2018.11.17
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臨床写真を収集するコツとプライバシーに関する注意点は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

スマホのカメラ機能が向上しましたが、より良い写真を撮るためにはレンズの大きなカメラ専用機がオススメです。大きなレンズは大量の光を集められるので仕上がりが変わってきます。また、三脚を使えない状況の時は、脇をしっかりしめて撮影するとブレがなくなります。なお、カメラによっては、自動でネットに接続してオンラインストレージに保存する機能が備わっています。必ず設定を確認し、個人情報の流出に気を付けてください。

 

 日本臨床写真学会が誕生するなど,臨床写真(身体所見・グラム染色・放射線画像など)を撮影・投稿することが近年注目を集めています。臨床写真を収集するコツを教えて下さい。また,収集する上で患者さんのプライバシーに配慮しないといけないと思いますが,どういったことに注意すれば良いでしょうか?
天理よろづ相談所病院・佐田竜一先生にご回答をお願い致します。

【質問者】

忽那賢志 国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室医長/国際診療部副部長(兼任)


【回答】

【カメラを入手,構図を決め,明るさを保ち,ぶれないように撮影。個人情報に十分配慮する】

 

臨床写真(clinical picture)は,臨床推論におけるDual process theory1)において一発診断(system 1)にとても有用なツールであり,多くのpeer review journalがその重要性を理解し,投稿を受け付けている。日本からも多くの素晴らしいclinical pictureがacceptされており2),2018年9月2日には第1回日本臨床写真学会学術集会が開催された3)。今後日本ではさらに盛んにclinical pictureが撮影されるだろう。

clinical pictureを撮る際のコツは,下記の4点である。

(1)カメラを手に入れる

可能であればスマートフォンよりも自前のカメラがあるとよい。一眼レフが最も性能が高いが,実臨床では様々な場面で重要な所見が発生しうるため,持ち運びが便利であるかどうかも重要である。私は白衣のポケットに収納可能なデジタルカメラを持ち運んでいる。

(2)構図を決める

撮像したい部位をできるだけ大きく撮像することは基本中の基本である。また,周囲にプライバシー/日時が同定できるものや,周辺の人物を排除した環境で撮像すべきである。

(3)周りの明るさを保つ

写真の美しさは「明るさ」で決まると言っても過言ではない。暗い場所では大事な所見があいまいになりがちなので,周囲の明るさを維持すべきである。また,レンズにリングライトが取り付けられるカメラだと,より明るい写真を撮像できる。

  

(4)ぶれない

暗い環境だとシャッタースピードが遅くなることがあり,その際にぶれが生じるとせっかくの素晴らしい構図も台なしになる。①カメラを持つ時に両脇を占めて腕を固定し,②シャッターを押す前後で自分の呼吸を止め,③シャッター時に最もぶれやすいため,柔らかくプッシュする,この3点を意識する。

最後に,スマートフォンでclinical pictureを撮像する場合,個人情報の取り扱いについてはかなり慎重になっておく方がよい。オーストラリアでは,個人情報が漏出することによるプライバシー侵害に対して個人に最大34万豪ドル(2018年10月7日現在で1豪ドル=80.22円),施設に最大170万豪ドル程度の罰金が発生する事象があり4),今後日本でも同様の問題が発生することは十分予想される。そのため,下記3点は強く意識しておくべきである。

①どのカメラで撮像する際にも,当然ながら患者に同意を取得し,可能なら同意書を取得する(少なくとも同意獲得をカルテに記載しておく)。
②インターネット接続可能なスマートフォンではできるだけ撮像しない。
③clinical pictureをDropbox®などのストレージデバイスに保管するとハッキングにより漏洩することもありえるため,できるだけ保管しない。

これらのことを意識して,沢山のclinical pictureを撮影して頂きたい。

【文献】

1) Croskerry P:Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2009;14(Suppl 1):27-35.

2) Kutsuna S, et al: N Engl J Med.2013; 369(6):558.

3) 日本臨床写真学会[https://www.facebook.com/pages/category/Science-Website/日本臨床写真学会-1936710033047848/]

4) Kirk M, et al:J Mob Technol Med.2014;3(2);40-5.

【回答者】

佐田竜一 天理よろづ相談所病院総合診療教育部

 

執筆:忽那賢志 (国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室医長/国際診療部副部長(兼任))

執筆:佐田竜一 (天理よろづ相談所病院総合診療教育部)

出典:Web医事新報

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