2020.03.12
5

参加者が笑顔に!多職種連携ポジティブ検討会【後編】

多職種連携ものがたりvol.4

在宅医療をはじめ、チーム医療を円滑に進めるために、多職種連携は欠かせないものとなっています。しかし、「連携」と一言で言っても、職場も職種も対象者への視点も異なる人たちがどのように連携をはかり、ケア実践へとつなげているかはケースによって様々です。日々開催される多種多様な会議の中で、各医療職者および利用者・家族との間でどのようなやりとりが繰り広げられているのか、また会議の雰囲気、その後の連携方法について、詳細を知る機会は多くありません。本連載では、多職種連携の実情について、さまざまなケースを紹介し、リアルな姿に迫ります。

取材・撮影・編集/高山 真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会【後編】

  

【前編】に続き、『多職種連携ポジティブ検討会』の様子をお届けします。回復期リハビリテーション病院を退院し、施設入所までの1ヵ月間限定で在宅療養を開始した三浦さん(仮名)。「なんで口から食べられないの?」というご家族の言葉に動かされケアマネジャーが奔走し、医療チームを結成。日に日に良くなるご本人の様子や、日々介入する医療者の姿にご家族は介護への自信を持ち、重大な決断をされます。

 

なお、こちらの一覧表をご覧いただきながら読み進めていただくと、検討会の内容がより把握いただけます。 

  

訪問歯科の介入で実現した「口から食べる」

岩本さん(以下、岩本):訪問歯科では最初の評価についてどのようなことをやるのでしょうか。

 

齋藤歯科医師:脳梗塞と聞いていたので、麻痺がどの程度か確認するために、口を動かしていただきましたが、そんなに大きな麻痺はないこと、舌もある程度しっかり動いていることがわかりました。他には水飲みテストもやりました。これは実際にお水を飲んでもらうテストですが、少し残りはしたものの、しっかり飲めていました。その後、通常より少し多めの5mlくらいのお水を飲んでもらったときにどうなるかを確認しました。この後ちょっとむせるんですけど、ここで「誤嚥したらむせる」と確認できたので、誤嚥したか見た目でわかるということですね。最も怖いのは不顕性誤嚥ですから、どこまでがOKでどこから先がだめなのかという線引きが初回の診察でできました。そこがわかったので、あとはそのラインを徐々にあげていけばいいという方針がたちました。

 

多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会 ~“当たり前”を覆す「本人参加型」&事前準備・配布資料なしの即興事例検討会開催!~

三浦さんの嚥下評価について、当時の動画を見ながら説明する齋藤歯科医師(DDr)

 

岩本:おうちでここまで専門的に看てくださるわけですね。

   石永先生(Dr)は週1回の診察でしたが、採血データなど経過はどうでしたか?

 

石永医師:アルブミン3.8なので悪くないんですよ。その他のデータもほとんど大丈夫でしたね。

 

岩本:内科的な所見としてはそんなに問題ないと。在宅療養を開始して2ヵ月、3ヵ月とたって、訪問看護では最初にスタートした看護計画を続けていたんですか?それとも少しずつ変わっていったのでしょうか?

 

増田看護師:自宅で食事をするにあたって、まず安全性を担保するためにとろみのつけ方をご家族と一緒に検討しました。何をどれくらい使ったらよいのか、サンプルを取り寄せて、三浦さんに適したものはこれだろうと決めていきました。

 

岩本:なぜそういうことを始めたのですか?

 

増田看護師:「うどんの汁が飲みたい」という三浦さんのご希望がありましたが、病院では訓練レベルでしか水分摂取していませんでした。この希望を叶えるために、うどんの汁にもトロミをつけやすいものを調べました。

 

岩本:ちなみにうどんの汁はトロミ材をつけにくいのでしょうか?

 

増田看護師:品質によってはつけにくいものもあります。

 

岩本:ということはうどんの汁が飲みたいといっても、ちゃんとトロミがつくものを選択しないといけない。ご家族と三浦さんと一緒に、これがいいんじゃないかと試しながら進めたわけですね。ちなみにこの時は他の多職種の方と連携されましたか?

