2022.04.27
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【新連載】「“超”地域密着」調剤薬局の経営戦略 ~地域と共に生き続ける~

vol.1 地域密着薬局の取り組みが評価された令和4年度調剤報酬改定

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略  ~地域と共に生き続ける~

 

編集部より

「物」から「人」へ。2025年の実現を目指す地域包括ケアシステムの構築に向けて、薬局のあり方は変革期の真っ只中です。厳しい薬局経営が続く中、地域に根差す調剤薬局の強みを活かせる時代がようやく来たと考えている薬局経営者・管理者の方たちも多いことと思います。しかし、街の小さな薬局が地域と共に生きるとは具体的にどういうことなのでしょうか?本コラムでは、東京都練馬区江古田で地域密着調剤薬局経営をされている、たむら薬局の田村憲胤(のりつぐ)さんに、採用・税務・地域連携など薬局経営に関わる実践知についてお話しいただきます。

第1回のテーマは4月に改定された令和4年度調剤報酬改定です。皆さんは今回の改定をどうとらえていますか?田村さんが考える改定のポイントを確認しながら今後の経営ビジョンと照らし合わせたいところです。また、冒頭では田村さんが薬局経営者になるまでの軌跡についてもご紹介いただいています。地域の「人」とのご縁が田村さんを経営者へと導いたというお話から、地域で生きる上でこのご縁が非常に重要な要素になると感じさせられます。

 

薬剤師は「一番身近な医療職」、その憧れを現実に

はじめまして。本コラムを執筆することになった薬剤師の田村憲胤(のりつぐ)です。ご存じない方も多いと思いますので、まずは自己紹介と共に私が薬局の経営者となった経緯をご紹介します。

 

父は東京フィルハーモニー交響楽団、母は小学校の音楽の先生という音楽家の家庭に育った私が、なぜ薬剤師になったかというと、家の近所にかかりつけにしていた薬局があり「薬局の薬剤師が一番身近な医療職」として憧れを抱き薬学部へ進学を決め、小さい頃からよく通っていた薬局に「薬科大学に行くことにしました」と報告しに行ったのがそもそもの始まりです。

 

薬局に興味を持ち始めた1990年頃、12.0%だった分業率は薬科大学へ進学した1996年には22.5%まで増え、さらに進路を決める段階の2000年には39.5%まで増えていました。また、薬学部入学前にもっていた「一般用医薬品の相談販売」という薬局のイメージは、就職を考える頃になると「薬局」という業務形態が、日用品・一般用医薬品販売中心の【ドラッグストア】、処方せん調剤が中心の【調剤薬局】、そして昔からある【個店の薬局】と3つの形態の「薬局」に分かれた印象を持ちました。

 

調剤薬局という形態が増えていくのと時を同じくして、かかりつけにしていた近所の薬局も、相談販売中心から調剤形態の薬局にシフトしていました。

 

小さい頃、興味をひかれた宝箱(OTC薬)に携わりたいという思いが強く、大学卒業後は大手ドラッグストアに一旦は就職しましたが、かかりつけにしていた地元の薬局の方に「薬局を引継いでくれないか?」と声をかけられ、大学卒業後5年目の2005年4月に地元の薬局を事業承継する形で薬局経営をスタートすることになりました。

 

その後、紆余曲折あったのですが「江古田から出ない!」と“覚悟”を決め、昔から江古田にある薬局を2店舗事業承継し、学校薬剤師などの地域活動をするなかで縁が広がり、1店舗増え現在西武池袋線江古田駅周辺に4店舗の“超”地域密着経営をしています(以下図参照)。

 

たむら薬局,メディカルサポネット,画像,薬局経営

 

自己紹介がすっかり長くなってしまいましたが、薬局を営む地域に暮らし、超地域密着で住民とかかわりながら薬局運営している薬剤師経営者の視点で今後連載していけたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

挫折経験から“超”地域密着薬局経営への覚悟

「生まれ育ったなじみ深い地元で、自分も薬剤師として地域の人たちから必要とされるような仕事がしたい」と思い独立を決心し、2005年4月に1店舗目の「たむら薬局栄町店」はスタートを切りました。事業承継してまず、江古田にある全ての医療機関に対応できるように開局時間を延長し、地域の医療機関マップを作成し、地域の医療情報・健康情報を発信し続けました。

 

また、調剤だけの薬局にはしたくないと、ドラッグストア時代に推売していたOTC薬を中心に相談販売もしていましたが、処方箋が増え時代は薬歴活用が声高に叫ばれるなか、相談対応する余裕がなくなり、だんだん商品の棚もスカスカになっていきました。

 

2007年に2店舗目の旭丘店を出店してからはさらに、調剤偏重に拍車がかかり、相談販売は諦めたくはありませんでしたが、当時は、開業当初の思いが次第に薄れ「会社を大きくしたい」という思いの方が強くなり、2012年3店舗目を踏み出そうとしたタイミングで挫折を経験しました。

 

2013年「日本再興戦略」で、薬局を「地域に密着した健康情報の拠点」として位置付け、国民の健康寿命が延伸する社会の構築を目指して、予防・健康管理の推進に向けた取り組みが大きく動き出していました。ちょうどその頃「江古田の住民の近くで、薬剤師として・薬局として提供できることを増やしたい」という原点に立ち返り、もう二度とこの気持ちを忘れないようにと、薬局としてのビジョンを記した「クレドカード」を作り「江古田地域にこだわりcureからcareまで貢献する」と覚悟を決め、再スタートを誓いました。

 

たむら薬局 経営理念 行動指針 メディカルサポネット

 

 

 

地域密着薬局からみた令和4年度調剤報酬改定

クレドカードを作ってからの会社の変化に関しては今後のコラムでお伝えしていきますが、そろそろ今回のテーマである地域密着薬局からみた令和4年度調剤報酬改定に関する内容に話を移しましょう。

 

2015年秋に「門前薬局」から「かかりつけ」そして「地域へ」とのキャッチフレーズで発表された「患者のための薬局ビジョン」はご存じだとは思いますが、全体的な印象として、令和4年度の調剤報酬改定は2025年までに全ての薬局をかかりつけ薬局に移行させるという、厚生労働省の意思を強く感じる大きな変化を感じさせる改定だったと思っています。

 

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