
プロフィール
森田 夏代(看護師)
大学病院にて、主にクリティカル領域で一般職から看護管理者(病棟師長・教育専任師長)として約20年間勤務した後、一般企業や医療法人総合病院で副看護部長(看護部長代行)として勤務する。その後、大学院に進学し、看護管理の研究に取り組む傍ら、認定看護師教育センター・大学看護学科の教員として基礎看護教育と研究に従事している。看護が好きな看護管理者の育成を目指し、「キャリア中期看護師の転職支援と組織定着」を研究テーマに博士論文を進めている。
看護管理者がどのような思いでスタッフをまとめ、組織を運営しているのか、管理職以外の看護師からはなかなか見えにくい面もあります。大きな責任を背負う一方で、やりがいも大きい看護管理者という仕事にどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
本コラムでは、看護管理者として複数の病院を経験し、現在は大学院博士課程で転職者教育の研究を進める森田夏代さんに、自身の経験を踏まえ、皆さんの看護管理の「知りたかった」に応えます。
コラム第2回目は、自施設で課題・問題となりがちなことをポジティブにとらえることで、解決のヒントがみつけられる、そんなアドバイスをくださっています。
執筆・写真/森田 夏代
編集・構成/メディカルサポネット編集部
10月に入り今年度も下半期に突入しましたが、なかなか秋の気配を感じられないまま過ごしています。皆さんの勤務する施設では、10月は複数人の中途採用者の入職がありませんか。
私が以前勤務していた中小規模病院(医療法人総合病院)では当初、毎月のように中途採用者(経験者採用)の入職がありました。今月は1名、翌月は3名で翌々月は2名などで、毎月の月頭は入職者オリエンテーションを行う日となり、何とか入職者をまとめられないかと頭を悩ませたことがありました。(この点については、改めてコラムのテーマにしたいと思います)
私は看護管理の研究をしていますので、中小規模病院の看護部長さんや採用担当の方とお話しさせて頂く機会があるのですが、「離職が多い、職員の経験年数が高い・ワークライフバランスと言って、日勤のみの勤務や時短勤務希望者が多い等など」中途採用(経験者採用)に関する悩みや相談を伺います。
ご相談の内容は、一見すると中小規模病院のデメリットに聞こえますが、視点を変えると中小規模病院のメリットになるのではないかと私は考え、管理者の方に以下のようにお伝えしています。
①離職が多い=経験ある看護師の流動性があることで、看護が停滞しないことや、新しいことや人を受け入れやすい環境であるから転職者が集まりやすい
②経験年数が高い=臨床看護経験が豊富であったり、人生経験(育児や介護経験など)が豊富であったりすることで、若い看護師が支援を受けやすい(アドバイスを受けやすい)・どのような看護(いかなる場面や状況になっても)でも対応できる基盤がある
③日勤専従(夜勤をしない)や時短勤務希望者が多い=多様な勤務体制を備えた病院である。誰もが一律の働き方で看護を提供しなくてよい職場である
上記のようなメリットとは考えられないでしょうか?
視点を変えることで、中途採用者の雇用は病院のメリットになると思います。
趣味でお菓子教室に通い、クッキーなどを作成するひとときでエネルギーチャージしています
私は以前、看護師が700人以上勤務する大学病院に勤務していたことがあります。また、170人程度の中規模病院にも勤務していたことがあります。仮に年間で15人の退職者が出るとしたら離職率は、2%と8.8%となります。母集団が小さければ1人の重みが高くなる(ひとりの離職が離職率を上げる現象)ことにつながります。
伊東美奈子氏らの調査でも新卒看護師の入職1年未満での早期離職は7.9%であるのに対して、中途採用者の1年未満での離職率は17.9%と高い傾向にあります1)。
もちろん、中小規模病院のように母集団が小さいほど、一人の退職者の影響は大きくなります。また、1名の採用にかける準備や時間は必要となりますが、経験豊かな看護師が転職したい(働きたい)と希望するということは、それだけ魅力があるということではないでしょうか。離職率に振り回されず、なぜ、退職という選択をしたのかを検討することが大切です。また、長く勤務できる理由も併せて考えてみることが大切ではないでしょうか。
中途採用(経験者採用)者の入職1年未満での早期退職理由は、以下の4点に分類することができます。
① 勤務条件
② 人間関係
③ 組織が求める看護
④ 自分の経験を活かせる環境
皆さんの病院では離職理由は、4つのうちのどれが多いでしょうか?一番、多い理由に着眼して改善策を講じれば、退職を選択せずに勤務が継続できるかもしれません。
近年、看護師の働き方について時短勤務などワークライフバランスを考えての検討がされています。
ワークライフバランスとは仕事と生活の両立を意味しますが、個人のワークライフバランスを整えることで、時短勤務などをしている人のためのもではありません。通常勤務をしている看護師に負担がかからないように、働いているすべての看護師のワークライフバランスを大切にしなければなりません。
真のワークライフバランスは、誰かの我慢の上で成り立つものではないことを忘れないようにしたいものです。
1)伊東美奈子他:病院における既卒看護師の採用と早期離職に関する全国調査―新卒採用者との比較からの考察―(2017)
プリザーブドフラワーも趣味で、ハロウィン仕様のアレンジメントを作りました。Happy Halloween!
プロフィール
森田 夏代(看護師)
大学病院にて、主にクリティカル領域で一般職から看護管理者(病棟師長・教育専任師長)として約20年間勤務した後、一般企業や医療法人総合病院で副看護部長(看護部長代行)として勤務する。その後、大学院に進学し、看護管理の研究に取り組む傍ら、認定看護師教育センター・大学看護学科の教員として基礎看護教育と研究に従事している。看護が好きな看護管理者の育成を目指し、「キャリア中期看護師の転職支援と組織定着」を研究テーマに博士論文を進めている。