 

増田看護師:牛山さん(ST)には、デイサービスでの評価を電話で教えていただいたり、江沢さん(CM)から齋藤先生(DDr)の評価をいただいていましたので、それらをもとに看護計画を検討していきました。

 

多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会 ~“当たり前”を覆す「本人参加型」&事前準備・配布資料なしの即興事例検討会開催!~

三浦さんの「うどんの汁が飲みたい」を叶えるためさまざまな取り組みを実践した増田看護師(Ns)

 

岩本:牛山さん(ST)は齋藤先生(DDr)をはじめ各職種との連携はされましたか?

 

うしやま:直接は顔を合わせた方はいませんが、増田さん(Ns)や江沢さん(CM)から情報をいただいていました。

衝撃の”お煎餅事件”

岩本:それぞれどうやっているのかはなんとなく知りながら、自分たちはこういうことをやっていこうという進め方ですね。これが2~3月でした。ちなみに何か状況が大きく変わった、つまりだんだん食べられる量が増えてきたというのはだいたいいつくらいからですか? 

POINT

娘さん:私たちにとってすごく衝撃的なことがありました。確か3月になってから、嚥下食の「あいーと®」を始めて2回目だったと思うんですけど、齋藤先生(DDr)が診察に来られた時「お煎餅ありますか?あれば食べてみましょう」と聞かれて「えっ、お煎餅食べるんですか?」と衝撃を受けました。

三浦さん:「好きなものを教えてください」と先生から聞かれたので、「煎餅とあられが欲しい」と伝えました。それで、小さいかけらの煎餅を口に入れて噛んでみましたが、とても口の中によく合いまして、ばらつかないで口にまとまって、つばと混ざり合うようになりましてね。うまく食べられました。

 

岩本:三浦さん、嚥下について専門家みたいにとても詳しい表現ですね(笑)。それはすごく衝撃でしたよね。ちなみにお煎餅はどうやって食べるんですか。お煎餅というと結構固いし、口の中でまとまるのかなって。誤嚥をさせたくないですし、誤嚥性肺炎はできるだけ避けたい。でも攻めたケアをしたい時に「お煎餅」という選択肢はいいだろうかと僕らは思ってしまうのですが・・・。

 

齋藤歯科医師:事前にVE検査(嚥下内視鏡検査:内視鏡を喉に入れ、食物の飲み込みを観察する)をして喉の状態を確認して麻痺がないことがわかっていました。他にもいろいろ食べてみて、口腔内に残留が多く、噛んだ後うまく食べものをまとめられず残ってしまう状況だったので、そこを改善する必要がありました。最初にお煎餅を食べる選択をしたのは、食べたいものを食べてほしいという意図の他に、食べものをまとめたり噛んだりする練習の訓練の一環としてスタートしました。

 

岩本:お煎餅は練習に適しているんですね。

 

齋藤歯科医師:三浦さんの場合、それまでに例えば大根やあいーと®などいろいろなものを食べていたので、普通のお煎餅から始めましが、通常は赤ちゃん煎餅から始めます。

 

岩本:STさんや看護師たちもびっくりしましたか?

 

ST:はい。

 

坂本看護師:最初、お煎餅と聞いて・・・戸惑いました(苦笑)。お煎餅ってなかなか噛めないですよね。

 

岩本:三浦さんにとっても、ご家族にとっても衝撃的ですよね。

 

娘さん:その前は看護師さんが来たときに一緒にあいーと®の食事を食べる練習はしていたんですけど、それはみんな柔らかいものだから飲み込みやすいと思っていたのに、私にとっては柔らかくないお煎餅を提案されたものですからちょっと怖かったんですけど、先生に大丈夫だと言われて。

 

岩本:この時に嚥下以外でアプローチしていることはありましたか?

