2019.09.11
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【新連載】看護のリアル24時  
     vol.1退院調整看護師

~退院後も安心した療養生活を実現するために患者と家族をサポート Day1~

規模を問わず、他の病院・施設の看護実践を知る機会はそう多くありません。同じ病院に勤務していても、隣の病棟に足を踏み入れるとまったく別の世界が広がっている経験をしたことがある方も少なくないでしょう。本連載では、中小規模の病院や施設がどのような看護を提供しているのかに焦点を当て、看護師の仕事の理解をより深化させるためのヒントを探るため、看護師・保健師であるメディカルサポネット編集部員が密着取材しました。
第1回目は退院調整看護師の仕事に密着。外来~入院~退院~在宅療養の流れを円滑に動かすキーパーソンである退院調整看護師は、今や病院に欠かせない職種の1つです。具体的にどのような仕事をしているのか、知られざるその役割に迫ります。

取材・撮影・編集/メディカルサポネット編集部

 

 

伊藤 小百合さん

渕野辺総合病院メディカルサポートセンター 
地域医療連携課 医療福祉相談係
退院調整看護主任
 
◆プロフィール◆
岩手県出身。県内の看護学校を卒業し、都内の総合病院内科病棟に6年間勤務。転居を機に、2005年渕野辺総合病院に就職。回復期リハビリテーション病棟等での勤務を経て、2014年よりメディカルサポートセンターに異動し現職。小学生と幼稚園児の2児の母。
伊藤さんが勤務する渕野辺総合病院は、相模原市にあり、健診、訪問診療、救急、出産等、市民の健康をトータルでサポートする総合病院です。近隣の大学病院等と連携し、地域の中核病院としてその役割を担っています。退院調整看護師は各医療職種と連携しながら、自宅での療養生活、自宅療養から継続した外来通院、症状悪化時の転院、医療福祉サービスの紹介など、トータルで患者・家族をサポートしており、伊藤さんは6年前から現職となり、4名のスタッフと共に活躍しています。

「私が退院調整?!」から始まった新しいステージ

6:00 起床

伊藤さんの1日が始まる。手早く身支度を整え、朝食・自分のお弁当作りにとりかかる。

 

6:45 朝食

子どもたちが起きてくるので、登校・登園準備を手伝い家族そろって朝食をとる。洗濯等は一緒に住む義母が引き受けてくれるため、比較的ゆっくりと朝時間を過ごせる。

 

7:45 出発

夫が運転する車で自宅を出発。通勤ラッシュのない、快適な空間で少しずつ仕事モードにシフトチェンジ。一時は仕事と家庭の両立に戸惑ったこともあったが、「せっかくとった資格なのに辞めるなんてもったいない!」という夫の一言で継続を決意した背景がある。

 

8:10 病院到着

ロッカーで着替えて職場である「医療福祉相談室」へ。ユニフォームはスクラブを着ることが多い。他にエンジ色のスクラブ、白衣(セパレート/ワンピース)を選択できる。

 

8:30 勤務開始

勤務時間は8:30~17:15。パソコンを起動し、ホワイトボードに記載されている会議やカンファレンスを確認。メンバー全員の予定が記載されており、それぞれの予定をひと目で見ることができる。医師から患者・家族への病状説明は夕方以降に行われることも多く、そこに同席する際は帰りが遅くなることもあるという。

伊藤さんの担当は6階の外科病棟。この病棟には退院後に医療行為が必要となる患者が多く入院しており、今後もその数が増えることが予想されることから、入院前~退院後の支援がスムーズに行われるよう、退院支援に力を入れるべく伊藤さんが退院調整看護師を担うことになった。

 

 

9:00
毎週土曜日に医師を交えたカンファレンスが開催されるため、月曜日の朝はそこで決まったことの対応から始まることが多い。
  
今日の仕事は大きく分けて3つ。
 
1.退院調整が完了した患者の最終確認
2.訪問看護ステーションや他病院の医療連携室等、
      各関係機関との連絡調整
3.病棟カンファレンス2件参加
退院調整を始めて感じたことは、関係機関の担当者と顔を合わせることの大切さだという。「実際に会議等で担当者と会うことで、メールや電話だけではわからない人柄や温度感がわかりました。やりとりを通して『このケアマネにこれからも頼もう』『このケースはあそこにお願いしよう』『あの訪問看護ステーションならこのケースは対応できそう』といった適所を見極められるようになりましたね」。渕野辺総合病院では高齢者の退院調整に関わることが多く、小児への介入はまれだ。しかし研修で大学病院の連携室に行った際、小児の退院調整カンファレンスに出席し、点滴や人工呼吸器を装着した状態で退院準備を進めるケースを聞いて「これをサポートする在宅支援ってすごい!と思いました」と退院調整の奥深さについて話してくれた。

 

