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編集部より

近年、患者さんが急変する前の対応に関心が高まり、RRS (院内救急対応システム:Rapid Response System)を導入する医療機関が増えています。RRSにおいて患者さんのケアをするチームとして構成されるのがRRT(Rapid Response TEAM)です。RRTを導入するメリットや導入のための手順、課題と工夫などについて、看護師で医療専門ライターの西川さんが実体験を元に解説します。

 

執筆/ 西川 正太 (看護師、医療専門ライター)

編集/メディカルサポネット編集部

          


  

机に座り話し合う医師と看護師の様子

 

近年、患者さんが急変する前の対応に関心が高まり、RRS (院内救急対応システム:Rapid Response System)を導入する医療機関が増えています。RRSにおいて患者さんのケアをするチームとして構成されるのがRRT(Rapid Response TEAM)です。本記事では、RRTの目的や筆者が勤務していた病院において、RRTの導入に伴うスタッフの負担を軽減するための3つの施策について解説します。

 

1.RRTとは院内急変に対応する初動チーム

バインダーに持ち笑顔で正面を向いている女性の看護師

        

欧米を先駆けに日本でも導入が進んでいる急変に対応する初動チームであるRRT。まずは、RRTの概要や目的について解説します。 

RRTとは

RRTとは「急変に対応する初動チーム」のことで、Rapid Response TEAMの頭文字をとった略称です。

 

2015年に心肺蘇生ガイドラインのなかで、院内における患者さんの急変兆候の「監視」が盛り込まれました。その後、2020年には患者さんの急変兆候に対する「早期発見および予防」に変更されました

従来、患者さんの急変対応は、コードブルーや119コールと呼ばれるシステムにより、心停止が起こったあとに医師や看護師が駆けつけ、患者さんに対応する仕組みとなっていましたが、2020年のガイドラインの変更に伴い、患者さんの急変兆候に早期に対応し、安定化を図る体制の整備が必要となったのです

そこで、多くの病院ではRRTを発足させ、急変対応の専門チームで対応する流れが作られています。RRTのメンバーは病院により異なりますが、以下のようなメンバーで構成されるのが一般的です

  • 医師(麻酔科、救急科、外科など)
  • 看護師(急性・重症患者専門看護師、集中ケア認定看護師、ICUの看護師など)
  • 臨床工学技士
  • 薬剤師
  • 医療安全管理者

患者さんが急変したと病棟から要請があったときに、専門的なチームで駆けつけ患者さんに対応するのがRRTの重要な役割といえるでしょう。

RRTを導入する目的

RRTの主な目的は「患者さんの状態が悪くなる前に介入することで急変を予防する」ことにあります。院内の予期せぬ死亡例には6~8時間前に、次のような何らかの予兆があるとされています。

  • 呼吸の異常
  • 循環の異常
  • 意識の異常

 

医療機関での死亡例の66~95%に上記の兆候が認められており、RTTの介入で早期発見と早期対応を進め、心停止を回避するのが大きな目的といえます。

  

2.RRTの主な活動

医師と話し合う女性看護師

      

RTTの活動は、患者さんの急変時の対応だけではありません。RRTを効果的に活用してもらうためには、まず病棟の看護師が迅速に応援を要請できるように基準を明確にする必要があります。また、RRTとして介入した後を振り返ることも重要です。続いて、RRTが取り組むべき活動として代表的な3つの項目について解説します。

  

①RRTに応援を要請する基準の明確化と周知

RRTの活動のひとつとして、RRTの応援を要請する基準の明確化とその周知があります。

 

RRTを要請する基準が明らかでなければ、病棟の看護師は「患者さんの様子がおかしいかも……」と感じても要請できません。RRTを要請する基準の一例を紹介します。

 

RRTを要請する基準の一例

参考:HOSPITAL VIEW 

 

RRTに要請する基準は病院によって異なりますが、提示した基準を超えた場合、病棟の看護師からRRTに要請があり対応するというのが一般的な流れです。

 

また、「何か変である」ことをRRTに要請する基準のひとつに入れている病院もあります。これはRRTを要請するという行為に対する看護師の心理的なハードルを下げるためです。

 

看護師の中には、「このくらいでRRTを呼んでもいいのかな?」「RRTを呼ぶほどの状況ではなさそうだけど」などと判断を迷う人もいます。基準値は満たしていなくても「何か変である」という印象でRRTを要請できるという安心感は、結果として、患者さんの状態悪化を防ぐことにつながります。ただし、こうした基準があることが周知されていなければ、要請の判断が難しく、介入が遅れるかもしれません。そのため、RRTを要請する基準を定めるだけではなく、スタッフに周知することが必要です。

②RRTコールへの対応

RRT専用のPHSを使用し、病棟や外来などからのコールに対応して駆けつけ、患者さんの状態の評価をしたり処置をしたりします。基本的には、まずは看護師が病棟に駆けつけて対応し医師に報告する、もしくは患者さんの状態が悪いときは医師に対応を依頼するのもRTTに参加するスタッフの役割です。

RRTの対応後は、病棟での経過観察を続けるのか、ICUやCCUへ移動をするのかなどを医師と協議し検討します。

③RRTコール対応の振り返り

RRTコール対応の振り返りを行って改善策を検討したり、各病棟へフィードバックしたりすることも、とても大切な業務です。患者さんが急変する件数を減らすためには、その時の状況や具体的な対応などを記録し、より効果的な方法を検討する必要があります。必要に応じて医療安全推進室に報告したうえで、院内で情報提供するといった活動も、RRTの役割といえます。   

3.スタッフの負担軽減に向けたRRT導入の課題と対策

バインダーを片手に、頭を抱える女性の看護師

      

筆者が勤務していた病院では、RRTが導入されたものの、業務において課題が生じました。一般的には、システムの構築の不備やRRTを呼ぶハードルなどが大きな課題として取り上げられます。しかし、実際に筆者が課題だと感じたのが「スタッフへの負担増加」です。特に、看護管理者が関わる課題として、RRTの導入にともなうスタッフの負担に注目してみましょう。

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