 

坂本看護師:リスクとして看護サイドであがっていたのが、誤嚥性肺炎ですが、その他にも再度脳梗塞を起こすリスクや、血尿が出るようになったので出血や貧血のリスクがあることで、どういう時に病院に搬送するのか、どこまでだったら家で過ごせるのかということを考えて、ご本人・ご家族と検討を重ねました。それとはまた別に、老衰で徐々に徐々に悪くなっていったときにどういう状態だったら家で過ごすのか、ということも一緒に話し合いながら検討しました。


多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会 ~“当たり前”を覆す「本人参加型」&事前準備・配布資料なしの即興事例検討会開催!~

時間とともに参加者が増え続け会場内は満員御礼

 

自然に話し合われた「アドバンス・ケア・プランニング」

POINT

岩本:いろいろな変化が起こる可能性があるから、そういう時、三浦さんは何を大事に過ごして、これからどこで過ごしたいのかということを、ご本人と確認しながら、ましてやそういう時にはどうするのが方針としていいのかを考えていったわけです。これは厚生労働省が推奨する「人生会議」、あるいは「アドバンス・ケア・プランニング」とかと言えると思うんですけど、そういうプロセスがここであったんですね。ご家族が一生懸命介護されているイメージありますが、疲れちゃったなとか、しんどいなという時はなかったですか?

 

娘さん:私たち3人姉妹なので、交替でやっていたのがよかったのかもしれません。

 

岩本:江沢さん(CM)が「このご家族はスゴイ!」って言っているくらい、3人でうまく回していらっしゃったのでパワーがすごいですね。

 

娘さん:1ヵ月間自宅で過ごして、これだけたくさんの人たちが動いてくれて、目に見えて父がよくなってきたので、「施設に行くべきじゃない」ということが最初の頃にわかりました。

 

岩本:最初の方針は「1ヵ月間だけ在宅で3月から施設入所」ということでしたね。

 

娘さん:持病がある母は介護することができないので、母の方から強く「施設に」という要望があったんです。私たちが交替でみればなんとかなるだろうと思っていたものの、実際やれるかどうか自信がありませんでした。経管栄養もやらなきゃいけない、食べさせる練習どうしようと不安ばかりで。でも、デイサービスのみなさんや訪問看護師さんに教えてもらって先生方にもよくみていただいているんだから、やっていけそうだという思いになりました。

 

岩本:考えが変わるのに1ヵ月って短いですよね。

 

娘さん:病院にいるときと全然違うことが1ヵ月の間でよく見えたので、施設入所はお断りしました。

 

岩本:「3月には入る」という話がどこで変わったのでしょうか?

 

娘さん:確か2月9日に施設から「空きましたからどうぞ」という連絡が来ましたが、もうその時には自宅で過ごすことを決めていました。

 

岩本:退院して10日で施設から「空きましたよ」と言われたけど、「いや、いいです」と断った。すごいですよね。施設に入ろうと思ってもなかなか難しいことも多いので、断るのは勇気や大きな決断があると思うんですけど。

  

江沢CM:ただ、1ヵ月の滞在のために階段の手すり設置等の住宅改修をしていました。通常、1ヵ月だけの在宅療養の場合、改修をしない選択をするご家庭が多いですが、「1ヵ月でも何かあったら大変」と住宅改修をやってくださって、さらにお願いした業者さんもものすごく早いスピードでやっていただきました。

 

在宅療養継続の決断とチームで実現した経管栄養からの卒業

岩本:退院後、もともとの予定だった「有料老人ホームに行く」という方針を変えて、在宅で介護する決断をされました。その決断が最初の10日間の多職種とのやりとりで決まっていたんですね。この時点で「家で過ごせたほうがいい」と考えに変化したので、ターニングポイントがここだったのではないでしょうか。そこからあいーと®を食べたり、多職種で連携しながら関わってリスクが顕在化しないようにしつつ、顕在化したら今後どのように過ごしていこうかということも一緒に考えながら進めていったわけですが、経管栄養の管がとれたタイミングはいつでしたか?

