編集部より

病院の事務長藤井将志さんが、実務者目線で病院経営を辛口解説する今シリーズ。今回は職員に「給与が低い!」と言われた場合どうするか?について、具体的な対応の例を解説していただきました。病院・クリニック経営に関わる人なら多くの人が言われたことがあるであろう給与への不満を、どのように対応すればより良い職場にしていけるか、ぜひ参考にしてください。

  

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

1.給与増は満足の要因にはならない

管理者の方なら一度は部下から「給与が低い」といった不満を言われたことがあるのではないでしょうか。もちろん、筆者にもよくこの手の話しが舞い込んできます。給与は組織が決めることだから仕方ない、と割り切ってしまうこともできますが、筆者はもう少し丁寧に対応するようにしています。まず、給与が低いと言ってくる人に「では、いくら上げたいのか?」と尋ねると、ほとんどの人は明確な金額が返ってきません。低いとは思っていても、自分の働きがいくらの価値に相当するのか、いくら上げると満足なのか、といったところまで深く考えずに不満を口にしている人が多いです

 

さらに、たとえ給与が上がっても、満足するかといえばそうでもなく、しばらくするとまた低いと思ったり、上がった給与が当たり前と思ったりして 、仕事のパフォーマンスが上がるわけでもないことが多いでしょう。このことは、心理学者フレデリック・ハーズバーグが1959年に提唱した二要因理論でも証明されています。

 

職務満足に影響を与える要因を「衛生要因」と「動機付け要因」の2つに分類し、給与は衛生要因に含まれます。これらは主に仕事の環境に関連する要素で、欠如すると不満を引き起こしますが、充足しても特に満足にはつながりにくいということが分かっています。ハーズバーグの研究は古いですが、その後もいろいろな地域や時代を経ても同じような結果になることが明らかになっています。

 

だからといって、低賃金で働かせるべきと主張したいのではなく、給与を上げることが満足につながらないことを理解しないとなりません。職員の満足度を上げる方法は賃上げではなく、別の方法を取るべきだといえます。そうした取り組みの事例は以下の記事で取り上げているので参考にしてください

【現役病院事務長が語る 病院で現在行っている人事評価制度とその理由】

 

 

ハーズバーグの二要因理論

(「How do you motivate your employees?(邦題:モチベーションとは何か?)」にて紹介) 図版編集部作成

 

2.具体的にどのくらい給与が欲しいのか

さて、話を戻して「給与が低い!」と言ってきたら、「では、いくら欲しいの?」と聞いて、具体的な金額が出てこない場合が多いので、こちらから提案するようにしています。選択肢は①月額数千円、②月額数万円、③給与倍増、④年収1千万円超です。それぞれ、具体的な方法も示します。

  

 

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