2021.03.25
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「新卒訪問看護師」を支える教育システムとは?【後編】

~「共育」システムの構築が可能にした新卒訪問看護師育成~
編集部より

「訪問看護はベテランナースにしかできない」という考えは根強く、若手看護師にとってはハードルが高い業界の1つとなっています。在宅医療の需要の高まりや、訪問看護師の絶対数の不足、年齢層の高さといった理由から、若い世代における訪問看護の担い手を増やすことは国としての課題ともいえます。ケアプロ訪問看護ステーション東京(中野区・足立区)は、教育システムを充実させながら新卒を含めた若手看護師を積極的に採用してきました。【後編】では、人材育成を担う岡田理沙さん、金坂宇将さんのお2人に、看護師育成にかける思いや教育制度について、伺いました。

 

取材・文/河村 武志(ナレッジリング)

撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)

編集/メディカルサポネット編集部 

【前編】はこちら

 

教育担当者インタビュー①

オーダーメイド式の学びで新人看護師を育てる

岡田理沙さん(ケアプロ訪問看護ステーション東京 在宅医療事業部 看護室室長)

 

 

訪問看護業界で課題となっている人材不足解消のためには、若い看護師でも積極的に訪問看護にチャレンジできる環境を整えることが欠かせない――。こう考えた私たちは、2013年から新卒採用をスタートさせました。

 

その第1号となった看護師は、「新人として何を、どんな方法で学ぶべきか」を一緒に検討してくれるような、気概に満ちた人物でした。最初の数か月は手探り状態でしたが、夏ごろから「毎回、訪問時に何を学ぶか意識する」「1人ひとりの利用者の理解を深めながら学ぶ」など、当社の新人教育の基本的なコンセプトが固まっていきました。

 

そうした取り組みの中で生まれたのが、スモールステップのOJT。具体的には、「見学」「一部実施」「一連実施」といったステップを踏み、回を追うごとにできるケアを増やしていくイメージです。その上で、毎回の訪問に対して明確な目標を持たせ、訪問後は必ず振り返りを行うことを徹底しています。最初は状態が安定している維持期の利用者さんから始め、業務に慣れてきたら新たな知識や技術が求められる利用者さんを訪問してもらうよう調整しています。その看護師にとって必要な学びを組み合わせた、いわばオーダーメイド式の教育システムだということです。

 

もちろん新卒以外にも、幅広い年齢層やバックグラウンドの看護師が入職してきます。そこで当社では、オリジナルのラダー制度を設け、各人の「できること/できないこと」を明確化しています。一般的に病院で用いられるラダーと比べてもかなり細かい区分になっており、人事評価の参考にもしています。「夜間待機」「退院調整」「新規契約」は特に重要な項目で、こうしたスキルの習得を促す意味もあります。

 

訪問看護では、いわゆる病院での教育と比べて「学びの順番が異なる」ことも意識すべきでしょう。例えば、病院ではリーダークラスになってから担当することが多い患者さん・ご家族への説明や、多職種連携などの外部調整なども、当社では1年目から取り組んでもらいます。また、在宅では呼吸器領域のケアが多いこともあり、しばしばクリティカルな手技も必要とされます。こうした違いも意識しながら、個別性・柔軟性のある教育システムを整えることが、若手看護師の応援につながると考えています。

 

 

 

教育担当者インタビュー②

「共育」の風土を生かし、新人の戦力化を促進

金坂宇将さん(ケアプロ訪問看護ステーション東京 ケアプロ在宅支援センター東京 在宅医療事業部 事業部長)

 

 

ケアプロは「24時間365日絶えず質の高いサービスを提供し、利用者が求める多様な生活を実現する」というビジョンを掲げており、年末年始や土日祝日でも訪問を行っています。それを可能とするためには安定的な人材の確保・育成が必要であり、だからこそ新卒を含めた若手看護師の採用活動には力を注いできました。2013年から毎年2~3人の新卒看護師を採用しており、2020年末時点で累計14人に上っています。看護師全体の平均年齢は30歳代前後で、かなり若い組織だといえるでしょう。

 

新卒看護師の採用活動においては、当社のビジョンや業務内容に加えて、「新卒で訪問看護に挑戦する意義」を強くアピールしています。このときに重要なのが、看護学生のみならず、看護教員の皆さんにも積極的に働きかけること。というのも、「新卒で訪問看護は難しい」という意識を持つ先生方はまだまだ多く、そうした方々の意識改革を促すことが看護学生の進路選択にも大きく影響するからです。

 

 

また、採用した人材を育成する際には、企業風土も大きく影響すると思います。ケアプロには、「教育する人もされる人も対等であり、共に育て合う存在である」という考えに基づいた「共育」という組織風土があります。立場が上の指導者が一方的に教えるのではなく、互いにアウトプットする中で学び合い、共に利用者さんを支えるプロフェッショナルとして議論を交わすことが大切です。

 

そうした雰囲気作りをするため、入職して半年~1年ほどたった看護師は「ベーシック教育研修」を受け、若手のうちから指導側に立つことを意識してもらいます。さらに、教えられる側が「待ち」の姿勢になることのないよう、OJTで使用する振り返りシートに「その日の訪問でどんな課題に取り組みたいか」といった点を書き込む欄を設けるなど工夫しています。

 

かつて、訪問看護において新卒採用は「ムリ」なことであり、「タブー」というような雰囲気さえありました。しかし、今や業界内の空気も大きく変わり、むしろ積極的に取り組むべきこととされています。これからの時代、「訪問看護師の新卒採用は当たり前」であり、より良い育成方法やキャリアパスの可能性といった点を業界全体で真剣に考えていく必要があるでしょう。

 

 
ケアプロ訪問看護ステーション東京 足立ステーション

ケアプロ訪問看護ステーション東京
足立ステーション

事業所番号:1361390048
所在地:〒121-0815 東京都足立区島根3-5-8 コーソカラオケ 201
最寄り駅:東武スカイツリーライン 西新井駅 徒歩5分
URL:https://carepro.co.jp/zaitaku/
TEL:03-5851-8809
FAX:03-5856-5233

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