  

石永医師:5月17日でした。もともとは交換の予定でとるつもりはありませんでしたが、抜いてみてどれ位食べられるか見ようということになって。

 

坂本看護師:交換のタイミングで1回抜くので、そこですぐに新しいものを入れず、ちょうどお昼ごはんの時間だったので食べていただきました。

 

岩本:なぜそういう話になったのでしょう?

 

坂本看護師:なんか…いけそうだねって。

 

齋藤歯科医師:その時にはお煎餅以外にもいろいろなものを食べていました。

 

岩本:またどんどん変化していたんですね。

 

石永医師:ある日のメニューが、白米、おそば、温泉卵、おくらとあります。

 

POINT

岩本:僕のお昼ご飯と同じくらいですね(笑)。3月中旬くらいに“お煎餅の衝撃”があって、そこから1ヵ月半くらいはいろいろなものを食べていったと。5月17日に1回抜いて、食べたり飲んだりしてみて、「経管栄養なしでいけるかどうか試してみよう」という提案が看護師からあり、先生もそれに同意してくださったわけですね。

 

石永医師:それまでにいろいろな食事の写真をもらっていたのでいけると思いました。

 

娘さん:父は石永先生(Dr)の前で食事をしたことがなかったので、この時初めて先生は父が食べるところを見たのに「外しちゃっていいですよ」と言われたので、びっくりして。「情報共有しているから大丈夫だよ」、「齋藤先生(DDr)にも確認したから取ってもいいよ」と言われたんですけど、「え、ほんとにいいの?」とびっくりでした。

 

岩本:そうですよね。ご家族からしたら石永先生(Dr)はごはんを食べているところを見ていないのに、「食べちゃっていいよ」と言われたら「え?いいの?」と思いますよね。でも、後ろでこれだけ多職種で連携していましたし、現場でずっと関わっていた人が言っているから石永先生(Dr)も「これはいける」とわかっていたんですね。ちなみにご家族に伺いたいのですが、このチームがそれだけ綿密に連携しているってご存知でしたか?

 

娘さん:いや、だから驚いたんですよ。「齋藤先生(DDr)に聞かなくて良いんですか?」って。 みなさんのチームワークのおかげということを本当に実感しました。

 

岩本:そこでそういう連携があることも知ったわけですね。

 

食事形態の変化と共に変化するリスク

齋藤歯科医師:だんだん普通のごはんが食べられるようになってくると、誤嚥の心配がなくなる代わりに食べた後消化できているか、排泄できているかなどが心配だったので、石永先生(Dr)と情報共有しながら進めました。「また食事形態が上がったので体調に変化があったら教えてください」といった話をしていました。

 

岩本:ごはんの飲み込みができるようになるからこそ出てくる排泄や消化、あるいは吸収の問題については、石永先生(Dr)と連携していかなければならない部分ですね。

 

多職種連携vol.4後編

ファシリテーターである岩本さんの上手な場づくりで事例の理解が深まっていく

 

齋藤歯科医師:食べていないということは消化器官も動かしてないし、排泄器官も使っていないことになるので。

 

岩本:石永先生(Dr)は交換のタイミングでいったん抜いて食べてもらおうと?

 

坂本看護師:「どうしようかな」と再挿入をそこで1回迷って。これだけ食べられているんだったら、再挿入しなくても良いんじゃないかと。訪問看護が週2回入っているので、その間に食事などの経口摂取量が落ちたり、脱水などの症状があったら連絡しますねと、その時は再挿入を検討しましょうということになりました。ご家族には負担を増やしてしまいましたが、1週間毎回食事の写真を撮って送っていただきました。

 

岩本:抜いちゃったわけですね。この時の現場判断で、もちろんいいということをわかった上で、齋藤先生(DDr)はいつ聞いたのでしょうか?

 

齋藤歯科医師:その時に石永先生(Dr)から電話いただきました。すでに普通食に近いご飯は食べられていて、あとは量や消化吸収・排泄の問題だったので、「やってみてダメだったらまた入れましょう」と石永先生(Dr)がおっしゃってくださいました。

 

在宅での栄養士の介入は“どう生きていくか”につながる

岩本:管理栄養士である矢治さんの介入はこの頃からだと思いますが、介入するに至った経緯は?