10:00 新たに退院調整することになった患者の情報収集

入院中の患者が、退院後に介護保険サービスの利用の可能性があり、伊藤さんに介入要請の電話があった。がんの化学療法中に食欲低下と歩行状態悪化を認め入院となった、80歳代の患者。 電話を切った伊藤さんは、今後の介入についてひとしきり考えこんでいた。「状況は理解しましたが、介護保険を申請するとしても、今後どのようなサービスが必要になるのか、アセスメントをしていかなければなりません。利用するサービスは訪問介護か訪問看護か。何に困っていてどのようなことに介入が必要なのか。それを見極めるには家族背景や住居環境、患者本人の思いといった情報収集も必須となります」。近日中に病室を訪問し、本人および家族の状況を確認することが喫緊の課題となりそうだ。

 

 

11:20 入院患者の退院後の療養環境についてMSWを交えて情報共有

MSW(医療ソーシャルワーカー)から相談されたケースについて、情報共有し今後の対策について検討が始まった。自宅か施設か、金銭面・家族環境・本人の身体状況を考慮し、どの選択が最も適切かを熟考。ケアマネジャーと訪問看護師の予定を調整できたため、急遽午後から家族と面談することになった。しかし、本人の意向を聞き出せていないことや方向性の確認等、相談者として事前準備が十分ではないため、面談時間までの時間を使って、メンバー間での情報共有とディスカッションが行われた。

 

 

12:00 ランチ

今日のランチはデスクでお弁当。前夜のおかずをメインに、卵焼きやソーセージなどを朝作って入れることが多いそう。院内には職員食堂もあり、バランスよく活用している。「夜ごはんが残らなかったら食堂に行きます(笑)」。この時間帯は医療福祉相談係のメンバー全員がそろうことが多く、自然と情報交換・情報共有の場になるという。 束の間の休息でホッとひと息。退院調整に携わることは以前から目指していたのか聞いてみた。
 
「実は人事異動で配属されたのがきっかけなんです。当時は院内で退院調整が十分に浸透していない時期でしたから、私に務まるのか不安が大きかったことを覚えています。でも、実際に異動してみると多くの学びや出会いがあり、キャリア構築していく上で自分自身の能力を高めることが出来る仕事だと思っています」。午前中行動を共にし、その様子から「きっと以前から退院調整に関心があったのだろう」と思っていたので予想外の答えだった。いまや院外で退院調整について発表するほどになった伊藤さんの退院調整能力。それを見抜いていた渡辺看護部長の存在も忘れてはならない。

 

12:10 訪問看護ステーションから電話

ランチ中といえども、PHSにかかってくる各関係機関からの電話対応は休めない。前日に入院した患者を普段訪問している訪問看護ステーションから「鈴木さん(仮名)入院したんですって?」と一報が入った。病状経過を報告し、介護サービスの現状について確認。しばらく訪問看護中止の旨が伝えられた。

 

カンファレンスと鳴らない電話 ー「動く」ことと「待つ」ことー

13:00 入院患者の家族と面談

家族、ケアマネジャー、訪問看護師、MSW、伊藤さんで面談開始。

 

13:30 6階病棟のケースカンファレンスに参加

13:00からの面談をMSWに託し途中から参加。少し遅れて参加したこともあり、カンファレンスはすぐに終了。その後担当している患者について病棟看護師(主任と受け持ち看護師)と情報共有。ストマ(人工肛門)を造設した90歳代の患者が、ストマ周囲のトラブルにより、退院近くになってもストマ装具が決まっていない状況にある。明日、訪問看護師と施設看護師が来院し、ストマケアについて情報共有することとなっており、現状を踏まえて明日の来院でいいのか、日程を再検討する必要があるのか、伊藤さんは調整・判断する役割を担っている。午後はこの患者をめぐるやりとりが中心となる。

 

伊藤:「今後を考えると、操作が簡単な方がいいですよね。近々交換する予定はありますか?」
病棟看護師:「今日この後交換しようと思っています」
伊藤:「そこに立ち会いたいので、やる前に電話いただけますか?」
病棟看護師:「わかりました」
装具交換の場面に立ち会うことで、皮膚トラブルの様子を実際に確認したり、現在使用している装具にどのような問題があるのかを見たりすることで、伊藤さん自身も把握できると同時に対応策を共に考え、訪問看護師等に明確に伝えることが可能となる。

 

14:00 入院患者の家族との面談に再合流

方針が決まったものの、今後も介入が必要であり面談を継続していくこととなった。

 

退院調整看護師になって6年目。手探りで自身の役割を見出しながら、活躍の場を広げ、今や院内で伊藤さんの存在を知らない人はいないほど認知度は高い。最近は看護協会の研修で発表することも増えた。とはいえ「患者さんの気持ちを聞いてどう支援につなげていくかが今年の課題です」と意欲を語る。

患者支援のみならず、院内スタッフに向けた退院支援の意識付けも伊藤さんの大きな役割だ。「病棟カンファレンスで看護師から「本人はどう思っているのだろう?」という言葉が多く聞かれるようになり、患者視点に立ったケアができてきていることを実感しています」とこれまでの成果を振り返った。

 

