2020.02.10
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業務効率化の成功事例が満載!
「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」

注目トピックス

2020年1月15日、公益社団法人 日本看護協会主催のもと、「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」の表彰式と事例報告会が東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催されました。慢性的な人手不足の中でも、より良い医療サービスを提供できるようにするためのヒントがたくさん詰まっていた本イベント。500人を超え、満席となった聴衆の数からも関心の高さがわかります。ここでは当日の様子をレポートするとともに、さまざまな手法で効率化を実現した事例をピックアップしてご紹介します。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
写真/山本 未紗子(株式会社BrightEN photo)
構成・編集・監修/高山 真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」 こうして実現!業務効率化に成功した先進事例とは?集合写真

全国に広めたい先進的な取り組みを表彰

このイベントの最大の目的は、看護業務の効率化に関する優れた取り組みを広く周知し、全国の医療機関における労働生産性を向上させること。厚生労働省から委託を受けた公益社団法人日本看護協会が実施する「看護業務効率化先進事例収集・周知事業」の一環として開催されました。看護業務における「ムリ」や「ムダ」をなくすことで、働き方改革、医療サービスの改善、医療安全といった幅広い効果が期待できると考えられています。

 

当日のプログラムは、開会式、表彰式、事例報告会の3部構成。第1部の開会式では、日本看護協会会長の福井トシ子さん、厚生労働副大臣の橋本岳さんに加えて、選考委員会の代表者からもあいさつがありました。

 

日本看護協会会長福井トシ子さんは「マンパワーの確保だけでなく、看護業務の効率化も欠かせません。そのためには、日々の『現場における知恵の集積』こそ大切になってくるはずです」と話した

日本看護協会会長の福井トシ子さんは、「マンパワーの確保だけでなく、看護業務の効率化も欠かせません。

そのためには、日々の『現場における知恵の集積』こそ大切になってくるはずです」と話した。

 

「医療需要がより高まっていくことを考えても、チーム医療のキーパーソンとなる看護師の業務について、他の産業のように効率化を図ることは欠かせません」と話した、厚生労働副大臣の橋本岳さん

「医療需要がより高まっていくことを考えても、チーム医療のキーパーソンとなる看護師の業務について、

他の産業のように効率化を図ることは欠かせません」と話した、厚生労働副大臣の橋本岳さん。

 

第2部の表彰式では、選考委員長を務めた九州大学名誉教授の尾形裕也さんが壇上に立ち、「わずか1か月という短い募集期間ながら、全国から57件の応募がありました。普及のしやすさなども考慮の上、11人の委員で厳正に審査しましたが、いずれの取り組みも非常に高いレベルであったことが印象的です」と総評しました。最優秀賞の一般社団法人熊本市医師会熊本地域医療センターをはじめとして、各賞を受賞した計10施設が表彰され、会場は大きな拍手に包まれました。

 

「ユニフォーム2色制」の導入などで残業を削減し、最優秀賞を受賞した熊本地域医療センター。看護部長の大平久美さんが感動の涙を流す一幕も。

「ユニフォーム2色制」の導入などで残業時間を削減し最優秀賞を受賞した熊本地域医療センター。

看護部長の大平久美さんが感動の涙を流す一幕も。

 

薬剤師との協働で実現した病棟薬剤管理業務のタスクシフティング

第3部の事例報告会では、最優秀賞(1件)・優秀賞(4件)となった施設の代表者が、それぞれの取り組みについてプレゼンテーションを行いました。そのうちの一つが「タスクシフト・多職種連携部門」で優秀賞を受賞した社会医療法人石川記念会HITO(ヒト)病院。病棟薬剤管理業務について、病棟看護師から病棟薬剤師へのタスクシフトを実現した好例です。看護部長の細川克美さんが取り組みをの詳細を発表しました。

 

「患者さんの退院までを見据えた薬剤管理を実現できることが増え、病棟薬剤師も看護師もモチベーションが上がっています」と話す、看護部長の細川克美さん。

「患者さんの退院までを見据えた薬剤管理を実現できることが増え、病棟薬剤師も看護師もモチベーションが上がっています」と話した 

 

それまでHITO病院では、主に看護師が病棟薬剤管理業務を担っていましたが、それに時間を取られて始業前の作業が発生することもありました。すると、本来の看護業務への着手が遅れがちになる上、薬剤管理関係のインシデントも起こりやすくなってしまいます。そこで、看護部長と薬剤部長が直接意見交換し、解決策を探ることに。その結果、それぞれの専門性を発揮できるよう、以下のようなルールを明確にしました。

 

 ■病棟薬剤師:配薬カートのセッティング、追加処方薬や持参薬などの確認・セッティング、

        病棟常備薬や救急カートなどの点検(1日1回)

 ■病棟看護師:患者さんへの配薬、病棟薬剤師への追加処方薬などの連絡

   