 

矢治管理栄養士:ケアマネジャーの江沢さんから「経管栄養を抜いて経口摂取になった方が、体重減少と食べる量が心配なので介入をお願いしたい」というご依頼をいただいてお伺いしました。

 

岩本:完全経口摂取になったので、好きなものは食べられるけれどもカロリーやタンパク質など栄養が保てるのかという心配もあって、江沢さん(CM)が専門家をプラスすべきだと判断して矢治さん(RD)が合流されました。最初どんな印象でしたか?

 

矢治管理栄養士:ご家族が熱い思いを抱えていらっしゃると同時に、ご本人が食べることをすごく楽しんでいらっしゃると感じたことが一番大きかったです。その中で「落ちてしまった体重を戻したい」という思いがご家族から聞かれたので、ここは何か補助食品などの工夫が必要なのかなと感じていました。

 

岩本:矢治さん(RD)としたら経口で食べているものの、どういう気持ちなのか、どういう目標があるのかというご家族やご本人の想いを受け止めて、それに合わせて食事の内容、あるいはメニューや商品を紹介したりするんですか?

 

POINT

矢治管理栄養士:すごく私も悩んだケースで、栄養量を充足させることが果たしてその人にとって100%良いことなのか否かというところは正直、人によって違うので、三浦さんに関しては多分100%充足させることは、たぶんそこまで重要ではなかったと感じています。ご本人としては周りからの「食べて」という思いに応えなくちゃいけないということにすごく葛藤されていたと思いますし、一方でご家族としては三浦さんのことをとても心配されていました。その中でご本人と周りとで目指すべき栄養の終着点が最初から違ったんですよね。そこをどうやっていいところに折り合いをつけていくかが非常に難しいなと思いました。

 

多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会 ~“当たり前”を覆す「本人参加型」&事前準備・配布資料なしの即興事例検討会開催!~

矢治さんの振り返りによって、在宅で管理栄養士が介入する意義の大きさを全員が共有した

 

岩本:管理栄養士さんが在宅ケアの領域でどういう仕事をされているのか、ちょっとイメージしづらさが一般的にあるのかなと思っているんですけど、栄養相談を受けて必要な栄養素、メニュー、商品について提案することだけではないんですね。「栄養=食べること」で、「食べることはどう生きていくか」ということにつながってくるので、そこに対する思いとか、ご本人やご家族それぞれお互いを思いやっていて、でもちょっとギャップがあったりするところにまで介入をしている。一緒に相談をしていく、つないでいく、そういう仕事もされているんですね。

 

矢治管理栄養士:どちらかというと在宅ではそちらの関わりが多いですね。

 

岩本:在宅での管理栄養士さんの仕事についてイメージが変わりましたね。今、訪問看護ではどんなことに取り組んでいるんですか?

 

増田看護師:誤嚥性肺炎おこしてないかといった体調面の管理を継続しています。今後、「経過栄養を入れない」という選択をされたので、その意思の再度確認をさせていただいて、何かあっても経過栄養とかそのほか何か大きな治療とかよりも、できるだけ家で過ごしたり食べたりしたいということを再確認したり、それを石永先生(Dr)をはじめ多職種で今の方針を共有しています。

 

次なる目標に向けて人生を歩み続ける

齋藤歯科医師:普通食まで食べられるようになったので、その後は僕は何かあったら介入するスタンスです。

 

岩本:ここまでくればだんだん介入も減ってきますよね。徐々に自立していって次のフェーズに移っているので、トータルの介入頻度が減っていっているんですね。このケースはとても成功例なイメージなんですけど、これからこうしたいとか、こういうことを取り組みたいと思っていることがもしあればお願いします。

 

娘さん:1年たって、今の状態がすごく安定していて、昔みたいに自分で好きなように1人で出歩くことが今はできませんが、本人にしてはやりたい思いがあるようです。

 

