2019.08.30
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元看護管理者 森田夏代さんインタビュー

そこが知りたい看護管理 <インタビュー編>

看護管理者がどのような思いでスタッフをまとめ、組織を運営しているのか、管理職以外の看護師からはなかなか見えにくい面もあります。大きな責任を背負う一方で、やりがいも大きい看護管理者という仕事を、もっと知ってみませんか? 
ここでは、看護管理者として複数の病院を経験し、現在は大学院博士課程で転職者教育の研究を進める森田夏代さんに、自身の経験を踏まえた看護管理職の魅力についてお話を伺います。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

そこが知りたい看護管理 ~元看護管理者の実践に学ぶ~ <インタビュー編>

 

森田 夏代(看護師)認定看護師教育センター・大学看護学科の教員として基礎看護教育と研究に従事している。

 

◆プロフィール◆

森田 夏代(看護師)

大学病院にて、主にクリティカル領域で一般職から看護管理者(病棟師長・教育専任師長)として約20年間勤務した後、一般企業や医療法人総合病院で副看護部長(看護部長代行)として勤務する。その後、大学院に進学し、看護管理の研究に取り組む傍ら、認定看護師教育センター・大学看護学科の教員として基礎看護教育と研究に従事している。看護が好きな看護管理者の育成を目指し、「キャリア中期看護師の転職支援と組織定着」を研究テーマに博士論文を進めている。

 

■スタッフを通して患者さんを看るおもしろさ 

――森田さんが看護管理者になるまでの経緯を教えてください。

 

新卒で大学病院に入職して、ICUやCCU、心臓血管外科などで7年ほど現場経験を積みましたが、ふと「やり切ったような気持ち」になり、今後のキャリアをどうしようかと悩むようになりました。そのタイミングで、当時の上司に「看護学校の教員を養成する研修に興味はない?」と声をかけていただいたのです。職場からの出向というかたちで1年間、腰を据えて看護やその教育について考えられることに魅力を感じ、思い切って挑戦することにしました。そして、研修を終えて元の職場へ戻るとき、救命救急センターの主任を拝命しました。

 

救命救急センターには60人ほどの看護師がおり、私を含めて2人の主任で現場を統括していました。勤務表の作成や管理は師長の仕事でしたが、管理者教育の一環として「今月は森田さんが作ってみて」ということもありました。また、学生の看護実習の受け入れ調整や、毎年120人ほど入職する新人看護師の集合研修なども担当していました。

 

その後、主任として心臓血管外科や循環器内科病棟を経験したのち、病棟管理主任という役職に就き、管理業務をメインとする働き方に移行。さらに救急救命センターで師長となり、看護管理者としてはトータルで18年ほど経験を積んできました。

 

――管理業務ならではのやりがいとはどんなものでしょうか。

 

よく「管理者になると看護ができない」と言う人がいますが、それは大きな間違いです。スタッフが担当患者さんを看るのに対して、管理者は自分が束ねるスタッフを通して患者さんを看ています。師長クラスになれば「自分はこの病棟でこんな看護を提供したい」という思いを実現することが仕事になります。こうした大きな視座で看護を展開することにも、確かにおもしろさがあると私は思っています。

 

管理者になったとしても、患者さんのベッドサイドを訪れる機会はたくさんあります。特に中小規模の病院の場合は、部長や副部長クラスになっても現場に関わるケースは多いはずです。私の場合は、スタッフが知らない情報を得たら共有したり、急変があれば積極的に介入したりしていました。そうすることで、スタッフから「現場のことも分かってくれている」という信頼を得やすくなったと感じています。

 

また、管理者の業務としてスタッフの教育は大変重要です。私が心がけていたのは「やらされ感」のある研修をしないこと。空いている個室を使って急変についてのシミュレーション練習をするなど、「明日から現場で役立つ」ことを実践的に教えるようにしていました。上から押し付けるのではなく、スタッフが自ら考えて行動できるようなプログラム内容を考えることは楽しかったですね。

 
森田 夏代(看護師)画像1

  

■民間病院で看護部の改革に挑む

――その後、他の大学病院などを経て、200床クラスの民間病院へ転職したそうですね。

  

管理者としての経験が長くなるうちに、看護部全体を良くするためにはこれから師長になっていく主任クラスの教育が欠かせないということに気付きました。そこで、看護部で多くの課題を抱えていた民間病院に副看護部長(看護部長代行)として入職し、改革にチャレンジしてみようと考えたのです。

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