編集部より

病院の事務長藤井将志さんが、実務者目線で病院経営を時に辛口解説する今シリーズ。

今回は、人事評価とは切っても切れない「バイアス」「ノイズ」についてご紹介します。

藤井さんが事務部長を務める谷田病院では、人事評価を廃止してしばらく経つそうです。
人事制度廃止の背景にある考え方や、その後の職員の声への対応にもご注目ください。

  

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

1. 公正な人事評価はできるのか

谷田病院では人事評価制度を無くしてしばらく経ちます。なんで廃止したのか、という点は本コラムの過去の記事をご参照ください。


評価制度が無いことでよく聞く声が「頑張っても評価されない!」という意見です。

みんな頑張ってくれてる!全員を評価してます!という気持ちが本音なのですが、それを伝えると「あの人より私の方が頑張ってる」といった話になっていきます。そうした声を聞くたびに、何度も何度も人事評価を再開すべきか悩んでいます。 

  

ところが最近、新たな知見を学びました。

人事評価を求めているのは分かった。では、不公正な人事評価制度でも導入してもらいたい?」と聞くようにしています。このように聞くと、ほとんどの人は「それは困る。それは嫌だ。」となります。

 

では、公正な人事評価ってできるのでしょうか?

一昔前の考えでは、評価者研修をすることで同じ基準で評価できるようになる、とされています。しかし、実際には研修を受けても、評価する人が人間なので、平等にはなりません。 

  

例えば、平均の受け持ちの患者数は同じで、患者さんからの評判も同じくらい上々のAさんとBさんがいるとします。
ただ、Aさんはいつもお願いすると即座に「分かりました!」と気持ちよく答えて実行しますが、Bさんは最終的にはやってくれるのですが不平不満を必ず口にしてから行動します。患者さんには親切なのですが、上司にはいつも“余計な一言”があります。
さて、この2人を評価する場合、評価尺度が業務量(患者数)と患者評価に限定されているとしたら、同じ評価にするでしょうか
Aさんを高く評価する上司が多いのではないでしょうか。 

  

さらに、同じ成績のCさんとDさんがいるとします。
Cさんは上司と馬が合い、毎月飲み会にも行きます。一方、Dさんは愛想が良くなく、飲み会に誘ってもほとんど来ません。
職場でのパフォーマンスは変わらなくても、どちらかを上下の評価差を付けなければならないとしたら、やはりCさんを高くしてしまうのではないでしょうか。

 

 

2.不公正な判断の要因は、バイアスやノイズ

実はこうしたことが、経営学的にも明らかになっています。人間の評価にはバイアスノイズがどうしても入り込むというのです。

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