調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。
この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規（しのはら しょうき）さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。
第５回は、「薬局経営のDX」について説明します。本記事では、薬局DXの現状、国が推進する薬局DXの具体例とともに、薬局DXを推進する経営上のメリットや、DXを進めるために実際に他の薬局が導入しているアプリやツールなども具体名を挙げて解説します。
執筆／篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐
編集／メディカルサポネット編集部
目次
- １. DXの概要
- ２. 薬局DXの現状
- ３. 国が推進する薬局DXの具体例
- ４. 薬局DXを推進する経営上のメリット
- ５. 薬局DXを推進するために薬局で取り組むこと
- ６. 薬局DX推進に向けて積極的に取り入れたい調剤ツールを紹介
- まとめ. 薬局DXを推進し、薬剤師業務に有効活用しよう
近年、「DX（デジタルトランスフォーメーション）」という用語を耳にする機会が増えました。さまざまな業界で注目されているDXですが、薬局経営においてもDXを推進することで多くのメリットがあります。この記事では、薬局DXの概要や経営上のメリット、具体例について解説します。さらに薬局DXを推進するために、どのように取り組めばよいのかを具体的にお伝えします。
１. DXの概要
そもそもDXとはどのような取り組みを指すのでしょうか。DXの定義や「デジタル化」との違いについて解説します。
DXの定義
Digital Transformation（デジタルトランスフォーメーション）のことをDXと表記します。経済産業省が作成した「デジタルガバナンス・コード2.0」によると、DXについて以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
デジタル化との違い
DXの目的と考えられがちなのが「デジタル化」です。デジタル化は既存のアナログ業務をデジタル技術に置き換えて業務を効率化させることであり、あくまでDXの通過点に過ぎません。デジタル化したのち、データやデジタル技術を活用してビジネスを変革し、他社との競争において優位性を獲得することがDXにつながります。
２. 薬局DXの現状
DXの推進は、業界を問わずさまざまな企業で重要視されている課題の1つであり、薬局経営においても活用が進んでいます。各メーカーから薬局DXを推進するためのデジタル機器やアプリが開発されています。例えば、大手チェーン薬局の多くは電子薬歴や電子お薬手帳、服薬フォローアップ支援用のチャットツールなど、さまざまなデジタル機器やアプリを積極的に導入しています。
また大手調剤薬局チェーンである日本調剤株式会社では、DXを企業経営の重要課題ととらえ、以下の5つのDX戦略を掲げています。
スマート医療の提供
新たな顧客体験の創出
顧客満足度向上と治療効果の最大化
付加価値情報の提供
業務の効率化・対人業務時間の創出
持続的な成長を続けるために、デジタル機器を採用したり、DX推進に向けて指針を示したりする薬局が増えているのが現状です。
３. 国が推進する薬局DXの具体例
じつは、国主導でも薬局のDX化が推進されています。国が進める薬局DXの具体例を紹介します。
電子処方箋の導入による業務効率化
電子処方箋とは、紙媒体で発行していた処方箋を電子化し、データとして取り扱えるようにしたものです。複数の医療機関や医師、薬剤師間で処方箋を電子的にやり取りできる仕組みとして2023年1月から運用開始となりました。
電子処方箋の導入により、
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