くことができます。これらの動きは、看護部長や師長が同じ問題に対して、それぞれの立場でリーダーシップを発揮していることと言えます。もちろん、一般職の皆さんは日々の業務の中でリーダーシップを発揮しています。

 

こんな時だからこそ、休息のひとときには花を添えて、いつもより贅沢な時間を過ごすよう意識したいものです

     

◆緊急時、看護管理者に求められる”スピード感”と”力強いリーダーシップ”

   

学問的にリーダーシップについては様々な研究が行われています。看護界では、コンセプト理論(状況適合理論)と呼ばれるSL理論や変革型リーダーシップ(サーバントリーダーシップ)が用いられていることが多く、近年ではシェアドリーダーシップについて耳にすることも多くなりました。

 

いずれのリーダーシップであっても、リーダーに必要な要素として以下の4つがあります。

 

①情報収集能力

②状況把握能力

③判断力

④高いコミュニケーション能力

 

刻々と変化する状況の中では、この4つの要素をスピーディーに活用することが重要です。特に、緊急時には、指示命令という形での強いトップダウンが必要です。みんなの意見を聞いてじっくり考えて方法を見出して、相談しようというボトムアップでは時間が不足し、状況が悪化する可能性があります。指標となる判断はトップダウンで行い、現場では、いつまでに(短時間で、1時間で話し合って結論を出そう)方法を決める、3日行動して無理だったら方法を修正しようというスピード感が必要となります。

 

情報が日々更新され混乱する中では、トップリーダーの力強いリーダーシップで方向性を示し、その方向に向かって現実可能な対策案を決め、行動してみるということが重要ではないでしょうか?リーダーシップは、日々の看護の中で看護過程を展開することと同じです。対象がひとりから施設全体や地域に広がっただけと考えていただけると良いのではないでしょうか。

 

誰もが経験したことのない状況であり、変化の著しい毎日の中で、私たち看護師にできることは何かを看護管理職は確認し、伝え行動していきたいと思います。対象となる患者・ご家族・利用者だけでなく、ともに働く医療者とその家族・自分自身の安全が守られること、「看護のチカラ」を信じて応援します。

  

    《クリニックや中小規模病院で、マスクの補充や人員不足にお困りの方へ》

・マスクを補充配布していただける場合がありますので、都道府県看護協会に直接お問合せください

・人員不足については都道府県ナースバンクにご相談ください

  

プロフィール

森田 夏代(看護師)
大学病院にて、主にクリティカル領域で一般職から看護管理者(病棟師長・教育専任師長)として約20年間勤務した後、一般企業や医療法人総合病院で副看護部長(看護部長代行)として勤務する。その後、大学院に進学し、看護管理の研究に取り組む傍ら、認定看護師教育センター・大学看護学科の教員として基礎看護教育と研究に従事している。看護が好きな看護管理者の育成を目指し、「キャリア中期看護師の転職支援と組織定着」を研究テーマに博士論文を進めている。

       

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