2021.01.28
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実録・新型コロナウイルス感染症に立ち向かう医療現場【前編】

東京女子医科大学病院のCOVID-19対応を振り返る

編集部より

2020年に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、医療現場にも大きな影響を及ぼしました。いまだ収束のめどが立たないこのウイルスをめぐって、私たちは何を学び、今後に生かしていけばいいのでしょうか。ここでは、東京女子医科大学病院でCOVID-19に立ち向かい続ける7人の看護師の皆さんにインタビューし、感染拡大当初から現在に至るまでの対応について伺います。

    

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)

写真提供/東京女子医科大学

編集/メディカルサポネット編集部    

 

新型コロナウイルス感染症対策の中心的メンバーとなった看護部長と感染制御部の皆さま

(写真左から原 光寛氏、富安 純子氏、白石 和子氏、丹呉 恵理氏)

 

【参加者プロフィール】(敬省略)

白石 和子(副院長、看護部長)

丹呉 恵理(感染管理認定看護師、看護師主任、総合感染症・感染制御部所属)

原 光寛(感染症看護専門看護師、総合感染症・感染制御部所属)

富安 純子(感染管理認定看護師、感染管理エキスパートナース、総合感染症・感染制御部所属)

座間 直子(糖尿病センター5階・COVID-19病棟師長)

中村 邦子(救急看護認定看護師、ICU・救命救急センター師長)

後藤 浩子(外来師長)

 

※本記事は、以下の「東京女子医科大学病院 新型コロナウイルス感染症との闘い時系列」を参照いただきながらお読みいただくことをお勧めいたします。 

 

東京女子医科大学病院 新型コロナウイル感染症との闘い時系列

 

■スタッフを含めて「1人の感染者も出さない」が目標

 

――貴院がCOVID-19対応に乗り出したタイミングと、そのときの様子を教えてください。

 



丹呉:日本で最初の感染者が確認された2日後の2020年1月17日、当院としての基本対応方針をまとめ、厚生労働省や国立感染症研究所の資料も添付して、院内各部署へ情報を周知しました。まずは外来の患者さんをトリアージすることが最重要だったので、敷地内の屋外にテントを張って看護師を配置しました(その後、夏の暑さ対策もあって別棟に移動)。また、救急車で運ばれて来る方については、救命救急センターと打ち合わせながらフローを調整し、少しずつトリアージの動きを固めていったイメージです。こうした具体的な対応方法は、私たち総合感染症・感染制御部(以下、感染制御部)所属の医師や看護師が中心となって検討していきました。

 

白石:2月からは、病院長病院管理者、各診療部長、感染制御部、看護師長などを集めて、毎朝のように「新型コロナウイルス感染症患者対応会議」(以下、コロナ会議)を実施するようになりました。そのころは、政府がアナウンスする情報も日々変わっていくような状況で、「今、何が起こっているのか?」「何をどうやって病院内に周知徹底・注意喚起するか?」を常に考える必要がありました。そのときに得られる最新の情報を共有・検討する機会として、コロナ会議は重要な役割を果たしていたのです。当院のトップ層が意識していたのは、患者さんはもちろん、スタッフを必ず守るということ。「1人の感染者も出さない」という力強いビジョンを掲げ、現場にも伝えていきました。

 

 

 

 



:当時は、理論的な裏付けが不十分なデータや、中には「デマ」と呼べるような情報も大量に混じっている状態だったので、新しい情報を右から左へ流すだけでは現場が混乱してしまいます。そのため、各分野の専門家の力を生かしながら、伝えるべき情報かどうかを精査してから伝えるようにしていました。また、ただ事実だけを周知するのではなく、「〇〇だから△△してほしい」というように、具体的な行動に落とし込むことも意識していました。

 

■3月ごろには心身の疲労感がピークに

 

――発熱を訴える患者さんなどに最前線で対応してきた外来や救命救急センターは、当時、どんな状況でしたか。

 

 

 

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