編集部より

病院の現役事務長藤井将志さんが、クリニック(診療所)での人材育成と、離職防止について解説します。病院と比べて規模が小さいクリニックでは、どのような点に注意しなければいけないのでしょうか。

 

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

マネジメントを学んでない院長がクリニック(診療所)経営をする

全国の医療施設数は減少傾向であるが、唯一、クリニックつまり診療所(無床)は増加しています。直近の調査結果だと、年間に300件近く増えているようです(図表参照)。周知の通り、診療所はそれほど大きな事業規模ではなく、一施設あたりの職員数は7.6人程度となっています。院長がリーダーとなりまとめるには、ちょうどいい人数ですが、少人数であるがゆえ、うまくチームビルディングをしないと一瞬で崩壊してしまいかねません。

 

病院規模になると事務長といった、経営全般を管理する役職を配置しますが、診療所ではその機能を院長自身が担ったり、家族である院長の配偶者が事務長の役割であったりします。このような特徴のある組織で、どうすれば人材が育ち、離職せずに定着するのか考えていきます。

 

  

図表1診療所の施設数推移

図表1:診療所の施設数推移

出典:厚生労働省「医療施設調査(令和4年10月)」

  

たかが10人くらいのチームですが、ひとつの事業を行うわけで、医療だけでなく「経営」をしていかなくてはなりません。大企業だと、昇進する都度、リーダーシップ研修等に参加し部下をマネジメントすることを学んでいきます。もちろん、研修だけでスキルが身に付くわけではなく、日々の実践を通しながら、マネージャーとして育っていきます。

  

医師も研修医を終了して、一医局員として働き始め、医局長や診療部長などを経験していきますが、一般企業のようなマネジメント研修があることは少なく、臨床家として評価される人材が役職者についていくことが多いでしょう。先輩も同じように育ってきたので、よほど興味がある人でないと、マネジメントや経営について学んでいません。そのような背景がある人材が、病院という組織を卒業して診療所の経営者として独立していきます。

  

どんな経営スタイルをめざしているのか

経営のスタイルには「正解」は無いと思っています。トヨタの経営、フォルクスワーゲンの経営、メルセデスベンツの経営のどの経営が最も良いか、は誰も答えられないでしょう。顧客や従業員、株主、その他のステークホルダーといった立場によっても、評価が変わるでしょう。医療機関の経営も同じで、トップリーダーの考え方で経営のスタイルは変わってきます。逆に言うと、経営のスタイルが決まっていないと、チーム内に矛盾が生じてしまいます。まずはどのような経営をしたいのか、リーダーである院長がしっかりと考えなければなりません。

  

「経営」とひと言でいっても、規模はどうするか、利益はどうするか、患者数はどのくらいか、人材管理はどうするか、設備はどうする等、考えることは無数にあります。

 

例えば、リーダーシップのあり方について、考えてみます。

 

 

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