vol.5 ハラスメントをなくして
看護職員が働きやすい職場をつくるには?

5分で読めるポイント解説 看護師労働実態調査

職場における「ハラスメント」は、近年深刻な社会問題となっています。看護の現場も例外ではなく、「看護師白書」にはさまざまなハラスメントを体験した看護師の声が多数寄せられました。

ハラスメント防止のための政策は、段階的に見直し・強化されており、2020年6月からは、これまで法整備が図られていなかったパワーハラスメントに対して、防止措置を講じることが事業主の義務となりました(中小企業は2022年4月から)。
ハラスメントのない職場環境を実現するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
 
マイナビが独自に看護師の労働実態を調査し、結果をまとめた「看護師白書2019年度版」のデータをもとに、今回の法改正で強化されたハラスメント防止対策を解説します。
 
編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

看護職員のハラスメントの経験

下記は「看護師白書2019年度版」における、職場環境に関する調査結果です。

現在を含むこれまでの職場での、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)など、ハラスメントの状況について尋ねました。

 

 
「受けたことがある」54.9%「他の職員が受けているのを見たことがある」18.4%を合計した73.3%もの方が、職場のハラスメントを経験していることが示されています。
 
 

  

誰によるハラスメントかを尋ねたところ、「上司」が69.5%と突出して多く、次いで「先輩」43.0%、「医師」32.4%と続き、上位者が多く挙げられています。「患者・入居者・利用者」26.4%と、「同僚」16.6%も少なくありません。

そのうち472人から、差し支えない範囲でハラスメントの内容についても回答をいただきました。看護師から届いたリアルな声を、一部抜粋して紹介します。

■まだ異動して間もない頃に、仕事が分からず頭を叩かれた。
■能力以下の仕事をさせられた。他のスタッフがいるところで怒鳴られたり、陰口を言われた。
■半強制的に病棟会や歓迎会や飲み会など、病院内でのイベントに参加させられる。
■タイムカードを押してからの残業を強要された。
■仕事のミスで師長に叱責された際、自分の両親の教育や人格について否定された。同僚のいる前で数時間に渡り見せしめのように叱責され続けた。
■就職して初めての面接にて、恋人の有無を聞かれた。とてもプライベートなことであり、答える義務もないと感じた。
■患者様に触られそうになったり、触らされそうになったりした。
■妊娠中であるのにも関わらず、体に無理が来るような仕事をしなければならなかった。子供の病気などで休みをもらう際、とても冷たい態度をとられる。

  

パワハラが突出して多く、次いでセクハラ、マタハラを訴える内容が寄せられています。

 

職場のいじめ・嫌がらせに関する都道府県労働局への相談は、全ての相談の中で最も多く、2019年度は8万7千件を超えています。職場におけるパワハラ防止対策の法整備は喫緊の課題となっていましたが、2020年6月より労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメント防止措置を講じることが事業主の義務となりました(通称パワハラ防止法)。

  

職場におけるセクハラ、マタハラや育児休業等に関するハラスメントは、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、すでに防止対策が義務付けられていましたが、こちらも併せて2020年6月より体制が強化されています。

 

取引先や顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)については、今回の法制化は見送られましたが、相談体制の整備や、被害者への適切な配慮等を行うことが望ましい旨が指針に記載されました。

 

本コラムでは、新設されたパワハラ防止法について詳しく解説していきます。

 

   

パワハラ防止法|企業・法人が取り組むべき措置とは?

パワハラ防止法とは、職場におけるパワーハラスメントを防止するための取り組みを事業主に義務付けるものです。相談窓口の設置や再発防止措置を求めるもので、勧告に従わない場合は企業名を公表されることもあります。大企業は2020年6月1日施行中小企業は努力義務期間を経て、2022年4月1日から施行されます。

 

パワハラの定義とは?

厚生労働省は次のような指針を示しています。

 

優越的な関係を背景とした言動
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
労働者の就業環境が害されるもの(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)


以上の3つの要素をすべて満たすものが、職場におけるパワハラに該当します。
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。

 

「優越的な関係」を背景とした言動とは?