岩本:次の目標ができたんですね。

 

娘さん:家族としては、ごはん・味噌汁・パンなどの自分が食べたいものが少量でも食べられるようになったことは大きな変化ですね。それから自分でトイレに行くことができる。そういう普段やっている生活を取り戻せたことが、自信にもなっています。今後はこの生活を維持できたらいいですね。欲を言えば自分で散歩位は行きたいだろうと思うんですけど、どうでしょうお父さん。

 

三浦さん:みなさんのおかげで元気になり感謝しています。1つ困っていることは毎日の食事のことなんですが、米・ごはん、これがどうも苦手になってきました。ごはんを口に運びますとごはんが口の中に広がってしまいまして、よく噛むということができない。ですから少量ずつで良く噛む、30回から50回くらい噛むんですが、頑張ってはいるんですが。それがおいしく食べられるようになればしめたもんだと私は思っています。いろいろとありがとうございました。

 

多職種連携ものがたり vol.4 多職種連携ポジティブ検討会 ~“当たり前”を覆す「本人参加型」&事前準備・配布資料なしの即興事例検討会開催!~

三浦さん、娘さん、介入した医療者が勢揃い。この笑顔が事例成功の証だ

   

 

<ご本人参加型のポジティブ検討会開催の振り返り>

ウィル訪問看護ステーション江戸川所長 岩本 大希さん

事例検討は、個々のプロセスを振り返り、関わった人の実践をその後より向上していくことが基本の目的だと思います。ふと「ケアを受けている当事者不在で、ケア提供者だけで事例検討することに本当に価値があるのだろうか?当事者のフィードバックなくして我々はより良いケアを追求できるのだろうか?勝手に検討して勝手に満足して、自己満足になってはいないだろうか?」と思うことがありました。もちろん当事者がいない事例検討にも意味はあるだろうし、全てがそうとは思いません。

でも「person centered careを!」とか、「患者主体の看護を!」とか叫ぶわりには、ぼくたちは対象者から直接フィードバックを受ける機会が少なすぎるのではないだろうか?と思いました。試しに始めてみたこの取り組みは、実際に関わったケア提供者と本人家族に相互作用を起こし、更に参加してくださった方々みんなに独特の盛り上がりや刺激を生む結果となりました。本人中心のケアとチーム作りが大切と言われる昨今、当事者参加を当たり前にしていくことの一歩になると嬉しいなあと思いました。ぜひみなさんも、出来そうなケースで試しにやってみてください。  


      

パワフルな手腕でチームを牽引したケアマネジャーの江沢さん(左)とファシリテーターを務めたウィル訪問看護ステーションの岩本さん

   

<取材を終えて>

「楽しくて考えたくなる」。事例検討会でこんな気持ちになったのは看護師人生で初めてのことでした。そして、当事者である利用者さんとそのご家族もその場にいて一緒に振り返る、こんな当たり前のことが斬新に感じられたことで、これまでの事例検討会の在り方を考えさせられる時間でもありました。この「ポジティブ事例検討会」がもっと広がり、多くの医療者がケースをポジティブに振り返られるようになると、さらに在宅療養の実践知は高まり医療者のスキルも向上し、利用者さんに還元できると感じました。

    

ウィル訪問看護ステーションに関する記事はこちらから

 

「多職種連携ものがたり」の記事一覧はこちらから

    

WyL株式会社 ウィル訪問看護ステーション

住所:東京都江戸川区中央4-11ー8
   アルカディア親水公園ビル地下1階(ウィル訪問看護ステーション江戸川)

TEL:03-5678-6522(ウィル訪問看護ステーション江戸川)

URL:https://www.wyl.co.jp/

看取り、がん、難病、生活保護、認知症独居、小児、精神など、困難なケースも含めて誠心誠意対応している24時間・365日対応の訪問看護ステーション。東京都江戸川区と江東区で事業所を運営するほか、いわゆるフランチャイズ展開にも力を入れており、沖縄県と岩手県にものれん分けした事業所が存在する。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP