地域医療をテーマにした新しい医療&ヒューマンドラマが始まります。さまざまな疾患や生活背景を持つ村人と医療従事者が近い距離で過ごす日常の描写は、「治療は生活と共にある」という医療の本質に気づかせてくれる、これまでの医療ドラマとはまったく異なる切り口で私たちに問いかける作品となっています。メディカルサポネットでは、医療従事者を演じる高畑充希・北村匠海・井浦新に見どころについて伺いました。
取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
撮影/穴沢 拓也(株式会社BrightEN photo)
編集/メディカルサポネット編集部
「にじいろカルテ」は、ポンコツ内科医とヘンテコ外科医、前髪ぱっつん看護師が、山奥の診療所でシェアハウスしながら地域医療に奮闘する様子を描く、新作医療&ヒューマンドラマ。本作で主演を務めるのは、テレビ朝日系列のドラマ初出演となる高畑充希さん。朝ドラ「ひよっこ」「ちゅらさん」をはじめ数々の名作を生み出してきた岡田惠和氏が初めて手がけた医療ドラマでもある本作の魅力について、出演者インタビューを交えてご紹介します。
木曜ドラマ にじいろカルテ
2021年1月スタート 毎週木曜 よる9:00~9:54放送
演出:深川栄洋
脚本:岡田惠和
制作:テレビ朝日 アズバーズ
紅野真空(高畑充希)は、夢と誇りを持って東京の大病院でバリバリ働く内科医。ところが、ある日突然「とある病」にかかっていることが発覚します。今の現場で働くのは難しくても、医師として仕事を続けたい――。悩んだ真空は、ひょんなことから存在を知った小さな村の診療所で、病気のことを隠して働くことに。バスに乗り、鬱蒼とした森を抜けてたどり着いた「虹ノ村」は、想像以上の山奥でした。そこで待ち受けていたのは、ツナギにグラサン姿のヘンテコ外科医、浅黄朔(井浦新)。そして、いじられキャラの若き看護師、蒼山太陽(北村匠海)。彼らと一つ屋根の下、不思議なシェアハウス生活が始まりますが……。村で出会った個性豊かな人々との触れ合いを通して、熱く命と向き合う真空が成長していく物語です。

紅野真空(くれの・まそら):高畑充希
東京の大病院で、内科医として外来を担当していた。自らの病が発覚して途方に暮れていたとき、虹ノ村のウェブサイトで医師募集の告知を発見し、美しい風景と「住居無償提供」の言葉に魅かれて移住を決意。「医師であると同時に患者」という立ち位置を生かしながら、田舎の集落で奮闘していく。家事能力は絶望的で、部屋は散らかり放題なタイプ。

蒼山太陽(あおやま・たいよう):北村匠海
3か月前に東京から虹ノ村へやって来た看護師。いつも肩から電子カルテをぶら下げている。仕事ぶりは驚くほど優秀でまじめな性格だが、村では「いじられキャラ」としての地位を確立。家事全般が得意で、ついつい人の面倒を見てしまう世話焼きな一面も。フリーダムな朔とは犬猿の仲でケンカが絶えないが、実はいいコンビでもある。嫌いなのは、「男のくせに」「看護師は女房役」などと言われること。

浅黄朔(あさぎ・さく):井浦新
「本業は農家、副業が外科医」と豪語する医師で、1年前から虹ノ村で暮らしている。自由奔放な性格で、真空に仕事を押し付けて畑仕事に出たり、患者さんと将棋を打ったりしていることも。ふざけた態度で人をいらだたせることも多いが、医療現場での経験は豊富で、ピンチのときは頼れる存在。その過去は謎に包まれており、なぜこの村に来たのか語ろうとはしない。
太陽(北村)と朔(井浦)に案内されながら、村の診療所へ足を運ぶ真空(高畑)。
(提供:テレビ朝日)
「にじいろカルテ」では、地域住民の生活に密着しながら治療やケアを提供する診療所の様子がコミカルかつ温かな視点で描かれています。大規模病院のように高度な医療設備がない中で医療従事者がどのように活躍できるのか、そのヒントがたくさん散りばめられている作品ともいえそうです。
こうした地域医療のあり方は、2025年問題が間近に迫った今の日本において、ひときわ注目されるテーマです。これまで「病院完結型」だった医療は、複数の慢性疾患を抱えながら地域で暮らす人々が増えたことにより「地域完結型」へ移行。病気を治療するだけでなく、生活を支えることが医療職にも求められるようになりました。高度な医療技術を提供することはもちろん大切ですが、それでも完全には回復しないと分かってからの患者さんの人生にどう寄り添っていくのか――。真空たちの姿から、一つの答えが見えてくるはずです。
――本作の台本を読んだとき、そして現場に入ったときの印象を教えてください。
(提供:テレビ朝日)
井浦:こんな時代だからこそ必要とされる、明るくて温かな作品だと思いました。ただ、そこに様々なスパイスが加えられています。その一つがユーモアで、予定調和に陥りがちな場面をいい意味でかき回すような感覚でしょうか。私が演じる浅黄朔という医師は、過去に何かを抱えている人物。しかし、「いかにもミステリアス」という類型的な人物像にとどまることなく、3人での芝居を通して自由に役が育っていくことを新鮮に感じています。
北村:台本のト書きで人物の心情を理解できる表現が多く、役のイメージを描きやすかったです。ただ、現場に入ると、監督の演技指導が想像をはるかに上回ってくるので……。新しく台本を頂くたびに、「監督はどうするんだろう?」とワクワクしています。看護師である蒼山太陽は感情の変化が激しい、いわゆる「ブチギレキャラ」でもあり、そこに演じる難しさもありますが、3人での会話のキャッチボールを通して、血の通った言葉としてセリフが出てくるようになりました。

高畑:最初に台本を読んだ感想は、「岡田さんワールドだ!」でした。登場人物の気持ちや行動の理由が明白で、役者にとって優しい台本なんです。北村さんのおっしゃる通り、現場は想像以上にスパルタでしたが(笑)、自分のイメージ以上に役が生きてくる感覚がおもしろいですね。話が進むごとに3人の関係性も変化していきますが、そこにリアルさがあるように思います。「目の前で起こったことに反応する」という、単純なようで実は難しいことに挑戦する毎日です。
――本作は、視聴者にとってどんな作品になるでしょうか。
高畑:2020年は暗いニュースも多く、今日1日を踏ん張ることがとても難しい1年だったように思います。本作では、それぞれの登場人物が「何か」を抱えながら、それでも毎日を過ごしていく姿がハートフルに描写されています。新たな気持ちで迎える2021年、「毎週木曜日はこのドラマがあるから癒される」と思っていただけたらうれしいです。
井浦:私たち3人は「虹ノ村診療所」で働きながら共同生活を送る役どころですが、そこで生まれるやり取りは総じて喜劇的です。時に人生は大変だけれど、それでも人と関わりながら生きていくことってなんて素晴らしいのだろう……。そんなことを感じつつ、笑い飛ばしながら観られる楽しい作品です。

北村:このドラマで描かれる人たちは、誰も「1人で生きよう」としていません。地域住民を助けるために私たち3人が支え合っているし、村人同士も助け合って生きている。そして、病を抱える真空先生も……。2020年は医療関係者の皆さんにとって大変な一年だったと思いますが、実際の医療機関でもこうした支え合いがあったに違いありません。ハードな毎日でお疲れ気味の皆さんに、このドラマでホッとしてもらいたいです。
――医師や看護師を演じる中で、医療や医療従事者に対するイメージは変化しましたか。
北村:病院といえば「都会の大きな医療機関」のイメージが強かったので、診療所のセットを見て「こんなに親しみやすい医療現場もあるのか!」と驚きました。村で暮らすおじいさんやおばあさんたちと触れ合う演技を通して、看護師は人と人とのつながりや愛を感じられる素敵な仕事だと感じています。
高畑:実は、「医者も人間だ」が本作のテーマの1つなんです。一般の人からすると、医療従事者は「完璧」に見えて、絶対的な存在としてとらえがちです。しかし実際には、当たり前だけれど人間として不完全な部分もある。役作りを通して、医師や看護師の背景にあるそれぞれの人生を、少しだけ想像できるようになりました。

井浦:「病院」というものにどこか無機質なイメージを持っていましたが、本作を通して「人に会いに行く場所」であると認識するようになりました。田舎の診療所の物語ということで、医療従事者と地域住民の距離感が近く、病気でなくても会いに来たりする場面が多いのです。そうした交流で心癒されるのも大切だということは、昨今の医療従事者を描いたドラマではなかなか注目されなかった部分ではないでしょうか。
「人並みの弱さ」を抱えた医療従事者である真空たちは、地域医療の現場で何を見出し、どのように自らの生き方を方向付けていくのでしょうか。安達祐実や泉谷しげるなど、物語を彩る豪華キャストにも注目したい木曜ドラマ「にじいろカルテ」は、2021年1月21日スタートです。

木曜ドラマ にじいろカルテ
放送日:2021年1月21日スタート
毎週木曜 21:00~21:54
脚本:岡田惠和
演出:深川栄洋
制作:テレビ朝日 アズバーズ
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キャスト:高畑充希、北村匠海、井浦新、
安達祐実、眞島秀和、光石研、西田尚美、泉谷しげる、水野美紀ほか