15:00 地域包括ケア病棟カンファレンス

間髪入れずに次のカンファレンスへ移動。この病棟には、10床の地域包括病床があり、毎週月曜日に定例カンファレンスが開催されている。参加職種は医師・病棟看護師・PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・MSW・退院調整看護師。PTが司会を務め、各医療職者が各患者の退院に向けた進捗状況を報告し、共有し合う場となっている。ここは伊藤さんの担当病棟ではないが、院内で最も長く退院調整に携わっている看護師として参加し、必要時すぐに介入できるよう情報収集を積極的に行っている。今日のカンファレンスでは、PT・OTからはリハビリの進行状況が、MSWからは介護度やサービス状況の情報提供が、病棟看護師からは内服薬の自己管理状況等が共有され、治療方針や本人の目標と照らし合わせ、方向性の確認・修正が行われた。

 

ここでカンファレンスの一部をご紹介します

PT:「Aさんは腰の痛みが落ち着いてきていて、歩行リハビリが順調に進んでいます。退院に関しては、本人は自信がついてきたので『そろそろ帰れるかな』と話していますが、ご主人はリハビリをしっかりやってから退院してほしいと思っているようです」

病棟看護師:「歩行器で歩いていますが、まだ足元が不安定ですよね?入院時と比べると改善してきていますが、少しつまずくような・・・」

PT:「運動失調があるので若干フォームのブレを認めますが許容範囲かと思います。もう少し様子をみて、日中1人でトイレに行けるようになれればと思っています」

MSW:「退院後は手すり、電動ベッド、歩行器が必要になると考えています。介護保険の認定が今週中に出る予定なので、それを待って何を借りるか等の対応を進めましょう」

PT:「Bさんですが、ベッド上で座位になる練習をしています。リハビリ後は吐き気もなく落ち着いています。本人もだいぶ調子よくなってきて『早く帰りたい』と話しているので、退院準備を進めていってはどうでしょうか?」

MSW:「介護保険が要介護2と認定されたので、これからケアマネを探していきます。ご本人はシルバーカーを借りたい希望があるのと、自宅玄関に入りやすいような環境調整が必要になります。手すりも必要になりそうです」

 

 

カンファレンス終了後は、それぞれの仕事に戻るが、必要に応じて個別に病棟看護師やPTと患者の情報共有を行う。「各職種がそろう場なので、効率的に話を進めることが可能です」。

15:40 外来で診療中の医師を訪ね必要事項を確認

入院中の患者が退院後自宅で使用する医療材料について、訪問看護ステーションから問い合わせがあり、担当医に確認するため外来診察室へ。この時間の外来は落ち着いてきており、直接医師と話せることが多い。どのタイミングで訪ねればやりとり可能かを熟知しているのも、伊藤さんの強みだ。
 
「まだ連絡きませんね」。ストマ装具交換の連絡が病棟の受け持ち看護師からこないことが気になりながらも、受け持ち看護師が2年目であることを考え、彼女の主体性を期待して伊藤さんは「待つ」ことを選択した。

 

15:40 訪問看護ステーションに電話し、FAXを送信

先ほど医師に確認した内容を、訪問看護ステーションに電話し報告。

 

医療材料のメーカーや型番がわかるよう包装をコピーし、他の情報シートと合わせてFAXで訪問看護ステーションに送信。 ICTが発達し、国は「医療情報連携ネットワーク」の普及を促しているものの、FAX等の紙でのやりとりもまだまだ多いのが現状だ。伊藤さんも「この6年、FAXのやりとりが減った印象はないですね」と話す。

 

16:15 退院後自宅でストマ交換が必要な患者について病棟に確認

この時間になっても、ストマの装具交換をする患者の看護師から連絡がなく、いよいよ動いた伊藤さん。病棟に電話したところ、すでに交換が終了していたことが判明。残念ながら立ち会うことができなかった。すぐさま代替案を考え、病棟内にいるストマケアに詳しい看護師に今後の対応を相談したところ、明日の情報共有は延期した方がいいという判断があり、その旨を先方に連絡した。

 

17:10 記録

今日の仕事の区切りがついたところで記録の入力にとりかかる。「やろうと思えば際限なくできる仕事なので、キリのつけ具合が難しいですね。病棟勤務の時とはまた別の大変さがあります」。記録データは医療福祉相談係のメンバーで共有しており、不在時でも対応できる体制が整っている。必要時カルテに転記し、病棟等各部署と共有される。「面談や打ち合わせの合間に記録する方がいいんでしょうけど、なかなか時間がとりにくくて、夕方まとめて記載することが多いですね」。1日の最後にTo Doリストを整理して帰るのが伊藤さんのルーティン。

 

18:35 勤務終了

この日は夕方の面談はなく、IDカードをタッチして勤務終了。着替えて夫の迎えを待ちます。1日お疲れ様でした!密着取材2日目につづく。 

 

 

医療法人社団相和会 渕野辺総合病院

開設:昭和29年8月
院長:世良田 和幸
看護部長:渡辺 加代子
ベッド数:161床
看護基準:7対1
病院職員数:495名(非常勤職員153名含む)
看護職員:210名(非常勤職員を44名含む)
(看護師159名、助産師12名、准看護師4名、介護福祉士11名、看護助手24名)

URL:http://www.sowa.or.jp/fuchinobe/

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