パワハラを受けている労働者が、行為者に対して抵抗や拒絶することができない関係性を指します。

・職務上の地位が上位の者による言動

・必要な知識や経験を有していて、業務上の協力が不可欠な同僚または部下による言動

・同僚または部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が困難なもの など

上位者だけでなく、同僚や部下からの行為も該当します。

 

どこまでが職場?

労働者が通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。

例)・出張先  ・業務で使用する車中  ・取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)等

 

労働者とは?

正規雇用職員のみならず、パートタイム職員、契約職員、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用職員を含む、事業主が雇用するすべての職員をいいます。

 

企業・法人が取り組むべき措置

事業主は以下の措置を必ず講じなければなりません。

  

◆事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

・職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

・パワハラの行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること。

 

◆相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。

・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること。

  

◆職場におけるパワハラへの事後の迅速かつ適切な対応

・事後報告を迅速かつ正確に確認すること。

・速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

・事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと。

・再発防止に向けた措置を講ずること。

 

◆そのほか併せて講ずべき措置

・相談者・行為者等のプライバシー(注1)を保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知すること。

 (注1) 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む

・相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

 

事業主に相談等をした労働者に対する不利益取り扱いの禁止

2020年6月1日付で、労働者が職場におけるパワハラについての相談を行ったことや、雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止する法律が施行されました。中小企業を含む、すべての規模の事業主の義務となります。今回の改正で、セクハラ、マタハラ防止対策にも「事業主に相談等をした労働者に対する不利益取り扱いの禁止」の項が加えられ、強化のポイントとなっています。 

   

  

ハラスメントのない職場づくりを目指して

ハラスメントは職員の人格を不当に傷つけるだけでなく、企業・法人にとっても貴重な人材の損失や、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。

ハラスメントのない職場環境を実現させるためには、どのような施策が必要でしょうか。

厚生労働省が発信している<望ましい取り組み>と、「看護師白書」に寄せられた好事例から、効果が期待できる施策例を紹介していきます。

 

<望ましい取り組み>

各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備

■相談窓口で受け付けることのできる相談として、パワハラのみならず、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等も明示する。

 

▲職場におけるパワハラ、セクハラおよび妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、その他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、あらゆるハラスメントの相談について一元的に応じることのできる体制を整備することが大切です。

職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するための取り組み 

■日常的なコミュニケーションを取るよう努めることや、定期的に面談やミーティングを行うことにより、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図る。

■感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修、マネジメントや指導についての研修等の実施や資料の配布等により、労働者が感情をコントロールする能力やコミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図る。

 

▲職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化のための研修や、適正な業務目標の設定等、職場環境の改善のための取り組みを行いましょう。

 

<看護師から寄せられた好事例>

■看護部長との面談があったので、部署の人間関係を相談できる機会にもなった。
■直接トップに言えないことを伝えられるように、間に相談できるポジションの職員がいた。
■トップダウンではなくミーティングで話し合ってからルール決めをしていた。

■横繋がりの関係を重視する。自分の先入観や価値観、経験などで物事を判断しない、責めない、決めつけない、柔軟性のある対応。アサーティブ・コミュニケーションの研修も良かった。
■フィッシュ哲学という取り組みで、職場が明るくなっていった。

 

▲職場のコミュニケーションにおける好事例です。定期的に面談を行う、上に意見をボトムアップできるような体制を整えるなど、相談窓口の数や密度に工夫を凝らしているようです。また、アサーティブ・コミュニケーション(※1)やフィッシュ哲学(※2)を活用している企業・法人も多くいらっしゃいました。

 

※1 認知行動療法をもとに作られたコミュニケーションスキルの1つで、相手を尊重しながら自己主張、自己表現を行うもの。

※2 アメリカ西海岸発祥のマネジメント手法。「遊ぶ」「楽しませる」「注意を向ける」「態度の選ぶ」という4つのマインドを持って仕事に取り組み、組織を活性化させる目的で活用される。

まとめ

パワーハラスメントの発生の原因や背景には、人材不足による業務過多や悪しき慣習、職員同士のコミュニケーションの希薄化など、職場環境の問題があると考えられます。現状を把握して、これらを幅広く解消していくこと。また、ハラスメントが発生してしまった際にどう対処し、どう再発防止に努めていくかが非常に大切です。

 

 

↓全調査結果は、こちらよりダウンロードできます(会員登録無料)↓

 

BACK

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

TOP