2019.05.08
3

AIによる診断支援システム、今夏にも公開―日本内科学会

メディカルサポネット 編集部からのコメント

4月26日から28日にかけて、第116回日本内科学会総会が開催され、26日にはAIが内科医の診断支援にどのような形で有用なものとなりうるのか、システム開発の内容を中心にした緊急特別講演が開催されました。鑑別疾患のリストを提示するシステムは専門病院、中核病院、研修病院での活用を目指しています。その一方で、医師のスペシャリスト化が顕著な状況の中、ゼネラリストな内科医の必要性を訴えました。

 

自治医大の永井良三学長は4月26日、愛知県で開催された第116回日本内科学会総会・講演会で緊急講演「日本内科学会地方会症例報告を用いたAIによる診断支援システムの開発」を行った。同学会地方会で発表された症例報告を基に、鑑別疾患リストを提示するシステムを開発したことを明らかにした。今夏にも同学会ホームページで学会員向けに簡易版を公開する予定。学会員は無料で利用できるという。年内には製品化も目指すとしている。

 

同学会は2009年に「高速類似症例検索システム」を開発。02年より同学会地方会で報告された5万5000症例が登録されており、病名やキーワード、年齢、性別などから類似症例を検索することが可能となっている。

  

永井氏らは、症例テキストを因果関係などが明確に示されるよう構造化。キーワードを入力すると鑑別疾患のリストが提示されるシステムを開発したという。これまでに6500症例で構造化の作業を終えており、「1万例に近いところまでクリーニングし、リリースしたい」としている。

 

地方会の症例報告では稀な症例を集めていることから、システムの使い方について永井氏は、「専門病院、中核病院、研修病院で参考にしていただきたい」との考えを示した。

 

構造化されたテキストを基に鑑別疾患のリストを提示するシステムはこれまで存在しなかったため、開発に関わった同学会、自治医大、東大は特許を取得したという。しかし現在は、構造化を手作業で行っていることから、症例テキストの自動構造化が今後の課題だとした。

 

近年の医学について永井氏は、情報量の増加により専門分化が進み、医師は狭い領域しか診療できなくなっているとして問題視。「やむを得ない面もあるが、本来の内科学の在り方では決してない」と指摘し、開発した診断支援システムの使用によって、「もう一度広い裾野を持った内科医を育てることができるのではないか」と期待を寄せた。

 

症例テキストについて永井氏は、自身で約5000症例の校正や用語統一を行ったという

 

出典:日本医事新報社

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP