2023.12.21
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地域包括ケアシステムにおける看護師の役割とは?急性期病院の看護職がすべき3つの介入

            

編集部より

日本では、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでおり「地域包括ケアシステム」の実現が欠かせないと言われています。実際に、65歳以上の高齢者の割合は、2019年は全人口の28.4%を占め、2065年には38.4%に達すると推測されています。こうしたなか、地域包括ケアシステムにおいて急性期病院に勤務する看護職の介入はなぜ重要なのか。本記事では、看護師経験14年の西川さんが、勤務していた急性期病院の例を参考に、地域包括ケアシステム推進において看護職が担う役割や課題について解説します。

   

執筆/西川 正太 (看護師、医療ライター)

編集/メディカルサポネット編集部

          

   

1.地域包括ケアシステムとは?

屋外にて、高齢者と介護者がつなぐ手のアップ

        

「地域包括ケアシステム」とは、簡潔に説明すると医療や介護などを必要とする方やその家族を地域のなかで支援する仕組みです。2003年から推進している考え方です。ここでは、詳しい定義や推進する理由を解説します。

 

地域包括ケアシステムの定義と概要

厚生労働省によると地域包括ケアシステムとは「医療や介護が必要な状態となっても、可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」と定義されています。

つまり、地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・住まい・生活支援の5つがそれぞれ連携し、地域での人々の生活を支える仕組みです。地域包括ケアシステムの実現により、高齢者が医療や介護が必要となったあとも、住み慣れた地域でその方らしく最期まで暮らしやすい環境が整うことでしょう。

 

図表1:地域包括ケアシステムの仕組みのイメージ

地域包括ケアシステムの仕組み

出典:<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(三菱UFLリサーチ&コンサルティング)|厚生労働省より公開

   

地域包括ケアシステムを推進する3つの理由

では、なぜ地域包括ケアシステムが進められているのでしょうか。以下3つの理由が考えられます。

 

1. 高齢化の進展

2. 医療・介護のリソース不足への対応

3. 財源の不足

 

すでに超高齢社会の日本ですが、今後ますますの高齢化が見込まれます。2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、2065年には高齢者の割合は38.4%、65歳以上の方は約3,300万人に達すると推測されます。

また、同時に15~64歳の人口も減少しており、働き手となる労働人口が減っています。結果として、医療や介護を担う人材がますます不足すると考えられます。

さらに、財源確保の問題もあります。社会保障費は100兆円を超え、2019年は約123兆円となりました。一般的に、自宅で生活しながら療養するよりも、病院に入院する方がかかる医療費や介護費用は大きくなります。

 

こうした背景により、医療や介護のニーズは高まるにもかかわらず、対応する人材や財源の確保が追い付いていません。そのため、今後も医療や介護が必要になった方に十分な支援を提供できるように地域包括ケアシステムの推進が必要とされています。

           

2.地域包括ケアシステムにおける急性期病院の看護師の役割

病室に置かれている車椅子と、ソファに座る高齢の女性

      

地域包括ケアシステムは、高齢者の自宅での生活を支える仕組みであり、高齢者自身も過半数が自宅での生活を望んでいます。実際に「最期は在宅で生活したい」と考える高齢者は63.3%に達します。しかし、実際には、何らかの病気や障害により「最期のときまで在宅で療養する」ことは難しい現状です。

 

厚生労働省が公開した資料を見ると、健康寿命と平均寿命には約10年の差があることがわかっています。健康な状態を維持できず、施設へ入所したり、地域包括ケア病棟がある病院に入院したりする高齢者も少なくないと考えられます。

  

図表2:2019年の健康寿命と平均寿命

男性 女性

健康寿命

72.68歳 75.38歳

平均寿命

81.41歳 87.45歳

「簡易生命表|厚生労働省」と「健康寿命の令和元年値について|厚生労働省」をもとに作成

出典:健康寿命の令和元年値について|厚生労働省

 

入院が必要な高齢者のうち、注目したいのが「急性期病院」を利用する人の割合です。厚生労働省が公開した「要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療」によると、介護施設や福祉施設から入院する患者の75%は急性期病院に入院するとされています。

 

 

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