2024.10.31
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「辞めたい」と考えている薬剤師に対処するには?離職率や対処法、薬剤師が長く働きやすい職場作りについて解説

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.15

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

第15回は、「『辞めたい』と考えている薬剤師に対処するには?離職率や対処法、薬剤師が長く働きやすい職場作りについて解説」です。

 

薬剤師は対応業務も多く、プレッシャーを感じたり、研修が不十分で不安になり、離職を考える人も少なくありません。そのような状況を減らすためにも、薬剤師が安心して働ける職場作りが重要です。今回は、そのポイントについて紹介します。

  

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

  便箋の上に置かれた退職届とボールペン

 

 

薬剤師から「辞めたい」と申し出があったとき、何が問題だったのか気になることはありませんか? 薬剤師が辞めてしまうと、これまで通りに薬局運営を行えなくなる可能性があるため、退職に至らないようにできるだけ引き止めたいと考えるのではないでしょうか。そのためには、薬剤師が「辞めたい」と考える理由を知り、長く働きやすい職場環境を整備することが大切です。

本記事では、薬局薬剤師の一般的な離職率や薬剤師が「辞めたい」と考える理由を解説します。さらに、「辞めたい」と考えている薬剤師への対処法や薬剤師が長く働きやすい職場作りについてお伝えします

 

  

 

1. 薬剤師の離職率と転職希望者の割合

タブレットに表示されたグラフに指をさしているビジネスマン

  

厚生労働省が行った「2022年雇用動向調査結果」によると、全産業の離職率が15.0%であるのに対し、薬剤師を含む医療・福祉業界における離職率は15.3%でした。他業界の水準と比べても医療・福祉業界の離職率に大きな差はなく、平均的であることが分かります。 

また、2022年に厚生労働省が公表した「薬剤師確保のための調査・検討事業」の調査では、薬局薬剤師のうち5.3%が1年以内の転職を希望、17.8%が1年後以降の数年以内の転職を考えていると報告されており、薬局薬剤師の約5人に1人は転職に興味を示していることが分かります 

 

2. 薬剤師が「辞めたい」と考える主な理由

階段に座って頭を抱えている男性サラリーマン 

薬剤師が「辞めたい」と考える理由は、業務に対する不安や職場環境への不満などさまざまです。薬剤師の気持ちに寄り添い退職を防ぐためには、「辞めたい」と考える理由について知る必要があります。ここからは、薬剤師が「辞めたい」と考える主な理由について解説します。

 

職場の雰囲気・人間関係が良くない

先述した資料「薬剤師確保のための調査・検討事業」では、薬局薬剤師の退職理由に関する調査も行われました。その結果、「職場の人間関係」を理由に退職した薬剤師は全体の8.0%と、「一身上の都合」、「契約期間の満了」に次いで多くなっています。

 

薬局では、限られたスペースのなかで複数のスタッフが協力して業務を行います。しかし、スタッフごとに業務のやり方や仕事への考え方が異なる場合、コミュニケーションがうまく取れなかったり、業務の流れが悪くなったりして、人間関係のトラブルに発展することがあるかもしれません。人間関係が悪くなり職場の雰囲気が悪化すると、日々の業務が大きなストレスとなるため、「辞めたい」と思う薬剤師も少なくないでしょう。

 

業務量が多く負担となっている

処方せんの応需枚数に対して人員が不足している薬局では、薬剤師1人あたりの負担が大きくなりがちです。そうした状況が続くと、肉体的にも精神的にも疲労が溜まり、働き続けるモチベーションの低下から「辞めたい」と考える薬剤師もいることでしょう。そのような状況下で1人でも薬剤師が退職してしまうと、薬局の人員がより一層厳しくなり負担が増加するという負のループに陥りかねません。

加えて、近年、医薬品の出荷調整・停止が相次いでおり、医薬品を確保するための業務負担が増加しています。2022年に日本薬剤師会が行った調査によると、医薬品の供給問題によって、薬局では1日あたり平均98.1分の追加業務が発生していることが報告されています。医薬品の在庫を確保するために仕入先を探したり、患者さんへ供給状況の説明をしたりと、これまで以上に薬局スタッフに業務負担がかかっているのが現状です

 

給与の低さや待遇面に不満がある

給与の低さや勤務時間、福利厚生など待遇面に対して不満を抱える薬剤師も少なくありません。

給与の水準は会社や職種によって異なるうえ、同じ会社内であっても勤続年数や薬剤師としての経験値によって差が生じる場合があります。働き方が大きく変わらないにもかかわらず、他社の薬剤師や同薬局のスタッフよりも給与が低い場合には不満を抱えるケースもあるでしょう

また子育て世代の薬剤師のなかには、産休や育休の取りやすさを重視する方もいます。結婚や出産などライフイベントをきっかけに、福利厚生の充実した職場を探すため、今の職場を辞めたいと考える薬剤師もいるでしょう

 

薬剤師業務に対してプレッシャーを感じている

薬剤師の業務は非常に責任が重く、1つのミスが患者さんの命に影響を与えかねません。強いプレッシャーを抱えるなかで、業務中にミスを起こしてしまえば、その責任の重さに耐えられないことがあります。さらに繰り返しミスを起こしてしまうと、「自分は薬剤師に向いていないのではないか」と感じ、薬剤師を辞めたいと考えるケースもあるでしょう。

 

研修やフォローが少なく不安を抱えている

新卒や薬剤師経験の少ない薬剤師の場合、業務をこなすために必要な研修や周りのフォローが少ないと、うまく業務をこなせるのか不安を抱えがちです。不安を抱えたままでは働くモチベーションが下がってしまい、前向きに仕事に取り組めなくなるでしょう。

また、薬剤師がスキルアップ・キャリアアップをしていくうえで、新たな知識やスキルアップを身につけるための研修やセミナーへの参加は欠かせません。研修の少ない職場では自身の将来に不安を感じてしまい、研修が豊富な職場への転職を検討するきっかけになる場合もあるかもしれません

 

3.「辞めたい」と考えている薬剤師への対処法

 経営者と従業員が話し合いをしている

  

薬剤師が「辞めたい」と考える背景には、職場環境や業務負担に対する悩みなど人によってさまざまな要因があります。薬剤師から「辞めたい」と申し出があったときは、相手の事情を理解しないまま、ただ引き止めるのは得策ではありません。まずは、相手の気持ちに寄り添い、理解と共感を示すことが大切です。ここからは、「辞めたい」と考えている薬剤師への具体的な対処法を3つのステップで解説します

 

悩みや不満を聞き取り、理解・共感を示す

まずは「辞めたい」と考えている理由をじっくりと聞き取り、相手を理解することに努めましょう。感情的にならず相手の意見を尊重しながら話を聞き、悩みの原因を具体的に特定することで、対処すべき課題が明確になります。相手の気持ちに寄り添い、共感を示すことで、「辞めたい」と考える本当の理由を引き出すことができるでしょう。

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