急性期病棟における取り組みの前後を比較してみると大きな変化があったことがわかります。

取り組み前 取り組み後
看護師1人当たりの薬剤管理業務時間:日勤 63時間 19時間
看護師1人当たりの薬剤管理業務時間:夜勤 129時間 21時間
インシデントの報告件数:薬剤管理関連 8件 0件
インシデントの報告件数:配薬関連 5件 2件

 

薬剤師の関与により医療安全管理のレベルが向上し、看護師がベッドサイドケアにより多くの時間を活用することが可能になりました。今回の受賞を機にさらなるチーム医療の充実を目指したいと述べ、今後の期待を込めました。

 

事例報告会後の交流会では、多くの看護管理者が足を止め、細川看護部長に質問を投げかけていた。「薬剤部長も同じ問題意識を持っていたことも成功の要因となった」という言葉が印象的だった。

事例報告会後の交流会では、多くの看護管理者が足を止め、細川看護部長と活発な意見交換を行っていた。

「薬剤部長も同じ問題意識を持っていたことも成功の要因でした」という言葉が印象的だった。

看護クラーク科立ち上げにより実現した「看護業務注力強化」と「残業時間削減」

また、「その他の工夫部門」で優秀賞を受賞した医療法人社団協友会メディカルトピア草加病院では、看護師とクラークの連携に焦点を合わせました。従来は部署ごとに看護クラークを設置し、縦割りで業務に当たっていたものの、効率の悪さが課題となっていました。そこで「看護クラーク科」を立ち上げ、病院全体で窓口を一本化することで、リソースの有効活用につながりました。

 

月1回のクラーク部会を定例化し、看護部から委譲を受けられる業務を洗い出すとともに、1人のクラークが複数の部署を担当できるよう研修などを重ね、およそ3年で現在の体制が完成したそうです。現場からの要請でクラークが常駐するようになった手術看護科では、看護師の平均残業時間が16時間から9時間まで削減されました。一方、手術件数は前年度比で100件以上増加しており、看護師が本来業務に注力できていることが分かります。業務委譲に伴い、看護クラーク科では教育・研修体制を強化し、委譲後も「質を下げないこと」、「安全性を損ねないこと」が担保されたことも大きな特徴といえます。

 

看護クラーク科で主任を務める深代彩さんは、「クラーク同士が横のつながりを強化することで、看護師のニーズにできるだけ対応していきたいです」と話した。

看護クラーク科で主任を務める深代彩さんは、「クラーク同士が横のつながりを強化することで、

看護師のニーズにできるだけ対応していきたいです」と話した。

 

クラークに視点を当てた発表は、交流集会でも多くの人を集めた

クラークに視点を当てた発表は、交流集会でも多くの人を集めた

 

ICTの活用で可能になった遠く離れた専門職との連携

奨励賞(3件)や特別賞(2件)を受賞してパネル発表された取り組みの中にも、興味深いものが多数見受けられました。その1つが、医療法人恵尚会佐呂間町立診療所クリニックさろまの「へき地におけるICTを活用した多職種連携」(奨励賞)。オホーツク海を臨む人口5200人の町で、札幌市などの都心部から離れていることもあり、医療従事者の人材不足が深刻だというクリニックさろま。町内には理学療法士が不在で、高齢化によってニーズが高まるリハビリテーションをなかなか充実させることができませんでした。

 

ICTの普及は、へき地・人材不足等の課題解決につながる。「理学療法士と協働でリハビリを進めることで、ケアへの自信にもつながった」と話した村井さん。

ICTの普及は、へき地・人材不足等の課題解決につながる。

「理学療法士と協働でリハビリを進めることで、ケアへの自信にもつながった」と話した村井さん。

 

そこで、札幌の理学療法士と連携するため、ICTを積極的に活用。毎月1回、インターネットを介したビデオ通話会議を行うなどして患者さんの状態を多職種で評価し、個別性のある計画や目標を作ることで、より的確なリハビリテーションを実施できるようになりました。また、この取り組みを始めてから、平均年齢89歳にのぼる入院患者さんの退院後のセルフケア獲得100%を達成しました。さらには、日ごろからビデオ通話で顔を突き合わせて会議をしているため、理学療法士がクリニックを訪問したときのコミュニケーションもスムーズに。看護師からは「理学療法士が“身近”にいてくれることで、関節拘縮のケアなどにも自信が持てるようになった」といった声が挙がっているとのことです。

 

看護師の村井真由美さんは、「今後は、遠隔でのカンファレンスや指導により力を入れていきたい。必要なときだけ連絡するのではなく、『つながりっぱなし』になるのが理想だと感じています」と話した。

看護師の村井真由美さんは、「今後は、遠隔でのカンファレンスや指導により力を入れていきたいですね。

必要なときだけ連絡するのではなく、『つながりっぱなし』になるのが理想だと感じています」と話した。

 

今回のイベントで表彰された事例の多くは、300床以下の医療機関で実践されたもの。看護業務効率化に向けた取り組みは、大規模な医療機関だけにとどまらず、中小規模の医療機関にも広く普及しつつあるといえそうです。

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